田舎のオトコと都会のオトコ

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▶▶ 田舎の♂️

3、初体験


――- コンコンッ

「飯、出来たぞ!」

「は~い♪」

 食事を運びに部屋の中に入ると、畳にごろんと寝転がっている巧が見えた。

「畳っていいよな~!俺んとこ洋室しかないから新鮮~♪」

「お前は何でも新鮮なんだな・・・」

「ハハッ。わ!うまそ~っもう腹減って死にそうだった!!」

 今日のランチはカレイの煮付け定食。都会の若者にはちょっと渋すぎるかとも思ったがせっかくこの島に来たからにはこの島の美味いもんを堪能していって欲しい。

「いっただっきまーす!」

「どうぞ。」

「これ、何て魚?美味すぎる~そんで白ご飯に合ーう!」

 俺の心配をよそに巧はがっつくようにカレイ定食を口に運んではそれはもう美味そうに幸せそうにそれを噛み締める。

「あーやっぱり田舎のこういう飯いいよなー!何か落ち着く。」

「そうか?俺は都会が羨ましいけどな。何でもあるし!定食ぐらい東京でだっていくらでも食えるだろ?」

「ま、東京でも定食屋とか料亭とか入れば食べれるだろうけどさ。そういうのとはまた違うじゃん?田舎ならではのよさって言うかさ!」

 憧れの都会人にこうも褒めてもらえるとあながち満更でもなくなる。

「・・・まぁ、魚も野菜もこの島の採れたて使ってはいるけどな。」

「野菜も?!どーりで美味いわけだ♪」

「朝一でうちの畑で採った野菜だからな・・・」

 そう言うと、巧はまたキラキラさせた目でこっちを見てきた。

「な、なんだよ?」

「畑!見たい!」

「は?うちの畑なんか見てどーすんだよ。言っとくけど、そんなでかい畑でもねぇし何もおもしれぇことねーぞ?」

「見たい!」

「・・・・」

 いや、でも俺は仕事があるからと断ろうしたところに母親が部屋の扉を開けてひょっこりと顔を覗かせてきた。

「あら、いいじゃない!今日はお弁当の注文も入ってないんだし色々この島を案内してあげたら?」

「ちょ、おい!ノックもせずに入ってくんなよ。」

 母親は俺の忠告をさらりと受け流すようにニコニコしながら部屋に入ってきて、デザートの柑橘ゼリーをテーブルに置いた。

「こんな歳の近いお客さん滅多に来ないから、ほんとは海斗も嬉しいのよ。それに海斗の同級生はみんな島から出ていってしまって友達もほとんどいないし。たまにはそういう時間も必要でしょ♪」

「はぁ?!いや、俺は別に・・・」

 それを聞いた巧はゼリーをペロリと食べ終えると丁寧に手を合わせてお辞儀をして、

「ご馳走様でしたッ!それでは島の案内、よろしくお願いします♪」

 そう言って俺の方を見てニヤリと笑った。


「はぁ・・ わかったよ。」

「やったーー!」

(ほんとにこいつ俺の4つ上か?)



༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶


 母親と巧に押し切られた俺は、仕方なく巧を連れて宿から少し離れたところにある畑に来ていた。

「足元気をつけろよ!つーか汚れっからそれ以上入るな・・・っておい!」

――- ズボッッ

「うわ!何ここめっちゃ足ハマる~笑」

「だからこっち来んなって・・・あーー!!その靴高えんじゃねぇの?!そんな泥だらけにして大丈夫か?」

「ハハッ海斗は心配性だな~大丈夫だよ。汚れたって全然平気!って、うわぁー!!!」

――- ズサァーー!

 俺の忠告も虚しく、巧は畑の土に足をとられて勢い良くその場に倒れこんだ。高そうな服も靴も土まみれで、あんなにキラッキラしていた都会人オーラも見る影が無い・・・。

「ぷッ。アハハ!!ほんとお前見た目に似合わずそそっかしい奴だな!」

 俺はそんな巧が何だか可笑しくなって、腹を抱えて笑った。こんなに腹から笑ったのはいつぶりだろう。

「もーー。笑うなよ~」

 そんな俺を見て巧も嬉しそうに笑いながら体を起こそうと土に手をついた。その瞬間・・・

「ん?んんん!?何か手元でニョロって・・・うわ、うわ何かいるー!!」

 慌てて立ち上がって手を振り払う巧の足元を見ると立派なミミズがうようよとうごめいていた。

「あーミミズな!お前ミミズも見たことねぇの?流石にガキんときとかに触ったことあるだろ?」

「いや、ないない!」

「マジか・・・一体どんな幼少期だったんだよ。まぁコイツがいるのはいい畑って証拠だからな~」

 そう言って俺がミミズをつついて土を被せてやると巧は何とも言えない表情を浮かべていた。

「・・・・」

 流石の巧も虫は苦手らしい。やっと巧の弱点を知れた気がして俺は少し嬉しくなった。

(そう言えばさっきも飛んできた虫を必死になって避けてたな・・・)


「あ、この胡瓜きゅうりもう採った方がいいな。巧!ちょいこっち来い。」

「え??む、、虫いない?」

「いねぇから!(たぶん)こっち来てこれ持って。」

 恐る恐る近づいてきた巧にハサミを渡すと、元気にまっすぐ育った胡瓜に手をやる。

「ここをハサミで切って収穫して。」

「わ、わかった!」

――- ジョキンッ

「と、採れた!きゅうり採れたッ!」

 巧は手に採った胡瓜を掲げながらガキみたいに嬉しそうにはしゃいでいる。

「よし、じゃあついでにミニトマトと・・・茄子も採っとくか!」

「俺やる!」

「おう。ミニトマトは赤くなってるやつならどれでも採っていいから。」

(虫にビビってたときはやっぱり畑なんか連れて来ねぇ方がよかったかと思ったが・・・存外楽しめてるみたいでよかった。)


「宿戻ったらお前が採った野菜使って晩飯作ってやるよ。」

「マジで!?楽しみすぎる!」


 島の案内と言うよりはほとんど畑体験になってしまったが、収穫した野菜を手にぶらぶらと散歩しながら俺らは他愛もないことを話して宿へと戻った。





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