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第二十話 変態紳士
しおりを挟む「……あ、あ……」
とうとう限界が来て座り込んでしまった。
早く【転送】を使いたいんだが、いくらやっても魔法陣が出てこない。ダメだ、眩暈までしてきた。どうやら精神力を使い果たしてしまったらしい……。
「グヘヘ……。気が変わった。もう中古品でいいや。むらむらして我慢できねえ。ここでたっぷり犯してから殺してやる……」
「……」
斧の代わりに飛び込んできた言葉が俺の心をへし折る。俺、心は男なのに。しかもこんなやつに犯されるなんて生き地獄だあぁ……。
「や、やめろ。やめてくれ……」
「うるせえ……。あの世に行っても忘れられねえくらい、犯して犯して犯して犯し尽くしてやるってんだよ……。だからじっとしてろ。ハァ、ハァ……」
「い、嫌だぁ……うぅ……」
泣き真似をしてみたが本当に泣きそう。俺の心は萎え萎えだったが、対照的にやつの股間は盛り上がっている。
「こらこら。子供を泣かすなよ」
「……あ?」
「……」
こ、この声は、どこかで……。
「な、なんだてめえ、邪魔すん……な……」
バルテスの顔が見る見る青ざめていくのがわかる。しかも後退りしてるんだが……。
「おし、もう大丈夫だ」
「あ……」
俺の前に誰かが立つのがわかった。背中に夕陽を浴びた逆毛の男だ。ま、まさか……。
「が、ガウロ。なんでてめえがこんなところに……」
そうだ。あの『サンクチュアリ』のメンバーですら恐れていた男、ガウロだ。巨躯のバルテスがあれだけ怯えるのも無理はない。
「なんで俺がここにって……それ聞いちゃうかお前!? ここは覗きで有名な場所だろーが!」
……なるほど。覗いてみたら子供が襲われてたから助けにきたってわけか。変態だが正義感は強いのかもしれない。
「だ、だったら大人しく覗いてりゃいいんだ……。なんの関係もねーだろてめーは……」
「おいおい! 有名な場所だから、興味本位で覗いてみただけだ。それで泣いてる子供を見過ごすほど俺は大人しくないんだよ!」
「……」
正直惚れそうだ。どう言い訳しても覗きにきた変態であることに変わりはないが……。
「そうか。だったら……じにぇええええええぇぇっ!」
バルテスが目を血走らせて一気に迫り、斧を振り上げた。というかガウロが無防備すぎる。腰に手を当てて突っ立っているだけなのだ。巨大すぎる凶器が悲鳴のような唸りを上げる。おい、死ぬ気か……?
「……ハァ、ハァ……」
「……けほっ……」
舞い上がった砂埃がようやく収まってくる。肩を上下するバルテスの姿も見えてきた。やつの斧は四角いエリアの中央部分に深くめり込み、公園を完全に分断していたがガウロの姿はどこにもない。
「ど、どこだ、ガウロめ。どこにいやがる――」
「――ここだ!」
「はっ……」
バルテスは振り返るのと同時に斧を半回転させたが、手応えがない様子で呆然としていた。あ……やつ突き出た腹にガウロの目があるのがわかった。そうか、あのときみたいに体の中に入ったんだ。
「ひ……て、てんめえええっ!」
ようやく気付いて自分の腹を殴りつけるバルテスだったが、そのときにはもう横にガウロが立っていて、呆れたように笑っていた。何気に敵対したらかなり厄介そうなスキルだな、あれ……。
「お前……そんなんで俺に勝てると思ってんのか!? てか少しはダイエットしろ!」
「う……うるせええええぇぇっ!」
バルテスの怒りが爆発したのか、さらに膨張した斧が植木をことごとくなぎ倒していく。最早ただの空き地となった四角いエリアで、バルテスはなんの意味もなく斧を振り回している状態だった。
「……う、動かねぇ。体が……コンチクショウ……」
なんだ? バルテスの動きが急に止まったと思ったら、その背中にガウロの顔があった。まさか、操ることもできるのか……?
「おーし。準備が出来たしそろそろ終わりにしようか。お嬢ちゃん、しばらく目を瞑ってな」
「え?」
「いいから、早く」
「あ、うん」
「いい子だ……」
それからすぐだった。バルテスの悲鳴が聞こえてきたのは……。
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