田舎のオトコと都会のオトコ

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▶▶ 田舎の♂️

5、デートの約束


 風呂から出て厨房へ行くと、調理した痕跡があり、母親の姿はなかった。

(あー俺が遅いから晩飯やってくれたのか・・・)

 俺は申し訳なく思いつつ巧の客室へ向かった。


「んーー!!美味しいっ」

「よかったわ♪さっき採ってきてくれたお野菜使ったから。」

 客室の前で立ち止まると、中から巧と母親の声が聞こえた。

(ッたく。こっちはあんなに悶々としてたのに何普通に飯食ってんだよ・・・)


「こんなに美味しい天ぷら初めて食べました!」

「あはは、嬉しいわねぇ。でも自分で採ったから余計に美味しいんじゃないかしら。」

「そうかも?でもなんか家庭の味ってこんな感じなのかな~って。本当に美味しいです!」


(・・・やっぱりこいつ家の人と上手くいってねぇのか?つーか、お前は俺の料理を楽しみにしてたんじゃねぇのかよ?!)


「あ、そーだ!明日は釣りをしてみたらどうかしら?自分で釣った魚も格別よ~♡」

「え、釣り?!是非してみたいです!でも俺道具とか持ってないし、やり方も・・・」


――- バンッ

「わぁ!びっくりした!も~海斗どこ行ってたの?あんまり遅いから母さん代わりに夕飯用意し」

「俺が教えてやる!」

「え、何・・・」

「だから!俺が釣り教えてやるっつってんだよ!」

「・・・・」

 二人のびっくりした表情を見て我に返ったが、とき既に遅く・・・俺は半ば無意識に扉を開けて客室に乗り込んだあげく釣りを教えてやるなんて口走ってしまっていた。

「・・・あ、いや。えっと、、」

「ふふふっ。よっぽど天堂さんが気に入ったのね?海斗が一緒なら道具も持ってるし釣りも慣れてるから安心ね!」

「いや、そんなんじゃ・・・」

「じゃあ海斗、明日は仕事休みでいいから2人で釣りに行ってらっしゃい♫」

 そう言い残すと、母親は何だか嬉しそうにしながら部屋を去っていった。

「・・・・・」
「・・・・・」

 部屋に二人になると、途端に気まずい空気が流れる。

(さっきあんなことがあったばかりだってのに、何釣り教えるとか口走ってんだよ俺ーー!!馬鹿なのか?!)


「・・・釣り、教えてくれるの?」

 俺がまたひとり会議をしていると巧が不安そうな顔をしながら口を開いた。

「・・・ま、まぁ。休みもらっちまったし。暇だから行ってやらんくもない。」

「ほんとに?」

「ああ゛!行くっつてんだろ?!男に二言はねぇんだよ!・・・お前放っといたら今度は海に落ちて溺れそうだしな!そうなったら余計面倒が増える・・・」

 自分で言ってしまった手前、今更やっぱり無理とは言えない。俺は仕方なく腹をくくって巧に釣りを教えることにした。
 
「・・・もう口きいてもらえないかとおもった。宿追い出されたらどうしようかなって・・・・」

「はぁ?」

「・・・引いたんじゃないの?」

 巧はそう言うと、申し訳なさそうに俯いた。


「はぁー。いや、そりゃびっくりしたし、いきなりあんなことされてムカついてっけど!?・・・でもまぁ、お前は一応この宿の貴重な客だしな。追い出したりはしねぇよ。」


「そっか。」

「・・・・・」


 何故かそれを聞いて安心したような傷ついたような複雑な顔をして黙り込む巧を見て、俺は段々イライラしてきた。


「あーーもう!!だから何でお前が被害者面なんだよッ?言っとくけどな!俺はキス初めてだったんだぞ?!それなのに続けざまに2回もしてきやがって!そんな可哀想な俺が明日釣りまで教えてやるっつってんだ!ったく、優しい俺様に感謝しろッてんだよ!!」


「・・・・・」


(あーーー。イライラし過ぎて言わんでいいこと暴露しちまったじゃねぇか。クソ~~!!俺の馬鹿野郎・・・・)


「ふッ・・・あははッ」

 しばらくポカンとしていた巧が急に吹き出すように笑い始めた。

「な、なんだよ?!」

「いや、だって俺が相手だとかゲイだとか以前にファーストキスだったことに怒ってんのかって思ったら・・・ふふっなんか可愛くて・・・」

「はぁ?!///」


「ハハッ。あ~ぁ!何か海斗といると俺なんかの悩みとかそういうのどうでもよくなっちゃうなー。」

「いや、俺はどうでもよくねぇからな!?一応まだ怒ってっし!!」

「一応なんだ?笑」

「・・・ッ///」

 何だか吹っ切れたような顔をして嬉しそうに笑いかけてきた巧に不覚にもまた俺はドキッとしてしまった。

「う、うるせーな!つーかまだ飯途中だろ?さっさと食えよ!」

「あ、そうだった!んじゃ、改めていただきまーす♪」

「まぁ・・・俺が作ったんじゃねぇけどな。」

「えーなに、嫉妬?笑」

「ちげーよ!!///」


 あんなに腹が立ってたのに、何だかんだこいつといるのは嫌じゃなかった。それどころか、明日釣りどこに連れて行こうかなんて・・・ちょっと楽しみにしている俺がいる。

 
「あ!ねぇ、この天ぷらの魚なんてやつ?めっちゃ美味しい!」

「ん?どれ・・・・」

 巧が箸で持ち上げた天ぷらを見て俺は少しの間フリーズした。


「・・・・キス。」

「え?何て?」

「だから、だっつーの!!///」

(なんでこのタイミングで・・・わざとじゃねぇのがまた余計腹立つーー!!)


 そう答えた俺を見て巧は一瞬驚いた顔をして、吹き出すように笑いだした。そして天ぷらを口に運ぶたびに、また思い出すかのように吹き出し笑いを繰り返していた。


「おいッ!いい加減にしろよ?!」

「いや、だってさー!アハハハハッ」


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