回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し

文字の大きさ
7 / 47

第七話 ズレてるところも魅力


 僕はエルシアを連れて、都内の防具屋まで来ていた。

 ここは、レザーアーマーとかラウンドシールドとか一般的な装備品だけじゃなく、ワンピースや吊りズボン等、普通の服なんかも一緒に売られているんだ。

 店主は寡黙なおっちゃんで、入ってきた僕たちに軽く会釈してくれた。

「エルシア、好きなメイド服を買っていいよ」

「本当に?」

「うん」

「やった!」

 エルシアがウキウキでメイド服を選び始めた。彼女がどんなのを選んでくるのか楽しみだ。

 ……お、もう決めたみたいで戻ってきた。

「ピッケル、あたい、これがいい!」

「こ、これは……」

 エルシアが持ってきたのは、猫の尻尾、猫耳のカチューシャ、フリルとエプロンのついたドレスという、猫耳メイド服セット一式だった。

 いや、それはいいんだけど、みんな薄汚れているだけでなく、所々破けてしまっていた。

「そんなんでいいの?」

「うん! あたいにはぴったり。ボロでも、あとで直せば使えるから」

「……」

 僕はエルシアの言葉に感動していた。やっぱり彼女を選んで正解だった。

「旦那、そんなもんでいいんですかい……?」

「うん。いくら?」

「30ギルスでやんす」

「じゃあ、これ。100ギルス。お釣りはいらないよ」

「ぬぉっ……⁉ ま、まいどあり!」

「ピッケル⁉ そんな、勿体ないよ!」

「大丈夫、エルシア。この服にはそれくらいの価値があるから」

「え……」

 僕は店を出たあと、時間を戻す回復術でメイド服を新品同然にしてみせた。

「ふう。こんなもんでいいかな」

「……す、凄い……ピッケルって魔法使い……⁉」

「回復術師だよ」

「へえぇ……」

 エルシアがピカピカのメイド服を着て、びっくりしている。よく似合ってるなあ。僕はそのあと雑貨屋でホウキや芝刈り用の鎌、調理用の包丁や食器あたりの生活用品も購入し、屋敷へと向かった。

「ひゃあ……こ、ここがピッケルの家……⁉」

「うん。っていうか、僕とエルシアの家だよ」

「……あ、あたいの家……? 凄いや。広すぎだよ……」

 エルシアが豪邸を見て声を震わせてる。まさに借りてきた猫耳メイド状態だ。

「お、お邪魔しまふ……!」

 メイドの畏まった発言に僕は思わずクスっとなる。そりゃそうなるよなあって。所有者の僕でさえそうだったんだから。

 この豪邸は三階建てで、どの階も広くて個室も多いので、どれでもエルシアの部屋にしてもいいって言うと、彼女はしばらく硬直してしまっていた。

「あ、あたい……嬉しすぎて目が回っちゃうよ……」

「うんうん。僕もエルシアが来てくれて凄く嬉しいから」

「えぇ? ピッケル、それって、ほんと……?」

「本当だよ。エルフでしかも猫耳メイドとか、よく考えたら超欲張りセットだからね」

「ピ、ピッケルって、凄く欲張りなんだ……!」

「……」

 多分、僕の真意はあんまり伝わってない。

「じゃ、じゃあ、ピッケルのために、あたい一肌脱ごうかな……」

「い、いや、そこまでしなくても大丈夫だから……!」

 それは危ない。早速主従の腕輪が発動してしまう。

「そ、それより、エルシア。この家の管理――掃除とか家事とかをしっかりこなしてくれたら、それだけで十分だよ」

「うん。あたい、頑張る……!」

 エルシアはとても物分かりのいい子だ。

 マイペースといっても、それは決して自分勝手なんかじゃなく、彼女の行動にちょっと癖があって、他の子と違うように見えただけなんだろう。

「――それえええぇぇっ!」

「……」

 結論から言うと、僕の予想は当たっていた。いや、当たりすぎていたと言うべきか。

 その形容は大袈裟じゃないくらい、エルシアはその小柄な体を生かしてあちらこちら動き回り、屋敷内を掃除してくれたし、料理だって猛勉強して美味しいものを作ってくれた。

 ただ、皿洗いとか洗濯とか、そういうものに関しては僕が回復術で手伝ったけどね。

 それと、何より驚いたのが、エルシアが目を輝かせて沈みゆく夕陽を指差したことだった。

「ねえねえ、ピッケル、見て。夕陽っ!」

「え……夕陽が珍しいの?」

「うん。あたい、人間不信でずっと施設に引きこもってたでしょ。窓はあったけど、脱走できないように高いところにあったから見られなかったの」

「な、なるほど……」

 よーし、それならなんとかしてやろうってことで、僕はを行使した。

「あれれ? 今日の夕陽、なんだかいつもより長持ちしてる……」

「ぜぇ、ぜぇ……」

「ピッケル? 何かしたの?」

「あ、うん。僕らだけ時間の進み具合をゆっくりにしてみせたんだ」

「ふえぇっ⁉ それも回復術なの……⁉」

「うん。ちょっと……っていうか、普通の回復術と違って、さらに疲れるけどね……って、そうは言ってもただの回復術なんだからそんなに驚かなくても……」

「ほぇ……」

 エルシアがぽかんとしてる。ほんっと、この子はズレてるなあ。そういうところも可愛いんだけど……。
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。