24 / 47
第二十四話 初心者じゃ仕方ない
僕たち【狼の魂】パーティーがエドガータワーへ行くまで、とうとう残り三日になった。
しかも王様が天覧されるということで、より気合が入ってるのも事実だ。
「んじゃ、そろそろ出発といこうぜ?」
「「「「「了解っ!」」」」」
そこで、ベホムたちの宿舎にて、これからみんなで地下水路ダンジョンへと出発したところだ。
いつもなら、ちょっと前に古代地下迷宮へ行ったのもあり、少し訓練するくらいで済ませる予定だったという。
それが、王様が天覧することになったのはもちろん、マリベルとレビテが入団したことで、実戦によって連携を深めたいっていう狙いがあるんだそうだ。
いわば、最後の予行演習ってわけだ。
地下水路ダンジョンは町の北西、郊外に位置する迷宮の一つだ。
古代からあった小さな水路が、そこに蔓延した魔力と長年の月日を得てダンジョンと化し、現在の複雑な構造へと変貌を遂げたのだという。
とはいえ、古代地下迷宮よりも難易度が低く、比較的安全なダンジョンってこともあり、みんなリラックスムードだった。
「地下水路だなんて、なんだか気分が悪いですわ。もっと上品なダンジョンはありませんこと?」
「「「「「……」」」」」
もしかして、下水のようなイメージなのかな? 公爵令嬢マリベルの一言で、若干空気は淀んだっていうか凍り付いたけど、負の要素なんてそれくらいだった。
回復術師として、ダンジョンに行くときはいつも興奮する。
それは【超越者たち】のときも同じだった。
今頃どうしてるのやら。
未練があるかっていえばまったくないけど。
木々の点在する草原を歩いていると、前方のほうにダンジョンの入口が見えてきた。
それは井戸だ。
「俺が先に行くから、慎重に降りろよ。くれぐれも、足を滑らせないようにな」
リーダーの戦士ベホムを先頭に、みんなで井戸の梯子を下りていく。
ここは郊外にあるし入り口は狭いしで、利便性という意味でも冒険者たちの足も遠のきそうなダンジョンだけど、僕には思い出深いダンジョンでもある。
なんせ、初めて潜ったダンジョンがここだからね。
【超越者たち】パーティーもあの頃はまだまだ駆け出しだったこともあって、すぐヘトヘトになってみんなで逃げるように帰ったのも良い思い出だ。
「――ふう……」
ようやく梯子を下り切った僕らは、ダンジョンのスタート地点に立った。
じめじめとした空間の脇には水路がある。
風もないのに不気味に波立つ水路は赤く光っていて、ダンジョンを明るく照らすとともにモンスターの発生源にもなっている。
ここは主にリザードマン、ブラッディアリゲーター、キラーフィッシュ、フューリーバット等のモンスターが出現する。
「こんなところ、ピッケル様の手を煩わせずとも、わたくし一人でも充分ですわ――って、ひ……ひあああああっ!」
マリベルが青い顔で悲鳴を上げたと思ったら、早速一匹のモンスターが登場した。
テーブルサイズのでっかいゴキブリ、すなわちジャイアントコックローチだ。そうそう、こういうモンスターも出るんだった。
「はぁっ……!」
その直後に剣士レビテがゴキブリをバラバラに切り裂き、一瞬で倒してしまった。
「マリベルったら、これのどこが怖いんでしょう……? むしろ、可愛いくらいですよっ」
「……」
何事もなかったかのように微笑むレビテが、僕は若干恐ろしく感じた。
「というかなあ、レビテ……。モンスターが現れたらよ、倒すんじゃなくてまずは俺を盾にするように心がけてくれ」
「あ……申し訳ありません、ベホムさん!」
ハッとした顔で平謝りのレビテ。まあ彼女は初心者だからしょうがない。
それ以降、僕たちはベホムの言う通り、モンスターを倒すことより、連携を高めるためにじっくり戦うことを優先した。
その結果、みんなそれぞれの役割をこなせるようになってきた感じだ。
「――ふう。マリベルもレビテも、中々いい感じじゃねーか。やっぱりセンスあるぜ。なあ、ジェシカ、ロラン、ピッケル」
「……うむ。私としてはまだまだ物足りないが、連携という意味ではまあまあじゃないかと」
「確かに、二人とも初体験の割りに、いい動きをしやがりますねえ」
「そうだね。この調子でいけば、今日中に仕上がるんじゃないかな?」
「フンッ、当然ですわ! こんなダンジョンであれば、わたくしとピッケル様だけでも十分なくらいですわよ。オホホッ!」
「……」
マリベルはすぐ調子に乗っちゃうんだからなあ。
「マリベルったら。あんまり我儘を言うようだと、コックローチさんの脚をプレゼントしちゃいますよ……?」
「ひぃっ⁉ レ、レビテ、それだけはやめてくださいまし! 想像もしたくありませんわ!」
マリベルが一転して異様に怯え出したので笑い声が上がる。
こんな感じで、色んな意味でパーティーの呼吸がどんどん合っていく。その楽しさを僕たちは肌で体感していた。これがあるから冒険者をやめられないんだ。
「――あ、みんな、ちょっと待ちやがれください! この感じ……多分、ボスがいやす!」
ふと、盗賊のロランが思わぬ言葉を発した。ここはモンスターが多くなる等の、ボスが出現するわかりやすい目印がない。だから盗賊の索敵が頼りになる。
この地下水路ダンジョンはそんなに頻繁にモンスターが出るわけじゃないので、化け物の放つ魔力に邪魔をされずに索敵をしやすいっていうのはある。
盗賊は頭で索敵すると思いがちだけど、実はそうじゃないんだ。
吟遊詩人が楽器を指で覚えるように、盗賊は利き手の指先に生じる僅かな感覚でボスの居場所を知覚することができる。
「しかも、なんか複数の声と悲鳴が聞こえてきやすぜ。ここからはかなりの距離がありやすが……」
「……」
複数の声と複数の悲鳴か。じゃあパーティーでボスと遭遇して交戦したものの、苦戦を強いられてるんだろうね。
ここのボスはそんなに強くはないけど、初心者パーティーじゃさすがに荷が重いので、そういう人たちが紛れ込んだのかもしれない。
「そんなに距離があるんじゃ、助けようにも間に合わんな……。気の毒だがしょうがねえ。ボスは後回しでもいいだろ。そもそも、俺らがここへ来たのは連携を深めるのが目的だからな」
「「「「「確かに……」」」」」
ベホムの言葉に僕たちは頷く。確かにそうだ。彼の言う通り、今から助けに行っても間に合わないし、ボスと戦うのはパーティーの連携にもっと磨きをかけてからでもいい。
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
ファンタジー
中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。