〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜

hanakuro

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第8話 その能力は、どこから来たんでしょうか?

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(あー、不吉な予感しかしない・・)

不意打ちのセドリックとの出会いイベントに、リーナの心が波立つ。

漫画では、ヒロインのオルガにもあんな場面はなかった。セドリックとオルガは幼い頃からの周知の仲で、ビクトリアも王子が少年の頃からの縁だ。

(そもそも魔法もなかったし、もしかして転生とか転移で設定が乱れてる?大体、オルガがみんなから敬遠されてるのも問題よ。全然ヒロインじゃないし・・・このままじゃ、セドリックはビクトリアと一緒になっちゃうかも・・・あー、何で完結前に死んじゃったかなあ)

実はベタ恋、次巻が最終巻の未完の作品だった。なので、リーナはオルガとセドリックの恋の結末を知らなかった。オルガとビクトリアの闘いの結末を知らなかった。そして、残り一巻でヒロインと悪役令嬢の間に割って入るような重要キャラが登場するとは考えにくい。

(一体、誰との出会いイベントなのよぉ)

そんなことをモヤモヤと考えながら、校舎裏にやってくると、相変わらずオルガは魔法を放っていた。

(そういえば、何でオルガは魔法なんて使えるんだろう。この間も使ってたよね)

「ねえ、オルガはなぜ魔法なんて使えてるの?」

リーナがそう疑問をぶつけると「知らないよ。最初から使えてたんだ」と予想通りの答えが返ってきた。いつもここで放っているのは、魔力がたまって苦しいからだそうだ。

そして自然と会話は、リーナと出会うまでのオルガのことになる。

気付いたら、いきなり知らない世界に、知らない身分、知らない家族、知らない自分、そして何より女性になっていた。理由が分からず階段から落ちたら、この悪夢から醒めるかと試そうとしたが、使用人に全力で止められたこともあった。

最初は恐怖で部屋に引き籠もっていたが、いきなり人が変わってしまった娘に両親だという人たちが泣いてばかりいるのに耐えられず、仕方なく学園に来た。しかし頑張って女性らしく振る舞おうとしたが、半日ももたなかった。やがて自分に纏わりついていた取り巻きは、近付かなくなり周囲は目も合わさなくなる。

しまいには、使えることに気付いていた魔法を放置していたら、魔力がたまって発狂しそうになり、ここ校舎裏で発散していた。

オルガの話を聞いたリーナは、内心ため息をつく。

(この世界って、ちょっとでも異質なものが混ざると、拒否反応すごそうだもんなぁ。でもオルガの混乱も分かる。だって私と違って、彼はまだ生きてるんだもの)

リーナは彼に同情すると、何としても元の世界に返さなければと決意を新たにする。“できるか分からない”などと、泣き言を言ってる暇はない。

話し終えたリーナがオルガを残して立ち去ろうとすると、背後でボンッと爆発音がした。驚いて振り向くと、そこにはスカートの裾が石になったオルガが呆然と立っていた。

「ちょっと、何があったの!?」

慌てて駆け寄ると、オルガは「分からない。いきなり魔法が暴発した」と顔を青くし、その手にはまだ黒い炎が渦を巻いていた。

「これっ!魔法収まらないのっ?」

「最近ヤバいんだよ。魔力が半端ないっていうか、すぐに溢れそうになって!リーナ!どうしたらいい?俺、怖いよ」

(そんなことを言われたって、分からないわよ。でも何とかしないと!・・・あっ!“心の乱れは魔力の乱れ”って、何かの漫画に出てきてたわ!この際、やれることは全部試すしかない!)

リーナはそう考えに至ると、オルガに深呼吸をして落ち着くように言い聞かせる。

「大丈夫よ・・・さあ、大きく息を吸って~・・はい、吐いて~・・そう、いい感じよ。さあ続けて・・・・」

リーナ自身も深く深呼吸をする。自分が取り乱していては、オルガのパニックを誘うからだ。やがて自分も落ち着いてきたのを自覚すると、オルガの手に溢れていた炎も小さくなりやがて消えた。

消えたのを確認すると二人は深呼吸をやめ、顔を見合わせる。そしてどちらともなく、笑い始めた。他に誰もいない校舎裏に二人の笑い声が響く。

「アハハハ・・ハァ・・あーもう、まさかこんなに上手くいくなんて思わなかったわ。あー、可笑しい・・」

「でもよく分かったよ。やっぱりリーナの知識、すげーよ」

オルガに褒められて、妙に居心地の悪いリーナは「大したことじゃない」と謙遜した。実際、ただタイトルすら思い出せない漫画で読んだ気がするセリフを苦し紛れに実践したら、たまたま上手くいっただけだ。

(まあ、“終わりよければ全てよし”とは、よく言ったものね)

「いい?“心の乱れは魔力の乱れ”だからね。なるべく精神状態を安定させてね。この状況で無理を承知でお願いしてるんだからね。分かった?」

「ああ、分かった。俺だって、もうこんな怖い思いはごめんだ」

オルガの返事にリーナは、その背中を一発叩いて、エールを送ったのだった。
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