白き結婚という条件で新興国の王太子に嫁いだのですが、眠っている間に妊娠させられていました

天草つづみ

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本編

プロローグ

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「おめでとうございます。やはり、ご懐妊されていますね」

 エステファニアを診察した宮廷医は、そう言った。

 今朝から、エステファニアはどうにも気分が悪く、吐き気がとまらなかった。
 数日前からお腹がもやもやとするような気分で過ごしていたが、今日はついに気持ちが悪すぎて、ドレスを着ることすら辛くなってしまったのだ。
 何か病気になったのか、食当たりでもしたのか。
 そう疑って、医師を呼んだのだが。

「……は?」
「現在の症状は、悪阻によるものでしょう。残念ながら、これを軽くする薬などはなく……落ち着くのを待つしかありません。ゆっくりと体を休めていただいて、飲めそうだったら、水分だけでも取ってください。陛下に王太子妃殿下の公務を免除していただけるよう、診断書を書いておきます」

 妊娠したなんて、そんなことはありえない。
 エステファニアはこの国――ロブレ王国の王太子と結婚しているが、二人には体の交わりがなかった。
 白い関係であることが、この結婚の条件だったからだ。
 だからエステファニアは夫と性交などしていないし、もちろん、他の男ともしたことがない。
 妊娠する可能性など、ゼロであるはずなのに。
 一体、何がどうなっているのだろう。

 エステファニアの体から血の気が引いた。
 医師が慌てて手を伸ばすが、間に合わなかった。
 力の抜けた体がベッドに倒れる。

「殿下!」
「エステファニア様!」

 視界がぐるぐると回る。
 慌てた医師や侍女たちの声も、膜の外から語りかけられているような、遠くのものに感じた。

『……エステファニア…………』

 意識を失いつつあるエステファニアの頭の中に、夫の声が響き――――これまでのことが、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。

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