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第十一話 不意打ち
しおりを挟む「……すぅ、はあぁ……」
地面が霞んで見える。意識して呼吸しないと息が詰まりそうだ……って、あれ? 俺、生きてる?
ってことは……。
「……」
恐る恐る顔を上げると、それまでの光景とは明らかに違っていた。壁があり、その下にはバルテスの巨大斧によって木っ端微塵になったスケルトンの姿があった。
どうやら意識の【転送】に成功したようだ。バルテス、ミケ、ルザークの三人に試行した結果、乗り移れたのはルザークだけだった。何かこの三人に違いでもあるんだろうか?
あ……そういや、ルザークはかなり疲れている様子だったな。それも、スキルを使いすぎて精神力をかなり摩耗しているのが見て取れた。
なるほどなるほど、そうか。意識の【転送】には、相手の精神力も関係していたんだ。俺がスケルトンに乗り移れたのも、地下一階の雑魚モンスターだし元々精神力が弱かったからかもしれない。
「――あれれ、なんだこりゃ……。なあんにもレアなんて出てねえぞ……?」
バルテスが死骸を丹念に調べてるが無駄なことだ。あれは俺が中に入ってただけで、実際はただのスケルトンだからな。
「あの、ルザークさん、大丈夫ですか? ごめんなさい、何もできなくて……」
「……あ、ああ」
後ろからミケに話しかけられたが、若干返答が遅れた。中身はケイスだからルザークと呼ばれると違和感がある。
さて、これからどうしようか……。
ルザークの身内に中身が違うとバレたら、どんな方法で乗り移ったのか調べられる可能性が出てくるように思う。隠し効果は判明した時点で自動的に書き加えられる仕組みだから、乗り移る方法を検索すれば【転送】が引っかかってしまうはずだ。もう載ってるかどうかちょっと確認してみるか。タブレットはっと……あった。くたびれたズボンのポケットに入っていた。
スキルの名称【転送】
種類:特殊系
精神力の消費:小
効果:狭い範囲であれば、自身を任意の場所に瞬時転送できる。
隠し効果:精神力レベルが低下した相手に対し、意識を転移させることによって意のままに操ることができる。その場合は精神力を中程度消費するが、再使用するまで効果は続く。
評価:Fランク
やはり隠し効果が記載されていた。スキルの評価はFのままだったが、これでいいんだ。
驚異的な効果だから誰かが検索すればすぐ評価は高まるだろうが、その元の所有者が俺だってことは『サンクチュアリ』のやつらがよく知ってる。この噂が広がったら警戒されて復讐が難しくなってしまう。ボロが出ないうちにルザークの人間関係を清算しといたほうがよさそうだ。というわけで仲間を攻撃できるよう、パーティーからバルテスを追放してやった。
「ちっくしょー。こいつ、レアモンスターじゃなかったみてえだ……うごっ!?」
おっと……。バルテスの足元付近に短剣を投げて脅すつもりが、そのまま太腿の部分に刺さってしまった。それでも、戻ってこいと意識するだけで短剣はちゃんと俺の手元に帰ってきた。こりゃ便利だな。
「ぐぐ……な、何のつもりだ、ルザーク……」
「ここまでだ。バルテス、お前みたいな役立たずは金輪際必要ない。消えろ!」
「クソッ。ミケを独り占めする気か。お、おおお、覚えてやがれええぇっ!」
バルテスが足を引き摺るようにして逃げていくのを見届ける。
「る、ルザークさん……?」
「悪いがお前も役立たずだから消えてくれ、ミケ」
「そんな……役立たずなまま消えたくはないです。頑張りますから、どうか見捨てないでください……」
「……」
うーん。この子、かなり性格が良いっぽいな。バルテスと違って可愛いし連れて行ってやっても……いや、ダメだ。
「――うっ……」
「え?」
『……コォォ……』
急にミケが倒れたと思ったら、その背後にスケルトンが立っていた。やつが手に持った錆びた剣の矛先からぽたぽたと赤い雫が垂れ落ちている。
……そうだった。ここはダンジョンだった。ミケの背後に即湧きしちゃったんだな。
『グギイィッ!』
近距離から反則的な短剣の乱れ撃ちでバラバラにしてやった。仇は取ったぞ、ミケ……。
「……最後まで……役立たずでごめんなさい……」
血だまりの中でミケが発した言葉が俺の胸に突き刺さる。
うーん……本当にいい子だったんだな。それを見捨てようとした俺って、まるで『サンクチュアリ』のメンバーみたいじゃないか。実際そうだったんだが。まあもう死んじゃったものは仕方ない。とっととここから出るとしよう……。
「……う……」
「……え……?」
呻き声がして、まさかと思って振り返ると、ミケが足を滑らせながらも起き上がろうとしていた。
「ミケ、なんで生きて……?」
「……え……」
「自分の体を見てみろ!」
「……」
ミケは自分の血まみれの体を見て卒倒した。今度こそ死んだ? なんだったんだ今の……。恐る恐る近寄って確認すると、まだ余裕で息があったし出血も止まっていた。おいおい、嘘だろ……。
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