102 / 124
魔法省で臨時メイドになりました
教えてルーカス先生
しおりを挟む
「二人に限ったことじゃなく、魔法使いはみなある程度そういう部分があるかもしれませんね」
私が持ってきたお菓子やお茶で休憩中、さっきの疑問を投げかけてみるとルーカスさんにも頷かれてしまう。
その隣でお茶を飲んでいたヴィオラさんも頷くし、え、魔法使いって本当にそうなの?
「選民意識っていうと語弊があるけど、リリーちゃんも知ってるように魔法使いになるだけの力がある人って少ないのね。で、自分が普通の人と違うって理解するまでは誰でも何かしらの孤独を感じているものなの」
「ヴィルヘルム殿はそれだけじゃないような」
「まぁね、この口調とこの格好だもの。色々言われもするわよ」
呆れたようなルーカスさんにそう言って、ヴィオラさんは柔らかく笑う。
「リリーちゃんは確か魔力ゼロ体質なんだっけ?」
「あ、はい」
「じゃああんまり実感ないかもしれないんだけど……魔法使いにとって魔力は扱えて当たり前だから、扱えないこと自体が理解出来ないわけよ。だから、魔法使いになったことに対して後悔するってことはあんまりないと思う。もちろんしがらみ云々は別よ? ただ、そうね。なければよかったと思うほど思い詰めていたら、きっと魔法使いにはなってない」
持っていて当たり前……魔力自体は私でも持っていて、ただ表に出せないから魔力ゼロ体質って言われるのよね。
大体は差があっても魔力の放出が出来て当たり前で、むしろないと不便なことの方が多い。
だから、扱えないことが想像出来ないのはわからなくもないんだけど、それ魔力ゼロ体質に対してだけの話にならないの?
「いまいちピンと来ないって感じね」
「お恥ずかしながら。私のような魔力ゼロ体質に対してならわかるのですが、普通は魔法とまで言えなくても放出出来ますよね?」
「んー、そうねぇ。ルーちゃん、何に例えたらわかりやすいかしら」
ヴィオラさんの言葉に少し考え込むようなそぶりをみせるルーカスさん。
そう言えばジルとジェイドにとっては先生だっけ、私にもわかるように教えてくれるかな?
「そうですね。リリー殿は空を飛んだことがありますか?」
「ええ、アムドさんの背に乗ったりレオナール様と飛んだりしたことがあります」
「では、あの空を飛んだ時に見える範囲が魔法使いにとっての空で、普通の人にとっては地面から見上げて見える範囲が空。リリーさんのような魔力ゼロ体質にとっては窓の中から見える空としてみましょう。リリーさんにとっての空は窓越しで、触れることはできないし体感もできないけれど、そこにあるとは知っています。窓越しの空だから、直接見ることは叶わない」
「ええ、わかります」
「一方の魔法使いにとっての空は、それこそ範囲が決められていないし果てもない。下を見れば地面こそ見えるけれど、左右も上も地面に届くまでの範囲がすべて空だと思っている訳です。ところが、普通の人にとって空は見上げるもの、建物や山などがあればそこで遮られて範囲が決まってしまっているものです。魔力ゼロ体質からすれば外で空を見れるのは同じに思えますが、こうして比べた場合に同じ空を見ていると言えますか?」
「言えない、ですね」
だって範囲が違いすぎる。見上げるのとそこにいるのじゃあんまりにも……ああ、そうか。
「魔法使いの方々には、見上げるだけの空しか知らないのが、理解出来ない?」
「そういうことです。すでにあるものを、あると知っているのに違うと言われているようなものですね。だから、他の人も同じものを知っていると実感できることが幸せなんです」
たった一人、広すぎる空にいて。そこに誰かがやってきてくれたなら、それは確かに嬉しいだろう。
「心無い言葉に傷つかない訳じゃない。悲しみも怒りももどかしさも諦めもあって、それでも今は同じ仲間がいる。自分は間違ってなかったと、そう実感できると自分と他人の違いについて受け入れられるようになる、だから過去は過去と言えるのではないでしょうか」
「自分は間違ってなかったから、自分と他人を区別できる?」
「だって、それまで比較対象がないから、何がどう違うのか理解出来ないんですよ?」
あー、なるほど。自分と同じ感覚の人もいるから、違う人もいると思えるようになると。
魔法使いも色々大変だな、じゃなくて。
「なら、ジルもジェイドも、レオナール様も。そのことで傷ついた心のままではいないと思ってもいいのでしょうか」
「え?」
「悲しいと、それに心を痛め続けてはいないのでしょうか」
そう訊ねればルーカスさんは目を丸くして、それからやわらかな微笑みを浮かべた。
私が持ってきたお菓子やお茶で休憩中、さっきの疑問を投げかけてみるとルーカスさんにも頷かれてしまう。
その隣でお茶を飲んでいたヴィオラさんも頷くし、え、魔法使いって本当にそうなの?
「選民意識っていうと語弊があるけど、リリーちゃんも知ってるように魔法使いになるだけの力がある人って少ないのね。で、自分が普通の人と違うって理解するまでは誰でも何かしらの孤独を感じているものなの」
「ヴィルヘルム殿はそれだけじゃないような」
「まぁね、この口調とこの格好だもの。色々言われもするわよ」
呆れたようなルーカスさんにそう言って、ヴィオラさんは柔らかく笑う。
「リリーちゃんは確か魔力ゼロ体質なんだっけ?」
「あ、はい」
「じゃああんまり実感ないかもしれないんだけど……魔法使いにとって魔力は扱えて当たり前だから、扱えないこと自体が理解出来ないわけよ。だから、魔法使いになったことに対して後悔するってことはあんまりないと思う。もちろんしがらみ云々は別よ? ただ、そうね。なければよかったと思うほど思い詰めていたら、きっと魔法使いにはなってない」
持っていて当たり前……魔力自体は私でも持っていて、ただ表に出せないから魔力ゼロ体質って言われるのよね。
大体は差があっても魔力の放出が出来て当たり前で、むしろないと不便なことの方が多い。
だから、扱えないことが想像出来ないのはわからなくもないんだけど、それ魔力ゼロ体質に対してだけの話にならないの?
「いまいちピンと来ないって感じね」
「お恥ずかしながら。私のような魔力ゼロ体質に対してならわかるのですが、普通は魔法とまで言えなくても放出出来ますよね?」
「んー、そうねぇ。ルーちゃん、何に例えたらわかりやすいかしら」
ヴィオラさんの言葉に少し考え込むようなそぶりをみせるルーカスさん。
そう言えばジルとジェイドにとっては先生だっけ、私にもわかるように教えてくれるかな?
「そうですね。リリー殿は空を飛んだことがありますか?」
「ええ、アムドさんの背に乗ったりレオナール様と飛んだりしたことがあります」
「では、あの空を飛んだ時に見える範囲が魔法使いにとっての空で、普通の人にとっては地面から見上げて見える範囲が空。リリーさんのような魔力ゼロ体質にとっては窓の中から見える空としてみましょう。リリーさんにとっての空は窓越しで、触れることはできないし体感もできないけれど、そこにあるとは知っています。窓越しの空だから、直接見ることは叶わない」
「ええ、わかります」
「一方の魔法使いにとっての空は、それこそ範囲が決められていないし果てもない。下を見れば地面こそ見えるけれど、左右も上も地面に届くまでの範囲がすべて空だと思っている訳です。ところが、普通の人にとって空は見上げるもの、建物や山などがあればそこで遮られて範囲が決まってしまっているものです。魔力ゼロ体質からすれば外で空を見れるのは同じに思えますが、こうして比べた場合に同じ空を見ていると言えますか?」
「言えない、ですね」
だって範囲が違いすぎる。見上げるのとそこにいるのじゃあんまりにも……ああ、そうか。
「魔法使いの方々には、見上げるだけの空しか知らないのが、理解出来ない?」
「そういうことです。すでにあるものを、あると知っているのに違うと言われているようなものですね。だから、他の人も同じものを知っていると実感できることが幸せなんです」
たった一人、広すぎる空にいて。そこに誰かがやってきてくれたなら、それは確かに嬉しいだろう。
「心無い言葉に傷つかない訳じゃない。悲しみも怒りももどかしさも諦めもあって、それでも今は同じ仲間がいる。自分は間違ってなかったと、そう実感できると自分と他人の違いについて受け入れられるようになる、だから過去は過去と言えるのではないでしょうか」
「自分は間違ってなかったから、自分と他人を区別できる?」
「だって、それまで比較対象がないから、何がどう違うのか理解出来ないんですよ?」
あー、なるほど。自分と同じ感覚の人もいるから、違う人もいると思えるようになると。
魔法使いも色々大変だな、じゃなくて。
「なら、ジルもジェイドも、レオナール様も。そのことで傷ついた心のままではいないと思ってもいいのでしょうか」
「え?」
「悲しいと、それに心を痛め続けてはいないのでしょうか」
そう訊ねればルーカスさんは目を丸くして、それからやわらかな微笑みを浮かべた。
81
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。