16 / 50
第十六話 刮目
しおりを挟む「――やああぁっ!」
乱れに乱れていた。
お下げ髪の乱舞に呼応するかのように、ミケの小さな体躯が小気味よく跳ねる。
「「「おおおっ……」」」
響き渡る歓声。ここは果たしてダンジョンなのか、それとも劇場か……そう思ってしまうくらい、俺とミケの周りには人だかりができていた。
それほどまでに彼女のモンスターを打ち砕く様子が見事だったのだ。
荒っぽく見えて、正確無比にアンデッドを潰していくその姿は紛れもなく師範代クラスの武闘家。少なくとも地下一階で見られるものじゃない。ミケが習得技術を非公開にしてなかったら、とっくに良いギルドに誘われてそうだ。
「親子でダンジョンかな?」
「いいなあ。あんな強い娘さんを持って……」
「しかも可愛い。うちのバカ息子の嫁にどうかな……」
「……」
親子のパーティーと思われたか。まあそう見えるよな。聞こえたのか、ミケが不満そうに観衆のほうを見やる。
「親子じゃないです! この人は恋人です!」
「「「えええ!?」」」
「ミケ……」
「へへ……ごめんなさい。行きましょう!」
どよめきに背を向けて俺たちは二階へと下っていった。ロリコン死ねだの通報しただの、なんか物騒な台詞も飛んできてるし、ルザークの評判がまた悪くなりそうだな……。
「――はあ、はあ……」
「……ふう、ふうぅ……」
見込みが甘かった、というべきか……。
地下五階の半ばまで来たところで、俺たちは引き返すことを余儀なくされていた。ボーンバット、スケルトン、ゾンビといった、出現するモンスターの種類は変わらないが、その密度が違うのだ。
下に行けば行くほど数の暴力が牙を剥いてくる。しかも近距離でモンスターの塊が即湧きすることもあるため、精神的な疲労も計り知れない。
「二人だけじゃさすがに厳しかったな……」
「そう、ですね……」
はっきり言ってボスどころじゃなかった。仲間集めが先だ。それがわかっただけでも収穫があったと思わなければ……。
「とりあえず戻って仲間を集めるか」
「はい! ……あ、ケイスさん、ちょっと待ってください」
ミケのやつ、道に落ちてる骨とかもいちいち拾ってポーチに入れてる。
「ミケ……そんなの放っておきなよ。売っても1ウェンにもならないやつだろ?」
「そうですが、塵も積もればなんとやらですよ!」
「そ、そうか……」
「故郷で教わったんです。すべてのものに無駄はないって……。こうした少しの努力の積み重ねでも道は開けてくると思います」
「偉いなー、ミケは……」
ついついミケの頭を撫でてしまった。あまりにも小さいので小動物のような感覚がある。
「へへ……嬉しいです……って、これじゃ、なんだか私ケイスさんの娘みたいじゃないですかあ」
「違った?」
「もー!」
談笑しつつ、即湧きのモンスターを処理していく。地上に近付くにつれて大分余裕が出てきたな。
タブレットでパーティーの現在位置を確認したら、もう地下二階まで上がってきているとわかった。道理でモンスターを見なくなったわけだ。ただ、あまりにも少ないような気もする。
――ん? 十字路の中央に差し掛かったんだが、右の通路の突き当りにいたモンスターが自然消滅したような……。そんなことがありうるのか? いや、そんなはずはない。だとすると……。
「……」
「ケイスさん、どうしたんです? むぐっ……」
通り過ぎたところで立ち止まり、ミケの口を封じた。
「静かに。やつらがいるかもしれない」
「も、もごっ……?」
壁から顔を出してそっと覗き込むと、やはりモンスターが現れては消えていた。姿は見えないが、やつらがあそこにいるのは間違いない。
となると、新しい玩具を弄り回してる最中か。止めたいが、今の状態でやつらに勝てるとは到底思えない。でもだからって引き下がるのは……いや、待てよ。勝つ必要はない。妨害すればいいだけだ。
「ミケ、上の階に行って、ここまで人を集めてきてくれ」
「……ええ?」
「訳はあとで話す。急がないといけない」
「は、はい!」
ミケが転びながらも走っていくところを見届ける。よし……『サンクチュアリ』め、見てろ。絶対にお前たちの好きにはさせないからな……。
11
あなたにおすすめの小説
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる