幼馴染勇者パーティーに追放された鍛冶師、あらゆるものを精錬強化できる能力で無敵化する

名無し

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第五一話 手掛かり

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「――かっ……!」

『コオオォォォッ……』

「……」

 だ、ダメだ……。やつは何度バラバラになってもすぐに蘇ってきた。心鎚がまったくコアに通用していない。

 それどころか、やつはまるで俺から生気を奪うかのように、戦うたびに復活するスピードだけでなく、スピードもパワーも徐々に高まってきているのだ。

 このままではこっちの体力が持たない。神精錬によって体力の数値を上げてはいるが、数値には反映されないレベルの目に見えない疲れがどんどん溜まっていくから、神精錬を続けていてもいずれは折れる可能性が出てくる。そうなると逆に体力を激しく浪費することになってしまう。

『+256』だったか……。ここに来てなるほどと納得させられる異次元な難易度の高さだ。でも、ここで諦めるわけにはいかない。今度こそ、さらに完璧な心鎚を見せてやる……。

「――かああぁぁっ!」

『コオオオオォォォ……』

「うっ!?」

 俺はコアとすれ違いざま、心鎚を発動させたあとバランスを崩しかけた。信じられない。今のはタイミングにしても力の抜け具合にしても、今の俺がやれる中で最高の一撃だったはず。

 なのに、やつはバラバラにされた直後に蘇り、ロングメイスで俺の脇腹を狙う余裕まであった。

 ぎりぎり避けることはできたが、もうダメだ。次はかわしきれない。俺は負けてしまうのか。こんなところで……。

『ハワードよ、お前は私の側で一体何を見てきたというのだ……?』

 じ、じっちゃん……? 確かに聞こえてくる。激しい怒りを孕んでいるのにとても静かで、それでいて心に響く祖父の声が……。

『そもそも神精錬が何から生まれたと思っておる。ヒントはそこまでだ。これでわからぬならそれまでの器ということ』

「……」

 じっちゃんの声はもう聞こえなくなった。神精錬が何から生まれた……? 努力? 根性? いや、それは当たり前だ。この神精錬や心鎚を生み出すために、俺は死に物狂いで頑張ってきた。なのに、それが通用しないっていうならこれ以上やりようがないだろう。一体どうすればいいっていうんだ……。

 っていうかヒントが曖昧すぎるんだよ。じっちゃんらしいっちゃらしいんだがなあ、いくらなんでもこれじゃスパルタすぎる――

『――コオオオオオオオォォォッ!』

「ぐあっ……!?」

 とうとう俺はすれ違いざま、コアによる一撃を食らってしまった。まるで魂まで衝撃を受けたみたいで、痛みがあるだけじゃなく何もかもどうでもよくなってくる。本当にこのまま終わってしまうというのか、俺は……。



 ◆ ◆ ◆



「やばいっ、やばいってもう! 逃げたほうがいいんじゃ? クソ無能のハワードなんかじゃコアに勝てないっぽいし!」

「ほんとだよぉっ! 役立たずのクソハワード、死んじゃえっ! ぷんぷんっ。しかもあのコアどんどん強くなってるみたいだしぃ、マジやばぁ!」

 ランデルとエルレが慌てた様子で騒ぎ立てるも、腕組みしたままのルシェラと弓を構えたグレックの表情は一切変わらなかった。

「ランデル、エルレ……逃げたほうがいいって言うけど、どこに逃げるわけ? コアを倒さない限りここから一生出られないのに」

「「あっ……」」

 ルシェラの冷たい調子の台詞で見る見る青ざめていくランデルとエルレ。

「てか、ハワードのやつ本当に大丈夫なのか? 昔と比べりゃ、相当に腕が落ちたもんだぜ……」

「グレックはそう思う? 私はそうは思わないわ。何故ならハワードの顔、死んでないもの。あいつが追放されたときみたいに青白い顔になって頬が引き攣ってたらまずいけど……多分、いけると思うわ」

「あ、ルシェラァ……あの無能の癖、よく知ってるじゃん? あーあ、僕嫉妬しちゃうなあっ」

 ランデルがいじけた表情でルシェラの首に後ろから腕を回す。

「ふふっ……バカな嫉妬はやめて頂戴。幼馴染だから仕方なく癖を知ってるってだけで、私が愛してるのはランデル、あなただけよ……」

「僕もだよ、ルシェラッ」

「やああぁん、あたし妬けちゃうっ。ランデルお兄様とルシェラお兄様……将来の王様とお妃様のラブラブ具合にっ」

 エルレがうっとりとした表情でランデルとルシェラが抱き合う様子を見上げる。

「へっ……随分お熱いことだが、あんまり熱中してたら、を見逃しちまうかもしれないぜ……?」

 グレックが愉し気な笑みを浮かべるも、その眼光は鋭さを増すばかりだった……。
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