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第2章
第32話 リリス13歳 夢を見る
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リリスは、なないろのキャンディーを手にベッドに座っていた。
(さて、どんな夢を見るのかな。あのお婆さん、楽しい夢って言ってたよね)
リリスは胸を躍らせながら、キャンディーを口に入れた。
(あっ、美味しい。メロン?いちご?んんん?色んな味がするわ)
キャンディーがなくなると、リリスは横になり、夢の中へおちていくのを静かに待った。
すぐに彼女の寝息だけが、部屋に響いたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここは・・お茶会?)
視線を手元に向けると、手にはグラスを持っている。
(誰?・・・・これは私?)
するとそのグラスを持つ手が、すぐ側を歩く少女のドレスに向けて動いた。
『きゃっ』
その少女が悲鳴を上げた。
『あら、ごめんなさい。決してワザとではなくてよ。でもその流行遅れのドレスも、これで少しは見られるようになったんじゃない。感謝してほしいくらいだわ』
目の前には綺麗な金髪に宝石を思わせる黄色い瞳をもつ少女が、カタカタと体を震わせ、目を潤ませていた。そしてその少女の着ていたドレスの裾には、オレンジ色のシミができていた。
(これ私がやったの?)
まわりの少年少女たちは蔑むような視線を目の前の少女に向けていた。
・・・・・・・・・・
誰かが今まさに少女の背中を押そうとしている。
目の前には腕に力を入れ、少女の背中を押す手があった。
(まただわ・・・誰の手なの?!)
ドンッ
背中を押された少女が階段を転げ落ちていく。その少女を上から静かに見下ろす視線。
踊り場まで落ちた少女の綺麗な金色の髪は乱れ、横たわっている。それを確認すると、階上にあった視線が彼女の元まで降りた。そして、意識のない少女の腕を踏みつけようとしていた。
(ダメッ!やめてっ!)
ダンッ
冷たい目で横たわる少女を見下ろしていたその脚が、床の上の腕を踏みつけた。
・・・・・・・・・・
(ここは学園のカフェテリア?)
『そんなことやってません!』
(またさっきの子だわ)
学園の制服を着た少年少女たちに取り囲まれた金色の髪の少女が、黄色い瞳に力を込め、睨んできた。
『あら、では私が嘘を言ってると、おっしゃるのかしら?・・・ひどいわ。皆さん、今の言葉をお聞きになって?』
(これ、また私?)
『本当にねえ・・』
『〇〇様が嘘を言うはずがありませんわ』
『どうせ色目使ったんだろっ』
まわりの生徒が口々に言った。
『ほらあ、皆さんよくおわかりになっていてよ。どちらが本当の事を言っているか』
耐えられなくなった少女は制服のスカートをひるがえし、カフェテリアから走って出て行った。
『ふん!いじめ甲斐のない』
(なんて事言うのよ!やめて!)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ハァハァ
夜の闇に少女の荒い息遣いが響く。
少女は全身にびっしょり汗をかいていた。
(何なの・・・今のが楽しい夢・・・ありえない!)
少女は体を起こすと、震える体を自身の腕でおさえるように抱きしめた。
しばらく放心した彼女は、ベッドを出て汗で濡れてしまった夜着を着替えた。
再びベッドに横になる。
そして目を閉じた少女は呟いた。
「こんな夢を見たなんて誰にも言えないわ」
・・・・・・
「また秘密が増えちゃたのね・・・楽しい夢なんて・・お婆さんのウソつき」
3つあったキャンディーの残り1つは、少女の机の引き出しの奥へしまわれたのだった。
(さて、どんな夢を見るのかな。あのお婆さん、楽しい夢って言ってたよね)
リリスは胸を躍らせながら、キャンディーを口に入れた。
(あっ、美味しい。メロン?いちご?んんん?色んな味がするわ)
キャンディーがなくなると、リリスは横になり、夢の中へおちていくのを静かに待った。
すぐに彼女の寝息だけが、部屋に響いたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ここは・・お茶会?)
視線を手元に向けると、手にはグラスを持っている。
(誰?・・・・これは私?)
するとそのグラスを持つ手が、すぐ側を歩く少女のドレスに向けて動いた。
『きゃっ』
その少女が悲鳴を上げた。
『あら、ごめんなさい。決してワザとではなくてよ。でもその流行遅れのドレスも、これで少しは見られるようになったんじゃない。感謝してほしいくらいだわ』
目の前には綺麗な金髪に宝石を思わせる黄色い瞳をもつ少女が、カタカタと体を震わせ、目を潤ませていた。そしてその少女の着ていたドレスの裾には、オレンジ色のシミができていた。
(これ私がやったの?)
まわりの少年少女たちは蔑むような視線を目の前の少女に向けていた。
・・・・・・・・・・
誰かが今まさに少女の背中を押そうとしている。
目の前には腕に力を入れ、少女の背中を押す手があった。
(まただわ・・・誰の手なの?!)
ドンッ
背中を押された少女が階段を転げ落ちていく。その少女を上から静かに見下ろす視線。
踊り場まで落ちた少女の綺麗な金色の髪は乱れ、横たわっている。それを確認すると、階上にあった視線が彼女の元まで降りた。そして、意識のない少女の腕を踏みつけようとしていた。
(ダメッ!やめてっ!)
ダンッ
冷たい目で横たわる少女を見下ろしていたその脚が、床の上の腕を踏みつけた。
・・・・・・・・・・
(ここは学園のカフェテリア?)
『そんなことやってません!』
(またさっきの子だわ)
学園の制服を着た少年少女たちに取り囲まれた金色の髪の少女が、黄色い瞳に力を込め、睨んできた。
『あら、では私が嘘を言ってると、おっしゃるのかしら?・・・ひどいわ。皆さん、今の言葉をお聞きになって?』
(これ、また私?)
『本当にねえ・・』
『〇〇様が嘘を言うはずがありませんわ』
『どうせ色目使ったんだろっ』
まわりの生徒が口々に言った。
『ほらあ、皆さんよくおわかりになっていてよ。どちらが本当の事を言っているか』
耐えられなくなった少女は制服のスカートをひるがえし、カフェテリアから走って出て行った。
『ふん!いじめ甲斐のない』
(なんて事言うのよ!やめて!)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ハァハァ
夜の闇に少女の荒い息遣いが響く。
少女は全身にびっしょり汗をかいていた。
(何なの・・・今のが楽しい夢・・・ありえない!)
少女は体を起こすと、震える体を自身の腕でおさえるように抱きしめた。
しばらく放心した彼女は、ベッドを出て汗で濡れてしまった夜着を着替えた。
再びベッドに横になる。
そして目を閉じた少女は呟いた。
「こんな夢を見たなんて誰にも言えないわ」
・・・・・・
「また秘密が増えちゃたのね・・・楽しい夢なんて・・お婆さんのウソつき」
3つあったキャンディーの残り1つは、少女の机の引き出しの奥へしまわれたのだった。
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