ジェンダーレス男子は花を愛でる

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3✿葵の条件

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「何がそんなに問題なんですか?」


 急に口を開いた葵の発言に騒然としていた廊下がまた一瞬にして静まり返った。


「生徒手帳にも指定の制服を着用するようにとはありましたが、男子が女子の制服を着てはいけないという校則は記されてありませんでした。」

「あああ当たり前でしょう!?そんなふざけたこと校則以前の問題です!」

「問題?男がスカートを履くのはそんなに問題ですか?僕は指定された制服をきちんと着用していますし、身だしなみはきちんと整えています。それよりも入学初日からだらしなく制服を着崩して髪も染めてピアスまでしてるような生徒達の方がよっぽど問題では?」

「・・・あ゛あ゛??」

 葵の言葉に如何にも不良っぽい生徒達がガンを飛ばす。それを見て葵は控えめに手を挙げて言い宥める。

「あぁ、誤解を招く言い方をしてしまって申し訳ない。僕が言いたいのは先生が重要視するべきところを間違っているということです。」

「な、、、私は貴方のことを思って注意しているのです!せっかく成績優秀なのにそのような格好をしていたら貴方の将来だって・・・」

 そんな教師の言葉に葵は鼻で笑って言い返す。

「将来??今どき男女の概念に縛られている方が遅れていますよ。就職だって見た目だけ真面目そうに見える人よりも仕事が出来て優秀な人材の方が求められますからね。それに僕が女子の制服を着て一体誰に迷惑がかかりますか?」



「な!?この学校は曲がりなりにも進学校。その学校の男子生徒が女装してるなんて噂が流れたら学校の名に傷がつきます!!!」

「ふーん??でも僕はその学校の偏差値を誰よりも引き上げる存在でもありますよね?そんな評判より学校的には偏差値向上の方がメリットあるのでは?」 


「そ、それは・・・」


 入学早々、廊下で繰り広げられる女装男子と女教師の何とも言えない口論を生徒達は興味津々で見ていた。


 同じく楽しそうな顔をした雅紀の横で紫陽は飽きれながらその様子を眺めている。

(これ、終着点あるのか??てか、この担任も今ここでじゃなくて、後で職員室とかでやればいいだろ・・・。)




「じゃあ、こうしましょう。」

 閃いたように葵がニコリと微笑む。その姿は、男だとわかっていても男女問わずに皆が顔を赤らめる程に美しくキラキラしていた。

「在学中に僕が学年1位から落ちることがあったら、そのときは男子制服に改めます。他の生徒に示しがつかないとか言うなら学年1位の特権ってことで筋は通りますし、僕は抜かれない為に勉強のモチベーションが上がって学校の偏差値も上がる。ね?いい案でしょ?」

 それを聞いた周りの生徒達は、その提案に乗っかるように口を開き出す。

「いいじゃん、いいじゃん!学年1位の特権~!」

「まぁ流石に見苦しい女装は勘弁だけどさー華園は似合ってるし・・・か、可愛いし?///」

「おい?それ私情入ってねぇ?笑」

「てか、誰も華園さんが男子だって気づかないでしょ?だったら学校の評判とか落としようがなくない!?」

「確かに~!」

 最初こそは女装に引き気味だったが、葵のあまりにも堂々とした立ち振る舞いを見て、多くの生徒が好感を持ったようだ。



「・・・・わかりました。そこまで言うのなら私の方から他の先生方に説明しておきます。ですが、必ず条件を守ってくださいね!?」

「はい!もちろんです。」

 葵は勝ち誇った顔で返事をして、賛同してくれた生徒達にお礼を言いながら教室へと入っていった。


(へぇ・・・よっぽど1位でいることに自信あんだな、アイツ。)

 そんなことを思いながら紫陽も教室へ入り自分の席へとついた。


____________



 HRが始まっても、葵は男女問わず周りから質問攻めにあっていた。

「ねぇねぇ、華園さんはどうして女装を始めたの?私服も女装?」
「ちょっと!いきなりデリカシーなさ過ぎでしょ?」

「あはは、全然いいよ。と言うかそもそも僕は女装してるって意識はないんだよね。ここの制服、女子の制服の方が好みだったからそうしただけ。普段も特にメンズとかレディースとか関係なくただ好きな服を着てたいって感じかな。」

「それってアレだよね!ジェンダーレス男子って言うんだっけ?」

 それを聞いていた男子が不思議そうな顔をして問いただす。

「オネェとどう違うんだ?」

 葵はその質問に微笑みながら答えた。

「僕は別に女になりたい訳じゃないってとこかな?性別にとらわれずに好きなものは好きって言いたいしやりたいだけなんだよね。」


 確かに葵は色白で華奢な身体をしてはいるが胸の膨らみは全くない。仕草や立ち振舞いはその辺の女子なんかよりよっぽど上品ではあるが、話し口調は普通に男だ。


「うわぁ・・・その考え方格好いいかも~!」
「うんうん!てか華園さん肌の手入れとかもしてる?めっちゃ綺麗なんだけど!!」
「それ私も聞きたかった!髪とかもサラサラ~」

 そんな女子達に葵も満更ではなさそうに笑って答える。

「美容には結構気を遣ってるよ。あ、オススメの美容液あるから教えようか?」

「え!教えて教えてー!」

 いつの間にか葵を取り囲んで女子会が始まっていた。まさに《》状態だ。


「ちょっと!そこ!話聞いてるの?」
 
 見兼ねた担任教師の注意にしぶしぶ女子達も前に向き直る。

「入学したてで浮かれているかもしれませんが、1週間後にはすぐ実力テストがあります。気を引き締めて臨むように!」

「はぁー?マジかよ・・・」
「いきなりテストとか勘弁して~」

 そう生徒達が項垂れる中、、

「よしッ」

 と思わず声に出してガッツポーズをしてしまったのは1番後ろの席に座っていた紫陽だった。

「おいおい、何喜んでんだよ~」
「青凪君テスト嬉しいの!?」

(しまった・・・挽回のチャンスが来たと思ったらつい・・・)

 それを聞いた担任は目をキラキラさせながら紫陽の方を見て言い放った。

「そうよ!青凪君がいるじゃない!!確か次席合格・・・青凪君が学年1位になってくれたらいいのよ!!」


 その言葉に紫陽は固まった。

(ん?ちょっと待てよ?俺は確かに学年1位の座を狙ってはいるが、この状況はつまり・・・俺が1位になると華園は女装を辞めさせられる訳で・・・)


 そして、同じくその事実に気づいた華園軍団?達と目が合ってしまった。完全にこちらを敵視している目だ。


「あ~・・・いや、その、別に俺はそんなつもりは、、」


__キーンコーン~♪


 紫陽の弁解を遮るようにHR終了のチャイムが鳴った。それを聞いてはっとしたかのように担任がその場を締めくくる。


「ともかく、明日からは通常授業に入りますので忘れ物等しないように!以上。」


 HRが終わると何ごともなかったかのように生徒達はダラダラと帰り支度を始めた。それを見て紫陽はホッと胸を撫で下ろす。


(チャイムに救われた・・・危うく俺が悪者みたいになるとこだった。

とは言えこの状況、、俺は一体どうしたらいいんだ!?)



 




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