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四十六話 道具屋のおっさん、消える。
しおりを挟む「……こ、ここは……?」
リュリアが唖然とするのも無理はないか。
「リュリア、ここはな、俺の道具屋――」
「――私とモルネトさんの愛の巣です」
「エレネ……」
「「ちゅうぅっ……」」
ダメだ。引っ張られてしまう。エレネの吸引力は吸盤カード以上だ……。エレネのやつ、いつもよりずっと鼻息が荒いし貪るかのようだ。リュリアに見られてるからか。
「……その、モルネトどの、私もしてもよろしいだろうか……」
「ああ。来いよ」
「はい」
気高きハーフエルフも、自分より強い男には完全に服従するということだろう。俺とキスしたくてしょうがないといった様子だ。
「「ブチュッ」」
リュリアの尖った耳がひくひくしてるな。それはいいんだが、彼女とのキスはどうしても集中力が分散してしまう。大きな胸やお尻に気を取られてしまうのだ。
もみもみ、さわさわ、みもみも、わさわさ。
「……ん、ん……」
「モルネトさん、早く新カードを見ましょう」
「あ、そうだったな」
エレネの冷たい声が降り注いできて、ようやくそのことを思い出した。
「「「これは……」」」
カードを見た俺たちの台詞が被る。そこには何も載っていなかった。
「なんじゃこりゃ。白紙のカード?」
「ですねぇ……」
「ふむ。一体なんの効果なのだろう……」
一番運の数値がいいリュリアが引いたものだし、悪くないものだと思いたい。
というわけで試しにおでこにカードをつけて、モルネトと念じてみせた。
「エレネ、リュリア、何か変わったか?」
「……いえ、特に何も……」
「き、消えた……」
「「えっ?」」
リュリアの台詞に対し、今度は俺とエレネの素っ頓狂な声が被る。消えただと? じゃあこれは透明人間になれるカードなのか? でも、なんでエレネには見えてるんだ……。
……あ。そうか、エレネはパーティーメンバーだからだ。リュリアはまだ仲間に入れてなかった。
「……あ、見えた」
リュリアをパーティーカードでメンバーに加えると、やはり俺の予想通りの結果になった。
つーことは、みんなの名前をこの透明カードに念じれば俺たち以外には誰も姿が見えなくなるってことか。よーし、これなら勇者パーティーに挑めるかもしれないな。
※※※
「くっ、殺せ! ぐはっ!」
「はっはっは」
「ふっふっふ……」
俺の迅雷剣をお尻に、エレネの氷結剣を胸に受けたリュリアが血を吐いて倒れる。これで何度目だろうか。
エレネとだけパーティーを組む形で、何度もリュリアにクッコロさせてから殺したおかげで、俺は2682、エレネは1924レベルまで上がった。もちろんそのあとは三人で盛り上がって特製白ポーション精製に励んだわけだが。
いやー、楽しかったな。ウサビッチが人が変わったようにリュリアをいじめてるのが面白かった。ドエムってドエスの才能もあるんだな。
なんか恨みでもあるのかってくらい、時折ニヤニヤしつつ執拗に攻撃してたからヤバかった。特におっぱいに対する攻めが物凄くて、この俺でさえドン引きするレベルだ。それでもリュリアのやつが満更でもなさそうだったのは、さすがはハメガキといった感じだったが……。
そんなわけで、楽しさゆえかあっという間に時は過ぎ、小鳥たちによる爽やかな朝チュンタイムがやってきた。
「「「ちゅー……」」」
ベッドの上でトリプルキッスを華麗に決めて、俺たちは早速準備に取り掛かる。
特製白ポーション540個、黄ポーション320個を店内に詰め込み、颯爽と外に出る。当然だが、三人とも透明カードのおかげでパーティーメンバー以外には見えないので、今までのように白い塀の後ろに隠れる必要もない。
さあ、来い。勇者クリス、戦士ライラ、僧侶ミヤレスカ、魔術師アルタス。それに見てろよ、善人モルネト。ジーク・モルネトの真の力を存分に見せつけてやるからなあ……。
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