道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し

文字の大きさ
46 / 66

四十六話 道具屋のおっさん、消える。

しおりを挟む

「……こ、ここは……?」

 リュリアが唖然とするのも無理はないか。

「リュリア、ここはな、俺の道具屋――」

「――私とモルネトさんの愛の巣です」

「エレネ……」

「「ちゅうぅっ……」」

 ダメだ。引っ張られてしまう。エレネの吸引力は吸盤カード以上だ……。エレネのやつ、いつもよりずっと鼻息が荒いし貪るかのようだ。リュリアに見られてるからか。

「……その、モルネトどの、私もしてもよろしいだろうか……」

「ああ。来いよ」

「はい」

 気高きハーフエルフも、自分より強い男には完全に服従するということだろう。俺とキスしたくてしょうがないといった様子だ。

「「ブチュッ」」

 リュリアの尖った耳がひくひくしてるな。それはいいんだが、彼女とのキスはどうしても集中力が分散してしまう。大きな胸やお尻に気を取られてしまうのだ。

 もみもみ、さわさわ、みもみも、わさわさ。

「……ん、ん……」

「モルネトさん、早く新カードを見ましょう」

「あ、そうだったな」

 エレネの冷たい声が降り注いできて、ようやくそのことを思い出した。

「「「これは……」」」

 カードを見た俺たちの台詞が被る。そこには何も載っていなかった。

「なんじゃこりゃ。白紙のカード?」

「ですねぇ……」

「ふむ。一体なんの効果なのだろう……」

 一番運の数値がいいリュリアが引いたものだし、悪くないものだと思いたい。

 というわけで試しにおでこにカードをつけて、モルネトと念じてみせた。

「エレネ、リュリア、何か変わったか?」

「……いえ、特に何も……」

「き、消えた……」

「「えっ?」」

 リュリアの台詞に対し、今度は俺とエレネの素っ頓狂な声が被る。消えただと? じゃあこれは透明人間になれるカードなのか? でも、なんでエレネには見えてるんだ……。

 ……あ。そうか、エレネはパーティーメンバーだからだ。リュリアはまだ仲間に入れてなかった。

「……あ、見えた」

 リュリアをパーティーカードでメンバーに加えると、やはり俺の予想通りの結果になった。

 つーことは、みんなの名前をこの透明カードに念じれば俺たち以外には誰も姿が見えなくなるってことか。よーし、これなら勇者パーティーに挑めるかもしれないな。



 ※※※



「くっ、殺せ! ぐはっ!」

「はっはっは」

「ふっふっふ……」

 俺の迅雷剣をお尻に、エレネの氷結剣を胸に受けたリュリアが血を吐いて倒れる。これで何度目だろうか。

 エレネとだけパーティーを組む形で、何度もリュリアにクッコロさせてから殺したおかげで、俺は2682、エレネは1924レベルまで上がった。もちろんそのあとは三人で盛り上がって特製白ポーション精製に励んだわけだが。

 いやー、楽しかったな。ウサビッチが人が変わったようにリュリアをいじめてるのが面白かった。ドエムってドエスの才能もあるんだな。

 なんか恨みでもあるのかってくらい、時折ニヤニヤしつつ執拗に攻撃してたからヤバかった。特におっぱいに対する攻めが物凄くて、この俺でさえドン引きするレベルだ。それでもリュリアのやつが満更でもなさそうだったのは、さすがはハメガキといった感じだったが……。

 そんなわけで、楽しさゆえかあっという間に時は過ぎ、小鳥たちによる爽やかな朝チュンタイムがやってきた。

「「「ちゅー……」」」

 ベッドの上でトリプルキッスを華麗に決めて、俺たちは早速準備に取り掛かる。

 特製白ポーション540個、黄ポーション320個を店内に詰め込み、颯爽と外に出る。当然だが、三人とも透明カードのおかげでパーティーメンバー以外には見えないので、今までのように白い塀の後ろに隠れる必要もない。

 さあ、来い。勇者クリス、戦士ライラ、僧侶ミヤレスカ、魔術師アルタス。それに見てろよ、善人モルネト。ジーク・モルネトの真の力を存分に見せつけてやるからなあ……。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...