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第2章
第39話 リリス13歳 夏休み2
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リリスが友人を迎えるためホールに出ると、すでにローズとセシリアが挨拶を交わしていた。リリスは挨拶もそこそこにメイドたちに部屋へ荷物を運ぶよう指示をだし、アリーナ達にヘンリーがいる事を告げた。
「今、ヘンリー様がいるの。もうお帰りになるんだけど、その前にみんなに紹介するわね」
そう言うとリリスはヘンリーの元へ友人を案内した。
「ヘンリー様お待たせしました。お帰りになる前に私の友人を紹介します」
リリスはそう言うと、遠路遥々、遊びに来てくれた友人を紹介した。
今日来てくれたのはアリーナ、スタイラス、アシュリーそしてグレイ・トブルク とアリス・コールマンの5人だった。
グレイとアリスの家は領地を持たないので、あの日、たまたま近くにいた二人に声をかけたのだ。グレイは同じ風属性のアシュリーと仲がよく、小さくて可愛らしい令嬢のアリスとリリスはよくお喋りをしていた。
ちなみにエリーゼは、父親の許可が下りず来られなかった。彼女から未練がましい手紙が先日来たばかりだ。
お互いに挨拶と会話を一通り済ませるとヘンリーが「それじゃあ、そろそろ僕は失礼するよ」と言うと立ち上がった。リリスは馬車まで見送るため「みんなちょっと待っててね」と一言残し、二人で部屋を出て行った。
「ヘンリー様、お気を付けて」
「ありがとう。今回はリリスとあまりゆっくりできなかったから、次にうちに来た時は覚悟しておくんだよ」
「かっ、覚悟って。なんの覚悟ですか」
一瞬で顔が真っ赤になるリリス。それを優しい眼差しで見つめるヘンリーは「分かってるでしょ?」と甘い微笑みを浮かべると、彼女の頬に触れた。触れた頬から体の隅々に熱が広がる。そしてほんの数秒触れた手を名残り惜しそうに離すと、ヘンリーは馬車に乗り帰路についた。
リリスが戻ると友人たちの会話が耳に入り、扉を掴んだ手が止まる。立ち聞きなんて趣味が悪いが止められなかった。
「セルジュ様って、近くで拝見するといちだんと素敵な方よね」
(この声はアリス様ね。分かるわぁ。もう眩しくて大変なのよ。心臓が毎回うるさくて。そのうち私の心臓、強心臓になるんじゃない?)
「そうでしょう。リリスが羨ましいわよね。おまけに彼女にベタ惚れだしね」
と自慢げにアリーナが語る。
なぜリリスの婚約者をアリーナが誇らしげに語るのか些か疑問だ。
「相変わらず、ふたりは仲がいいんだな。人目を憚らずあそこまで仲がいいのも、そうそういないよな」
「そうだね。貴族の婚約は政略目的も多いからね」
「スタイラス様は婚約者とどうな・・」
「あっ、こらそれ」
アリスのスタイラスへの質問にアシュリーが慌ててるようだ。
「いや、いいんだアシュリー。僕の婚約者は去年やはり病で亡くなったんだ。だから今は婚約してないんだ」
(えっ、知らなかった。次期公爵だし、いて当然だと思ってた。まさか亡くなってたなんて)
「あの、申し訳ありません。知らなかったとはいえ・・」
「本当に気にしないで。謝られると逆に僕が申し訳なく思ってしまうだろう?」
場の空気が微妙になったのを感じたリリスは今度こそ扉を開け「お待たせ。今日はお天気もいいし、庭でお茶にしましょう」と友人たちを庭へ促した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
庭でテーブルを囲んでいると、アリーナが切り出した。
「みんな、王都で人気のキャンディー屋は知ってるよね?」
「もちろん。すごい人気だよね」
とグレイがウンウンと頷きながら言うと
「男の子でも知ってるのね。実は好きな子にプレゼントしてたりして」
アリスが冗談ぽくグレイをからかう。それに「違うよ。姉さんに学園の帰りに買い物を頼まれたんだよ。話のネタにならなくて残念だったね」と反論した。
そんな二人を軽く流しアシュリーが言う。
「うちの商会でもあそこの商品には注目してるんだ。食べると不思議なことが起こるとか噂されてるし、そんな面白い商品放っておけないからね。でもどうやら仕入れてるのではなく、あのお婆さんが自ら作ってるみたいだよ」
商魂逞しいアシュリーの言葉にリリスは、自分が店を訪れた時を思い出す。
(そういえば夢を見るキャンディーなんてもらったわ。全然楽しい夢じゃなかったけど)
「私、食べたことあるのよ。その日はちょっとしたラッキーが続いた感じがしたのよね。気のせいかもしれないけど」
とアリスが言う。
「好きな人にプレゼントすると、両思いになるなんて噂も聞いたよ」
「へえ、いろんな噂があるんだな」
アリーナはみんなの会話を一通り聞いたあとに言った。
「それでここへ来る前に街へ寄ったんだけど、その2号店が明日オープンするって街で噂だったのよ」
「あぁ、それなら僕達も聞いたよ」
どうやらスタイラスたちも噂を耳にしたようだ。
「王都の店の噂がここまで届いてるなんて、余程有名なのね」
「そうね。ここは王都から近いっていうのもあるんじゃない?
それで、どうせ明日は街へ行く予定だったし、そのお店にも行ってみない?」
アリーナの提案にリリス以外は即答で賛成した。リリスはあの店のキャンディーでいい思い出がなかったので、頷くだけで内心ため息をついていた。
「今、ヘンリー様がいるの。もうお帰りになるんだけど、その前にみんなに紹介するわね」
そう言うとリリスはヘンリーの元へ友人を案内した。
「ヘンリー様お待たせしました。お帰りになる前に私の友人を紹介します」
リリスはそう言うと、遠路遥々、遊びに来てくれた友人を紹介した。
今日来てくれたのはアリーナ、スタイラス、アシュリーそしてグレイ・トブルク とアリス・コールマンの5人だった。
グレイとアリスの家は領地を持たないので、あの日、たまたま近くにいた二人に声をかけたのだ。グレイは同じ風属性のアシュリーと仲がよく、小さくて可愛らしい令嬢のアリスとリリスはよくお喋りをしていた。
ちなみにエリーゼは、父親の許可が下りず来られなかった。彼女から未練がましい手紙が先日来たばかりだ。
お互いに挨拶と会話を一通り済ませるとヘンリーが「それじゃあ、そろそろ僕は失礼するよ」と言うと立ち上がった。リリスは馬車まで見送るため「みんなちょっと待っててね」と一言残し、二人で部屋を出て行った。
「ヘンリー様、お気を付けて」
「ありがとう。今回はリリスとあまりゆっくりできなかったから、次にうちに来た時は覚悟しておくんだよ」
「かっ、覚悟って。なんの覚悟ですか」
一瞬で顔が真っ赤になるリリス。それを優しい眼差しで見つめるヘンリーは「分かってるでしょ?」と甘い微笑みを浮かべると、彼女の頬に触れた。触れた頬から体の隅々に熱が広がる。そしてほんの数秒触れた手を名残り惜しそうに離すと、ヘンリーは馬車に乗り帰路についた。
リリスが戻ると友人たちの会話が耳に入り、扉を掴んだ手が止まる。立ち聞きなんて趣味が悪いが止められなかった。
「セルジュ様って、近くで拝見するといちだんと素敵な方よね」
(この声はアリス様ね。分かるわぁ。もう眩しくて大変なのよ。心臓が毎回うるさくて。そのうち私の心臓、強心臓になるんじゃない?)
「そうでしょう。リリスが羨ましいわよね。おまけに彼女にベタ惚れだしね」
と自慢げにアリーナが語る。
なぜリリスの婚約者をアリーナが誇らしげに語るのか些か疑問だ。
「相変わらず、ふたりは仲がいいんだな。人目を憚らずあそこまで仲がいいのも、そうそういないよな」
「そうだね。貴族の婚約は政略目的も多いからね」
「スタイラス様は婚約者とどうな・・」
「あっ、こらそれ」
アリスのスタイラスへの質問にアシュリーが慌ててるようだ。
「いや、いいんだアシュリー。僕の婚約者は去年やはり病で亡くなったんだ。だから今は婚約してないんだ」
(えっ、知らなかった。次期公爵だし、いて当然だと思ってた。まさか亡くなってたなんて)
「あの、申し訳ありません。知らなかったとはいえ・・」
「本当に気にしないで。謝られると逆に僕が申し訳なく思ってしまうだろう?」
場の空気が微妙になったのを感じたリリスは今度こそ扉を開け「お待たせ。今日はお天気もいいし、庭でお茶にしましょう」と友人たちを庭へ促した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
庭でテーブルを囲んでいると、アリーナが切り出した。
「みんな、王都で人気のキャンディー屋は知ってるよね?」
「もちろん。すごい人気だよね」
とグレイがウンウンと頷きながら言うと
「男の子でも知ってるのね。実は好きな子にプレゼントしてたりして」
アリスが冗談ぽくグレイをからかう。それに「違うよ。姉さんに学園の帰りに買い物を頼まれたんだよ。話のネタにならなくて残念だったね」と反論した。
そんな二人を軽く流しアシュリーが言う。
「うちの商会でもあそこの商品には注目してるんだ。食べると不思議なことが起こるとか噂されてるし、そんな面白い商品放っておけないからね。でもどうやら仕入れてるのではなく、あのお婆さんが自ら作ってるみたいだよ」
商魂逞しいアシュリーの言葉にリリスは、自分が店を訪れた時を思い出す。
(そういえば夢を見るキャンディーなんてもらったわ。全然楽しい夢じゃなかったけど)
「私、食べたことあるのよ。その日はちょっとしたラッキーが続いた感じがしたのよね。気のせいかもしれないけど」
とアリスが言う。
「好きな人にプレゼントすると、両思いになるなんて噂も聞いたよ」
「へえ、いろんな噂があるんだな」
アリーナはみんなの会話を一通り聞いたあとに言った。
「それでここへ来る前に街へ寄ったんだけど、その2号店が明日オープンするって街で噂だったのよ」
「あぁ、それなら僕達も聞いたよ」
どうやらスタイラスたちも噂を耳にしたようだ。
「王都の店の噂がここまで届いてるなんて、余程有名なのね」
「そうね。ここは王都から近いっていうのもあるんじゃない?
それで、どうせ明日は街へ行く予定だったし、そのお店にも行ってみない?」
アリーナの提案にリリス以外は即答で賛成した。リリスはあの店のキャンディーでいい思い出がなかったので、頷くだけで内心ため息をついていた。
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