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3話 鑑定スキル
しおりを挟む「あんたは一体……」
「あ、申し遅れました! 僕はシグ・シュバルトっていって、ジョブはシーフで、四人パーティーのリーダーをやっております。ダンジョンタワーは初めてで、それでボスについて研究してたらリューイ氏のとんでもない能力に気付いたってわけです」
「それは一体……?」
「これは自分の能力に関することですし、周りに聞かれるとまずいので溜まり場へご案内します!」
「あ、ああ、わかった……」
というわけで、俺はシグと名乗った盗賊の男についていくことになった。もしかしたら何かを巻き上げられるんじゃないかとも思ったが、タワー内ではダンジョン以外で暴力行為をやるとペナルティが発せられて相応のダメージを受ける仕組みだったはずだし大丈夫だろう。
一階は100階と違って人がいっぱいで騒々しく、売店やら何やらひしめきあってて駆け回る子供たちや杖をつくお年寄りの姿もあった。さすがにあの年齢でダンジョンに行ける力があるとは思えないし、多分ボスルームパネルを見て楽しんでるんだろうな。
「――着きました、ここです!」
「ここが……」
雑に並んだテント群の一つにシグが入っていったのであとに続くと、ほとんど見た目そのままの狭さだったので驚く。なんとも粗悪なテントだ。室内には洗濯物が幾つも吊り下げられてて、危うく女性物の下着が顔に当たるところだった。
「散らかってるかもしれないですが、すぐ慣れますから。その辺に座ってください」
「あ、ああ……」
本当に慣れるだろうかと不安に思いつつ、俺はその辺に腰を下ろした。
「では、お話します。まず、盗賊に鑑定スキルがあるのは知ってますよね」
「ああ、もちろん」
様々な物を調べてどんな名称でどれくらいの効果があるか、その優劣までも判断できるんだったかな。同じシーフというジョブでも得手不得手があって、武器の鑑定は不得意でも道具の鑑定は得意とか色々あるらしい。
そこら辺、元メンバーのカイルは索敵や罠探知に関しては優れてたが鑑定スキルはさっぱりだったので、何か見つけたときは俺の作った魔道具の鑑定鏡で調べてたんだよな。
「僕、鑑定スキルには自信がありましてね、中でもあるものを鑑定することができるってわかったんです」
「あるもの……?」
「はい、相手に与えるダメージや効果を数値として見ることができるんですよ」
「え、ええ……?」
そんなものまで鑑定できるのか。嘘じゃないなら得意なんてレベルを遥かに超えてるな……。
「てか、シグ。それが本当だとして、なんで俺が有能だってわかったんだ? 俺の開発した劇薬は弱いモンスターでも何発も使わないと倒せないんだが……」
俺は劇薬を開発する金が底を尽きたこともあって、ずっとこれしか使わなかった。もしシグの鑑定スキルによって数値化されていたとしても、弱いダメージしか出ていないはず。
「それは当然ですよ。リューイ氏がモンスターに投げていた劇薬は、相手によってダメージを変えてましたから」
「ええ?」
「劇薬をぶつけたモンスターが弱いとダメージは低いですが、強ければ強いほど、ダメージが上がってるんです!」
「な、なんだって……?」
「実際、後半にいくにしたがってボスを倒すスピードも上がってます。これは、リューイ氏の劇薬のおかげだってはっきりわかってるんです。100階層のボスへのダメージ、ほかのメンバーが三千とか二千とかなのに、あなただけ10万超えてましたよ!」
「えええ……」
凄いことを聞いた。確かに、考えてみれば思い当たる節は幾つもある。
「なので是非、僕たちのパーティーに……!」
「……」
どうしようか。シグたちはまだ初心者みたいだし、1階のダンジョンからやり直しになるのは別に構わないんだが、今はちょっとなあ。
「すまん。信頼してた仲間たちに追放されたばかりだから、まだ心の準備ができてないんだ。だから、今回の話はなかったことに……」
「そうですか……でも、待ちますよ!」
「ええ?」
「リューイ氏の心の傷のダメージまではわかりませんが、それが回復するまで待ちます!」
「いつになるかもわからないのに、いいのか?」
「はい、1階でもクリアできたら、なんて思ってたくらいだから全然待てますよ!」
「……」
曇り一つない笑顔を見せるシグ。いい人そうだし信じてあげたいんだが、幼馴染のウォーレンたちの顔が浮かんできてどうしても信じられない。そんな自分が無性に悔しかった。
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