〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

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アフターストーリー

アフターストーリー第12話 障壁

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「私の大事な妻とアリス殿との間に大きな壁などあるのか?」

「ええ、それはそれは大きな壁が・・殿下は心当たりございませんか?」

「さあ、知らんな。ところで、私たちが来ることを何で知った?」

「私の妃殿下情報網を舐めないでいただきたいですね」

マリオンとアリスがそんな会話を繰り広げている横で、エルメは悶々と考えていた。

(ドーブル・・あの町は、ここより東。それにアリスの瞳の色。ワインレッドだけど、大きく見れば赤色だわ。ヤバくない?アリスが災いのトリガーだったりする?)

「とにかく、せっかくエルメ妃殿下と久しぶりの再会が叶ったのですから、今日はこちらへ泊めていただきます。まさか殿下は、私のようなか弱い女性に帰れなどと、冷たいことを言いませんよね?」

「まさか。一泊ぐらい構わん」

ここでマリオンとアリスのバトルが一段落し、マリオンは早々にエルメを部屋から連れ出した。

私室へ連れてこられたエルメは、「ここが君の部屋だ。移動で疲れただろう。少し休むといい」と言い残し去ろうとするマリオンを捕まえ、自分の考えを伝える。

「待って。あの占い覚えてる?アリス様が火事の原因だったりしない?ほらっ、東から来た赤い瞳持ちだよ」

その言葉にマリオンはため息をつくと、出ていこうとしていた部屋の扉を閉める。そしてエルメの耳元で「嫉妬してしまいそうだな」と呟いた。

「何に嫉妬するの?」

「・・気付いてるだろう?彼女の君への執着は、私の想像を超えているからな」

「執着って、そこまで凄・・くない・・じゃない?・・」

エルメは答えながら、あのアリスの“推し部屋”を思い出し、そう言い切れないことに気付く。そんなエルメの様子にマリオンはフッと笑いをこぼすと、「思い当たる節があるようだな」と言った。思い当たるも何も、アリスに堂々と披露され、完成の手伝いまでさせられたのだ。めちゃくちゃ思い当たる。

「でも、悪い子じゃない」

「分かっている。ただ、君へのあの愛の重さは、いずれ君に刃を向けるんじゃないかと心配なんだ」

そう言うと、マリオンは瞳を揺らし見つめるエルメの頬を両手で包む。マリアも触れる手に自身の手を重ね、安心させるように言う。

「考えすぎだよ。それに忘れてるかも知れないけど、彼女も私と同じ転生者。きっと寂しさがそうさせるの。いつも自信満々なマリオンがそんな事言うなんて、らしくないね」

エルメの答えにマリオンは一瞬悲しみを瞳に滲ませ「君も寂しいのか?」と問う。それにエルメは、僅かに首を横に振った。

「前はね・・寂しかったし、それに押しつぶされないよう必死だった。でも今は、こうして貴方がいる。それにそう感じさせないほど、私に好きだって言ってくれるでしょ。だから、全然寂しくないのよ」

マリオンは、そう言うエルメの瞳の奥を探るように見つめるが、すぐに「そうか・・」と言うと、触れるだけのキスをした。そして「少し休め」と言うと、エルメの頭をポンポンと撫で、再び出ていこうとする。そのマリオンを止めたのは、彼女の腕だった。俯き、マリオンの腕をギュッと掴む様子は子供が駄々をこねているようだ。

「もう少し・・もう少しだけ一緒にいて・・」

瞳を合わせずにそう口にしたエルメは、腕を離し、代わりに彼の身体をギュッと包む。

「こうしてると、安心する。ずっとこうしていたいな」

「・・・君は私のことをまだ分かってないのか。前から言ってるだろう?私は、好きな女に抱きしめられるより、抱きしめる方が好みだと・・・」

頭の上から降ってくるマリオンの声は、自信を含み、抱きしめるエルメの背筋をゾクゾクさせる。そして、一瞬緩んだ腕から逃れたマリオンは、悠々と彼女の腰を抱き、後ろから首を押さえる。それから二人は、濃密な口づけを交わす。
息をつく暇もなく塞がれる唇は、エルメが意識を手放してしまいそうな程、いつになく濃厚だ。お互いの舌は、まるで引き寄せ合っているように絡み合う。

「ん・・んふ」

漏れる息遣いが部屋に響く。

「あっ・・」

あまりに濃厚なキスに、エルメの膝から力が抜けた。グッと腰に回す腕に力を入れ支えるマリオンを、エルメは頬を染め、潤んだ瞳で見上げた。

「君が望んだのだぞ」

悪びれもせずそう言ったマリオンは、彼女の身体を軽々と持ち上げ、ソファーに座らせる。そして「今度こそ少し休め」と愛くしみの色を滲ませた声で言うと、扉から姿を消した。

パタンと扉が閉まる音を聞いたエルメは「あっ」と声を上げると、パッと振り返り背もたれに頰杖をつく。

「占いのこと話せなかった・・」

そう呟く彼女の表情は、幸せを滲ませていた。
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