46 / 50
第四六話 ハッタリ
しおりを挟む「いいか、お前ら耳糞掃除してよく聞けっ! 俺はなあ、こんなか弱い子を見捨てて逃げちまうくらいなら、死んだほうがマシなんだよバーカッ!」
「まあまあ、勇敢な殿方ですこと。目に見えて動きが鈍っていらしゃいますのに、やたらと強がりますのね……」
「ハッハッハ! ハッタリが俺の最大の武器でな……? これがあると極限状態でも自分を鼓舞できるし、とんでもない馬鹿力も発揮できるから便利だぜえっ!」
「……マスター、本当にしぶとい、この男……」
いつもより少し開いたエルフィの目が、ガウロの土壇場での粘りがいかに凄いかを物語っていた。彼は体力がなくなっていく過程でエルフィの攻撃が掠り始めても一切動揺せず、それどころか逆に笑みを浮かべてみせるなど、百戦錬磨のエルフィでさえも追い打ちすることをためらうほどの不気味さを放っていたのだ。
「マガレもロンもボヤッとしてないで参加しなさい!」
「えー、エルフィがいるから充分でしょうに……」
「そうだよ、そんなのエルフィに任せておけばいいのさ!」
「やりなさい!」
「「……」」
ロンとマガレットの二人が渋々といった様子で参戦するも、やる気がないらしくてエルフィの邪魔になるだけであっさりと戦線を離脱してしまった。
「まったくもう……とんでもない役立たずどもですわ!」
「ど、ど、どんだけあたしの【朦朧】スキルで助けられたと思ってるのさ!」
「マスター、そりゃないよ。僕の【忘却】スキルがなかったらここまで殺せてなかったのに……」
「うるさいですわ! 二人とも黙りなさいっ!」
「へへっ。こんなときに仲間割れとはな、助かったぜ。シルウ、お前も疲れたのか回復魔法の威力が少し弱まってきたな……!」
「……ガウロ、実際に戦って見てわかりましたが、あなたのスキルには正直興味があります。その子も殺さないので、ここで誰かの体に【寄生】して逃げてみては……?」
「ハッハッハ……。その手には乗らねえ。そのロンとかいうやつのスキルで記憶を消されちまうだろうからな……?」
「仲間にそんなことをするわけありませんことよ……? そんなことができるなら既にやっています」
「そりゃ【忘却】ってのは一度触れた相手にしか効かないはずだからなあ。しかも味方には効かないときた。つまり誰かの体に乗り移った途端、異物の俺だけ最近の記憶を消去されてわけがわからないうちにやられちまうってわけだ。意志力がなくなれば【寄生】状態だって解けちまうからな」
「……おバカに見えて意外と頭はキレる男のようね」
「いやあ、照れちまうぜ。馬鹿だからこそ研究熱心なんだよ。ハッハッハ……」
「くっ……」
「マスター、心配しなくても大丈夫だ。こいつもうすぐ殺せる」
「あら……エルフィ、それは良い兆候ですわねえ……」
「おー、よくわかってんな。ま、そろそろ限界だし仕方ねえかあ……なわけねえだろ!」
ミケの体に乗り移ったガウロはそれでも余裕の表情を崩すことはなかった。
「ご自慢のハッタリとやらで、あとどれくらい耐えられそうですかね?」
「あ! あそこに誰かいる! おーいっ!」
「……哀れな男。そんなものに引っ掛かると本気で思ってますの……?」
「本当だって! おーい、ここだー、助けてくれー!」
「エルフィ、何をしているのですか、早くこの汚物ごと殺しなさい!」
「……」
「エルフィ……!?」
「マスター、まずい。本当に誰か来る」
「……は?」
「マ、マジかよぉ」
「そ、そんな、本当なのかい……」
エルフィの言葉によってシルウ、ロン、マガレットの間で戦慄が走る。
「ほおら、俺の言った通りだろー……?」
ほぼ一瞬の出来事であった。『サンクチュアリ』の面々が気付いたときには、ファルナスら『デスペラード』のメンバーが今まさに襲い掛かろうとしてくるところであった。
「ハッタリ野郎の渾身の真実が伝わらなくて残念だぜ……。もちろんただのハッタリのつもりだったんだけどな……! ふー……俺はちと休ませてもらうぜえ……」
ガウロがコントロールしているミケの体が座り込んで動かなくなったのは、その直後のことであった。
1
あなたにおすすめの小説
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる