幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

文字の大きさ
30 / 36

30話 絵

しおりを挟む

「こ、これは……」

「いやー、実に素晴らしいですねえ」

「別物みたーい!」

「はわわ、素敵ですうぅ!」

「お、おで、感動……」

 腰高の草原の南に設置した箱庭のビーチは、俺たちに想像以上の感動を与えてくれるものだった。

 うーむ……作り物とはいえ、誰もいない、踏み込んだ形跡すらない真っ新なビーチというのはこんなにも絵になるものなのか――

「――ちょっと、これは一体どういうことなのっ!?」

「お、お嬢様、お待ちをっ!」

「「「「「あっ……」」」」」

 振り返ると、ちょうどルディとクレアが駆けつけてくるところだった。あちゃあ、あの様子だとスルーされたと思って相当怒ってるっぽい。まずは彼女たちのところに行ってここに連れて来るべきだったな。どうしてもビーチのほうを見てみたくて最初にこっちに来てしまったんだ。

「わ、悪いな、ルディ。今からそっちに行くところだったんだが……」

「えっ、リューイ様は何を言ってるの?」

「え?」

「あたしはね、リューイ様にじゃなくてクレアに怒ってるの!」

「えぇ……?」

「だって、山と草原の次にあんなに素敵なマップを持ってきたってことは、あれが3階層だったんでしょ?」

「あ、ああ……」

「だったらクレア、なんでそこまであたしを行かせなかったの!?」

「も、申し訳ありません、お嬢様……」

 なるほど。あのビーチはいかにも平和そうなマップだし、だったらなんでそこまで行かせなかったんだって言いたいんだろうな。

「なんせ沢山の冒険者が来る場所ですし、お嬢様がもし水着を着てお遊びになられるようなことがあれば、それこそお嬢様の卑猥な……いえっ、大事な素肌を多くの目に晒すことになりますので――」

「――ビーチなんだから素肌を晒すのは当然でしょっ! ほら、ご覧なさい!」

「「「おおっ……!」」」

 俺、シグ、ワドルの男性陣の上擦った声が被ってしまった。ルディが急に服を脱いだかと思うと、それまでの魔術師の姿以上に超ハイレグな水着姿になったからだ。

「あわわ……いけません、お嬢様っ……!」

「「「なっ!?」」」

 またしても俺たち男組の声が同時に飛ぶのも仕方ない話で、クレアがメイド服を脱いだかと思うとルディ並みか、それ以上に露出の大きい水着姿が露になったからだ。

「な、なんでクレアがあたしより目立ってんのよ!」

「わ、わたくしめが注目されることにより、お嬢様への被害を少なくするためですっ!」

「ただ見せたいだけでしょ! クレアの変態!」

「そ、そんなっ! 違いますってばー!」

「……」

 よし、この辺で色んな意味でも流れを変えるか。さすがにこんな光景をいつまでも見てたら目に毒だからな。

「ウスノロワドル! アシュリー、ビーチに追放するぞ!」

「ウ、ウスノロだと!?」

「は!? 追放しやがるですって!?」

 俺の台詞に対し、ワドルとアシュリーから大量の殺気が放出されるのがわかった。ルディたちも黙り込んだし、こりゃ相当なもんだ。

「うおおおおぉぉぉっ! 俺様だけの砂浜あああああぁぁぁっ!」

「はああ!? 私のに決まってやがるですううううぅぅぅっ!」

「ちょっと、待ちなさいよ! あたしとリューイ様のだけのものよ!」

「お、お嬢様っ! 勝手に行ってしまったら溺れてしまう危険性がありますっ!」

「……」

 ルディとクレアの勢いもワドルとアシュリーに全然負けてなかった。

「サラも負けないもんっ!」

「僕も負けませんよ!」

 シュバルト兄妹も負けじとビーチへ走っていく。ってか、みんないつの間にか水着姿なんだな。こりゃ俺も負けてられない。

「サモン・ホムンクルス!」

 俺は素早く水着姿に着替えると、手元に呼び戻した竜巻型のホムンクルスに命令し、強風でビーチまで飛ばしてもらうことにした。

「うああああぁぁぁぁっ……!」

 それがあまりにも強力で、俺の体は異次元ホールを飛び越える勢いで高々と舞い上がり、みんなから注目されつつ少しずつ降下していき始めた。

 ここからビーチどころか箱庭全体を見渡せるし、なんだか創造主にでもなった気分だな。怪我の功名だが、意外とこういうのも悪くない……。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月10日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング2位 2020年11月13日「カクヨム」週間異世界ファンタジーランキング3位 2020年11月20日「カクヨム」月間異世界ファンタジーランキング5位 2021年1月6日「カクヨム」年間異世界ファンタジーランキング87位

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...