幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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26話 道

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 ウォーレンたち一行が召喚された102階層のボス部屋にて、中心に刻まれた魔法陣が光を帯び始める。

「いよいよだ……みんな、わかってると思うけど、ここのボスは念属性だから普通の物理攻撃は通用しない上、属性を乗せても物理では反射ダメージを貰ってしまう。なので心して戦うように。僕も覚悟を決める……」

「ウォ、ウォーレン!? あんた、まさかを使う気なのかい……?」

 補助術師セシアが、驚愕の表情で弟ウォーレンの背中を見やる。

「うん……姉さん、負担がかかりすぎるからあんまり使いたくなかったけど、前回のボス戦があまりにもふがいない結果だったからね。今回やり返すしかない……」

「あんた、あれほど嫌がってたのに、男になったもんだねえ。よーし、弟に負けてられない。姉さんも気合入れるよ……!」

「私もっ!」

「俺もやるぜええぇぇ! 破産なんか知ったことか! 属性短剣乱れうちで蜂の巣にしてやらあっ!」

「くすくすっ……みなさんやる気になっていますね。私も久しぶりにみなぎってきたので、新型劇薬を使いたいと思います。本当は、もう少し階層が進んだあとに使うつもりだったのですけれど、この流れに便乗させていただきます」

 ウォーレン姉弟に続き、回復術師アリーシャ、盗賊カイル、錬金術師レビーナの目に溢れんばかりの輝きが宿っていく。

『――コオオオォォ……』

 まもなく魔法陣の中から出現したのは、煙のようなオーラを纏う人型のボスモンスター、ドッペルゲンガーであった。

「みんなっ、いよいよ開けたぞ、栄光への道が……! このボスを速攻で倒して、僕たちは『トゥルーボスキラー』として歴史に名を刻むんだ!」

「「「「おおっ!」」」」



 ◇◇◇



「「「「「わあぁっ……!」」」」」

「ん……?」

 怒号にも似たどよめきが聞こえてきて俺は目を覚ました。いつの間にかテントの中で待ちくたびれて寝てたみたいだな。一体何が――

「――あっ……!」

 あのバカでかい星型の赤い背中は……3階層のボス、スーパースターフィッシュだ。邪悪な笑みを浮かべ、踊るように動いているが、どんなに攻撃してもウロウロするだけで反撃してくることはないという、まさにサービスステージに相応しいボスといえた。

「おい、そっち行ったぞ!」

「倒せ!」

「俺たちが倒すっ!」

「「「「「わーわー!」」」」」

「……」

 冒険者たちが挙って追いかけ回してはタコ殴りにしてるが、まったく通用してないのがわかる。それもそのはずでやつは異様に物理、魔法攻撃に対する防御力が高くて、当時のパーティーで最終的に倒したのは10回目くらいの挑戦だったからな。

 セシアに怒られるからと『アンチストロング』を投げなかったこともあって、この頃はボスキラーとしての面影なんてほとんどなかったもんだ。

 でも今回は違う。冒険者たちが入り乱れてボスを叩いてるのを見て俺もむくむくと闘争心が湧き上がってくるが、その前にやることがあった。

「おーい、シグ、ワドル、サラ、アシュリー、起きろー!」

「「「「ぐー……」」」」

「……」

 ダメだ……寝てるみんなを起こそうとしたが、すっかり熟睡しちゃってる様子。こうなったら……仕方ない。

「おーい、ウスノロー! 追放するぞー! ボス戦だぞー!」

「ちょっ……待てい! 誰がウスノロだってんだよ、おい! ボスだあ!? ハッハッハ! 俺様に任せろっ!」

「ふっ……ふざけんじゃねえです! 追放できるもんならしてみやがれですうっ! ボスごと切り刻んでやるですううううううぅぅっ!」

 覚醒したワドルとアシュリーがボスに向かって一直線に飛び出していった。よしよし、ちゃんとその際にアシュリーが全体にバフをかけていったのがわかるし、ビーチにひしめく冒険者たちが仰天した様子であの二人を避けているのが見える。これならボスまでの道も充分確保できるな。

「リュ、リューイ氏、一体何が……?」

「リューイさん、何があったのお……?」

「早速ボスのおでましだよ」

「「おおっ!」」

 シグとサラのシュバルト兄妹も目覚めたし、あとは劇薬『アンチストロング』の制作準備に取り掛かるだけだ……。
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