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第7話 強引な誘いの行き先は?
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(我慢よ・・我慢・・これ一回きりなんだから・・・)
オーランドの強引な誘いで連れ出されたメリルは、馬車に揺られながらそう言い聞かせている。
“侍女は連れてくるな”という彼の注文でエリーはお留守番だ。“なぜ連れて行けないのか”と問うと、“普通の女は好まない場所にこれから連れて行く”と言う。
(普通の女って何よ。私は、珍獣だとでも言いたいわけ?)
メリルはそう反論したいのを必至で堪えた。
オーランドといると、どうも調子が狂う。メリルの思い通りにならず、どこか彼女が翻弄されているのを楽しんでいるかのような彼の態度は、メリルの心をストレスフルにする。
やがて馬車が停まると、窓から見えたのは石造りの大きな建物だった。闘技場だ。中からは大きな歓声が聞こえ、興奮と感動が入り交じる異様な雰囲気が漂っている。
「ここは・・」
建物を見上げて呟くメリルの様子を見たオーランドは「やはり初めてか」と言うと、強引に彼女の手を取り中へと連れて行く。メリルは手を引かれながら、初めて訪れた闘技場の雰囲気を堪能していた。進む廊下にはサーベルや 鎧兜が飾られ、闘技場の雰囲気を盛り上げている。
そしてメリルがやって来たのは、貴賓室だった。中に入ると、大きな一枚ガラスの窓から場内を見下ろせる。興奮した様子で眼下を見下ろすメリルの瞳は、キラキラと子供のように輝いていた。
「どうやら気に入ったようだな」
椅子に座り目を細めるオーランドに、振り向いたメリルから褒め言葉が届く。
「気に入ったなんてもんじゃないですわ!最高よ!行きたいと言っても、お父様に反対されて来られなかった場所ですもの!上出来よ!」
ここで言葉を止めたメリルは「あっ・・今のはつい・・」と王子に対する言葉ではなかったことに気付く。そんなメリルにオーランドは、クツクツと笑い声を漏らす。
「クックッ・・構わん。君とは素で話したいと思っている。いいか?私の前では女の仮面を被るなよ」
オーランドの注文に「でも・・」と躊躇するメリルに「これは命令だ」と彼はダメ押しした。
「分かりました・・・でも後で不敬だとか騒がないで下さいよね!」
物わかりのいいメリルにオーランドは「男に二言はない」と、先ほどの彼女のセリフを引用した。
普通は女のメリルが剣を嗜んだり、闘技場に来て興奮したりすることに、いい顔をしない男性が多い中、そうではないオーランドにメリルの中の彼の好感度は少しばかりランクアップした。
「そんな所に立ってないで、座ったらどうだ?」
メリルはその言葉を素直に受け入れ、オーランドの隣に座るが、視線は闘いが繰り広げられている眼下のままだ。お目当ての騎士ではなく、剣技を純粋に楽しんでいるのは、この闘技場の女性の中でもメリルくらいだろう。
「後で剣の相手をしてやろうか?」
オーランドの提案に「えっ?」と驚きに眼差しを彼に向けたメリルは、彼の柔和な表情に意図せず頬が染まる。
「隣にその為の部屋があるからな。どうせ振りたくて、仕方がないのだろ?」
メリルの心を見透かすような問いに彼女は、視線を逸らすと言った。
「べっ、別に殿下とは先日お相手したばかりですし、私だってそんなにいつもいつも剣を握っていたいわけではありませんよ・・・でもまあ・・殿下がそこまで言うなら、お相手しても構わないわ」
「決まりだな」
こうしてこの後の予定が決まったわけだが、ちょっとしたすれ違いにより、それが実行されることはないのだった。
オーランドの強引な誘いで連れ出されたメリルは、馬車に揺られながらそう言い聞かせている。
“侍女は連れてくるな”という彼の注文でエリーはお留守番だ。“なぜ連れて行けないのか”と問うと、“普通の女は好まない場所にこれから連れて行く”と言う。
(普通の女って何よ。私は、珍獣だとでも言いたいわけ?)
メリルはそう反論したいのを必至で堪えた。
オーランドといると、どうも調子が狂う。メリルの思い通りにならず、どこか彼女が翻弄されているのを楽しんでいるかのような彼の態度は、メリルの心をストレスフルにする。
やがて馬車が停まると、窓から見えたのは石造りの大きな建物だった。闘技場だ。中からは大きな歓声が聞こえ、興奮と感動が入り交じる異様な雰囲気が漂っている。
「ここは・・」
建物を見上げて呟くメリルの様子を見たオーランドは「やはり初めてか」と言うと、強引に彼女の手を取り中へと連れて行く。メリルは手を引かれながら、初めて訪れた闘技場の雰囲気を堪能していた。進む廊下にはサーベルや 鎧兜が飾られ、闘技場の雰囲気を盛り上げている。
そしてメリルがやって来たのは、貴賓室だった。中に入ると、大きな一枚ガラスの窓から場内を見下ろせる。興奮した様子で眼下を見下ろすメリルの瞳は、キラキラと子供のように輝いていた。
「どうやら気に入ったようだな」
椅子に座り目を細めるオーランドに、振り向いたメリルから褒め言葉が届く。
「気に入ったなんてもんじゃないですわ!最高よ!行きたいと言っても、お父様に反対されて来られなかった場所ですもの!上出来よ!」
ここで言葉を止めたメリルは「あっ・・今のはつい・・」と王子に対する言葉ではなかったことに気付く。そんなメリルにオーランドは、クツクツと笑い声を漏らす。
「クックッ・・構わん。君とは素で話したいと思っている。いいか?私の前では女の仮面を被るなよ」
オーランドの注文に「でも・・」と躊躇するメリルに「これは命令だ」と彼はダメ押しした。
「分かりました・・・でも後で不敬だとか騒がないで下さいよね!」
物わかりのいいメリルにオーランドは「男に二言はない」と、先ほどの彼女のセリフを引用した。
普通は女のメリルが剣を嗜んだり、闘技場に来て興奮したりすることに、いい顔をしない男性が多い中、そうではないオーランドにメリルの中の彼の好感度は少しばかりランクアップした。
「そんな所に立ってないで、座ったらどうだ?」
メリルはその言葉を素直に受け入れ、オーランドの隣に座るが、視線は闘いが繰り広げられている眼下のままだ。お目当ての騎士ではなく、剣技を純粋に楽しんでいるのは、この闘技場の女性の中でもメリルくらいだろう。
「後で剣の相手をしてやろうか?」
オーランドの提案に「えっ?」と驚きに眼差しを彼に向けたメリルは、彼の柔和な表情に意図せず頬が染まる。
「隣にその為の部屋があるからな。どうせ振りたくて、仕方がないのだろ?」
メリルの心を見透かすような問いに彼女は、視線を逸らすと言った。
「べっ、別に殿下とは先日お相手したばかりですし、私だってそんなにいつもいつも剣を握っていたいわけではありませんよ・・・でもまあ・・殿下がそこまで言うなら、お相手しても構わないわ」
「決まりだな」
こうしてこの後の予定が決まったわけだが、ちょっとしたすれ違いにより、それが実行されることはないのだった。
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