道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し

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三十九話 道具屋のおっさん、いざ尋常に勝負する。

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 駅で例の家族をいつものように殲滅したあと、俺たちは馬車に乗り込んで武器屋『インフィニティ・ウェポン』へと向かった。

 今日こそあの生意気なハーフエルフをクッコロさせてやるぜ。見てろよおお。

「ちゅー」

「……」

 気付けばエレネが俺の唇を吸っていた。仕方ねえなあ。

「かー……ぺっ!」

「あむっ……んん、美味しいっ……」

 オラのデェエキがそんなにうめぇのか。エレネは本当に変わってんなあ。

「……モルネトさん、好き……」

「……うっ……」

 エレネの潤んだ目を見てくらっとなる。エレネ、なんて可愛いんだ。もうこいつと結婚して終わりでいいんじゃね?

 ……って、俺は何を考えてるんだ。そうか、またあいつの仕業だ。なんの役にもたたねぇ善人モルネトの野郎が顔を出してきやがったんだ。お前のやろうとしてることは美味しいとこ取りだぞ。クソッタレめが。

「おい爺さん! もっと飛ばせ! ぶっ殺すぞ!」

 闇の面を積極的に出すことにより、無理矢理善人モルネトを封じ込めてやる。

「は、はいですじゃあぁぁあ!」

 ――馬車はあっという間に武器屋に到着した。やればできるじゃねえか。爺さんは既に泡吹いて息絶えてたが……。



「「ちゅうぅ……」」

 店内でエレネといちゃつく中、とうとうやつがやってきた。

 ツンととんがった耳、思わず汚したくなるほどの白い肌と青い瞳、何よりけしからんおっぱいとお尻を携えた少女メスガキ……ハーフエルフのリュリアだ。

「エレネ、やれ」

「はいっ……」

「――なっ……!?」

 エレネが満を持して氷結剣を振ると、リュリアは驚愕の表情のまま凍った。よし、今だ。俺はすかさず迅雷剣をやつに向かって振った。もしかしたらこれで死ぬかもしれないが、それはそれでレベルUPして美味しいし、またやり直して今度は手加減してやればいい。

 ……あれ? 確かに電撃を食らわせたはずだが、リュリアの姿は視界から忽然と消え失せていた。まさか、威力が強すぎて蒸発しちゃったのか? でも、その割にレベルUPした感覚はないが……。

「ひゃあ!」

「……なっ……」

 エレネの悲鳴がして振り返ると、ひんやりとした感触が首元にあった。

「……何者だ……」

「……」

 リュリアが氷結剣を俺の首にあてがっていた。こいつ、エレネから奪いやがったのかよ。一連の動作が速すぎる……。しかし、おっかしいなあ。確かに凍った状態で電撃を当てたというのに、まったく効かなかったっていうのか……?

「貴様、どうせ王都の刺客だろう……」

 ……なるほど。左遷されただけじゃなく暗殺される可能性もあると考えてたんだな。こいつ自身勇者パーティーを狙ってるわけだから疑心暗鬼にもなるか。

「……い、いや違う。俺は刺客じゃない……」

「……何?」

「人違いだった。悪かった……」

「……そ、そうなのか?」

「……」

 こいつ、きょとんした顔になった。やっぱりズレてる……。

「あ、ああ。こんなにおっぱいもビッグでお尻もキュートな子を俺が襲うわけないだろ……」

「……ん……そ、そんな……ところ……」

 こいつ、襲った俺が触りまくってるのに全然抵抗しないな。やっぱりビッチだったか。

「な? 信じてくれよ。リュリア……あ」

 しまった。名前を言ってしまった……。

「貴様、何故私の名前を知っている。……やはり刺客だろう……」

「……ぐ、偶然だ。よくある名前だろ、リュリアなんて」

「……た、確かに……」

 ……こいつやっぱりズレてる……。

「……いや、やっぱり怪しいような気がする。殺す……」

 くっ。やはりダメか。だがこいつに何度もやられるわけにはいかん。俺はジーク・モルネトだぞ……。

「ま、待て。美しいお前に殺人は似合わない……」

「……」

「ほ、本当だって。間違って襲撃したお詫びとして俺の迅雷剣をお前にやるから……」

「……い、いいのか?」

 こいつ、露骨に表情が明るくなったな。単純なやつ……。

「ああ。戦ってみて、これはお前にこそ相応しいと感じた。その代わり、その氷結剣は返してくれ」

「わかった。かたじけない……」

 リュリアが迅雷剣を手に足早に立ち去っていった。

 ……はー、危なかった……。まあループすればまた武器屋の展示ケースの中に戻るだけだしこれでいいんだ。その鍵を倉庫から取り出すための暗号も知ってるしな。

「モルネトさん、ごめんなさい……」

 エレネ、半べそ状態だ。

「まー仕方ない。リュリアが強すぎた。っていうか、なんで電撃がまったく通用しなかったんだろ……」

 路地裏であいつに電撃を食らわせたときのほうがまだ効いてた気がするな。そのときより俺の魔法攻撃力は断然上だというのに……。

「……あ……」

「ん?」

 エレネがはっとした顔になった。何かわかったらしい。

「確か氷って、雷を通しにくかったはずです……」

「……そ、それって……じゃあつまり氷が電撃を防ぐための鎧になったってわけか……」

「ですねぇ……」

 ……だからまったく効かなかったんだな。あいつ、ただでさえ魔法耐性めっちゃあるだろうし。
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