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第6話 王子ってのは、礼儀のいらない生き物ですか?
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バタバタ・・バタバタ・・・
部屋で寛ぐメリルの元に足早だが、決して走っているわけではない騒がしい足音が近付いてくる。そしてバタンと開かれた扉から姿を見せたのは、頬を紅潮させたエリーだった。
「エリー、貴女何を慌ててるのよ。お母様に見られたら、カミナリ落とされるわよ」
「そんなお叱りいくらでもお受けします!それより大変なことが起きました!お嬢様!大変です!」
そこに寝室で休んでいたリーベルトも顔を出す。
『何だよ、随分と騒々しいな。エリー、どうしたんだ?』
「ああ、ルト様!大変です!」
「もう、だから何が大変なのよ。“大変”ばかりじゃ、話が進まないじゃない。ちょっと落ち着きなさい」
「でっでっでっ・・」
「で?で?ああ、もう!いいわ!私が他の人に聞いてきてあげるから!ルトは、そこにいなさいよ」
「あっ!お嬢様!お待ち下さい!でっ、殿下がいらしてるんです!」
そのエリーの叫び声と同時に、オーランドが扉からその姿を見せる。
(はっ?何でいるのよ・・・)
戸惑うメリルの背中に『ルー、お前、何かやらかしたんじゃないのか?』と声をかけたリーベルトは、家具の陰に身を潜める。公爵家が突然の王子の訪問に上へ下への大騒ぎになっているのに、オーランドは悠然と「扉が開けっぱなしだぞ。随分とオープンなんだな、公爵家は」と言い放った。
この訪問に普通の令嬢なら発狂しそうなほど喜ぶところだろうが、あいにくメリルにそんな気はない。当然、彼女の口から出てくるのは、王子の行動を咎めるセリフだ。
「殿下、突然どうされたのですか!?先触れもなく女性の元を訪ねてくるなんて、殿下は他国で何を学ばれてきたのでしょうか?」
チクリと嫌味を含んだメリルの言葉も、オーランドには全く効き目がない。そのまま、つかつかと部屋の中へ足を進める。そして、ドカッとソファーに腰を下ろすと「迎えに来たぞ」と言った。
身勝手な言葉と態度は、メリルの闘志に火をつけた。
メリルが約束などしていないと暗に非難すると、時間が空いたから来たと、またも身勝手な理由を告げる。そして、メリルから呆れた眼差しを受けるオーランドは「約束を果たしてもらいに来ただけだぞ」と付け足すと、試すような瞳を向けた。オーランドの言動にメリルは内心ため息をつくと、諦めた様子で言う。
「ご希望の約束、果たしましょう。女に二言はありませんわ」
とりあえず準備をするからと、オーランドを部屋から追い出したメリルに、リーベルトは『ルー・・さっきのあれは、男に二言はないだぞ』と訂正を入れる。
「分かってるわよ、そんな事。こんな時に細かいこと言わないでいいのよ」
『おーおー、ご機嫌斜めだな。しかし、やっぱり来たな』
「えっ?どういうことよ!ルト!貴方、何か知ってるなら、白状しちゃいなさいよ!」
『王子ルートの最初のイベントなんだよ。突然ヒロインの屋敷を訪ねてくるっていう』
「何ですって!!何でそれを早く言わないのよ!もう!ルトのバカ!役立たず!もうあの王子ルートに入ってるってことじゃない!ああ、もう!ホントにどうするのよ!」
『まあ、落ち着けって、ルー。お前ならこれくらいのトラブル何でもないだろ?それに怒ると、かわいい顔が台無しだぞ。まあ怒ったところも、かわいいがな』
リーベルトの前触れなしの褒め言葉に「えっ!!?もうルトったら・・・“かわいい、かわいい“言っても、許さないんだから」と満更でもない表情は、口の端が上がりそうなのを必死に我慢しているのが丸分かりだ。そんな主人を苦笑したエリーが見つめている。
『まあ、まだゲームでも序盤だ。修正はいくらでも、可能だからな。いいか?俺の忠告を忘れんなよ』
「忠告・・・忠告ねっ!大丈夫よ!殿下の言葉にコロッと騙されるな。向こうのペースに乗せられるなってことよね。言われなくても、分かってるわ!」
話がつくと、急いで準備を済ませたメリルをリーベルトとエリーは不安を抱えつつ、初イベントへと送り出したのだった。
部屋で寛ぐメリルの元に足早だが、決して走っているわけではない騒がしい足音が近付いてくる。そしてバタンと開かれた扉から姿を見せたのは、頬を紅潮させたエリーだった。
「エリー、貴女何を慌ててるのよ。お母様に見られたら、カミナリ落とされるわよ」
「そんなお叱りいくらでもお受けします!それより大変なことが起きました!お嬢様!大変です!」
そこに寝室で休んでいたリーベルトも顔を出す。
『何だよ、随分と騒々しいな。エリー、どうしたんだ?』
「ああ、ルト様!大変です!」
「もう、だから何が大変なのよ。“大変”ばかりじゃ、話が進まないじゃない。ちょっと落ち着きなさい」
「でっでっでっ・・」
「で?で?ああ、もう!いいわ!私が他の人に聞いてきてあげるから!ルトは、そこにいなさいよ」
「あっ!お嬢様!お待ち下さい!でっ、殿下がいらしてるんです!」
そのエリーの叫び声と同時に、オーランドが扉からその姿を見せる。
(はっ?何でいるのよ・・・)
戸惑うメリルの背中に『ルー、お前、何かやらかしたんじゃないのか?』と声をかけたリーベルトは、家具の陰に身を潜める。公爵家が突然の王子の訪問に上へ下への大騒ぎになっているのに、オーランドは悠然と「扉が開けっぱなしだぞ。随分とオープンなんだな、公爵家は」と言い放った。
この訪問に普通の令嬢なら発狂しそうなほど喜ぶところだろうが、あいにくメリルにそんな気はない。当然、彼女の口から出てくるのは、王子の行動を咎めるセリフだ。
「殿下、突然どうされたのですか!?先触れもなく女性の元を訪ねてくるなんて、殿下は他国で何を学ばれてきたのでしょうか?」
チクリと嫌味を含んだメリルの言葉も、オーランドには全く効き目がない。そのまま、つかつかと部屋の中へ足を進める。そして、ドカッとソファーに腰を下ろすと「迎えに来たぞ」と言った。
身勝手な言葉と態度は、メリルの闘志に火をつけた。
メリルが約束などしていないと暗に非難すると、時間が空いたから来たと、またも身勝手な理由を告げる。そして、メリルから呆れた眼差しを受けるオーランドは「約束を果たしてもらいに来ただけだぞ」と付け足すと、試すような瞳を向けた。オーランドの言動にメリルは内心ため息をつくと、諦めた様子で言う。
「ご希望の約束、果たしましょう。女に二言はありませんわ」
とりあえず準備をするからと、オーランドを部屋から追い出したメリルに、リーベルトは『ルー・・さっきのあれは、男に二言はないだぞ』と訂正を入れる。
「分かってるわよ、そんな事。こんな時に細かいこと言わないでいいのよ」
『おーおー、ご機嫌斜めだな。しかし、やっぱり来たな』
「えっ?どういうことよ!ルト!貴方、何か知ってるなら、白状しちゃいなさいよ!」
『王子ルートの最初のイベントなんだよ。突然ヒロインの屋敷を訪ねてくるっていう』
「何ですって!!何でそれを早く言わないのよ!もう!ルトのバカ!役立たず!もうあの王子ルートに入ってるってことじゃない!ああ、もう!ホントにどうするのよ!」
『まあ、落ち着けって、ルー。お前ならこれくらいのトラブル何でもないだろ?それに怒ると、かわいい顔が台無しだぞ。まあ怒ったところも、かわいいがな』
リーベルトの前触れなしの褒め言葉に「えっ!!?もうルトったら・・・“かわいい、かわいい“言っても、許さないんだから」と満更でもない表情は、口の端が上がりそうなのを必死に我慢しているのが丸分かりだ。そんな主人を苦笑したエリーが見つめている。
『まあ、まだゲームでも序盤だ。修正はいくらでも、可能だからな。いいか?俺の忠告を忘れんなよ』
「忠告・・・忠告ねっ!大丈夫よ!殿下の言葉にコロッと騙されるな。向こうのペースに乗せられるなってことよね。言われなくても、分かってるわ!」
話がつくと、急いで準備を済ませたメリルをリーベルトとエリーは不安を抱えつつ、初イベントへと送り出したのだった。
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