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四十七話 道具屋のおっさん、覚醒する。
しおりを挟む「おえぇぇええええええっ!」
「ヴォエェェエッ!」
いつもの二人の悲鳴のあと、魔術師アルタスと僧侶ミヤレスカが道具屋の中に入っていく。今だ。
ドッグアアアァアアアンと迅雷剣で道具屋を瞬時に破壊する。2682レベルの電撃は想像を絶する破壊力で、衝撃波のおまけつきだった。
手筈ではこうだ。電撃を叩きこんでやつらを特製ポーションまみれにしたあと、出てきたところでエレネが氷結剣で足止めしてリュリアが殴りかかるというわけだ。
全員出てきたところでさらに電撃を加えてフィニッシュという未来予想図は出来ている。
占いカードを使えば結果は容易にわかるが、過程を楽しみたいので使わない。
「嫌っ、嫌あああ……く、臭い! 死ぬううぅ!」
お、ミヤレスカが出てきた。もうほとんど裸だな。なのに気になってるのは臭いだけか? まだ余裕がありそうだが、体力的にはかなり削れてるだろうしヒールを使わせたくない。
「エレネ、やれ」
「はい……」
エレネの氷結剣でミヤレスカが凍る。
「リュリア、行け」
「はっ……」
リュリアがほぼ一瞬でミヤレスカに接近し、蹴りで氷を割ってしまった。
「うぐぅ! だ、誰かここにいますわ! エクストラヒールッ!」
なんだあいつ……一方的にリュリアから攻撃されてるのにほぼ無傷だ。エクストラヒールとかいうのでめっちゃ回復してそうだな。
「エレネ、やつを回復させるな」
「はいっ」
エレネが氷結剣で凍らせ、リュリアが割るというやり方を連続させることでヒールさせ辛くする狙いだ。
「おいミヤレスカ、どうした!?」
「どうしたんだい!?」
「「はっ……!」」
勇者クリスと戦士ライラが参戦してくるが、はっとした顔のまま氷漬けになった。空気を読んだエレネが凍らせたのだ。
「鬼畜ミヤレスカ、覚悟っ!」
「ひぎいっ!」
よしよし、リュリアのやつ、やつらに邪魔される前にまずミヤレスカを集中攻撃して仕留めようとしてるな。
「ふむ、どうやら敵襲のようだな……」
あ、魔術師アルタスが瓦礫の中から出てきたかと思うと、小声で何やら呟いて手をこっちに伸ばしてきた。小さな火の玉が凄い勢いで飛んでくるのがわかって、とっさに身を伏せる。
「ひゃっ!」
「エレネ……?」
隣にいたエレネの顔がまたたく間に溶けてドクロになった。う、嘘だろ? 1924レベルになって、魔法耐性だってかなり上がったはずなのに……。
……これがアルタスお得意の火の魔法ってわけかよ……。
「ふん。やはり虫が隠れていたか……ふわぁ……」
やつは平然と言ったかと思うと欠伸しやがった。クソッタレめ……。
「まだいるかもしれん。ミヤレスカ、バリアを」
「了解ですわ! ディバイン・プロテクション!」
うわ、エレネが死んだことでミヤレスカがフリーになって結界を張られたようだ。どれくらい耐えるのかと思って、俺が走りながらやつらに向かって氷結剣や迅雷剣を振ってみたんだが、まったく効かなかった。まずいな、凍っていたクリスとライラも元に戻ってしまっている……。
「そこか……?」
「うっ……!」
またさっきの強烈な火の玉が向かってきて、すぐ近くを通り過ぎていった。ヤッベ……。走り撃ちじゃなかったら死んでいた。異常な命中精度の高さだ……。
「ふむ。外れたか。楽しませてくれる……」
「くうっ! エクストラヒール! サーチライトッ……!」
あ、一方的に殴られていたミヤレスカがぐるぐる回る光の玉を掌の上に出したかと思うと、透明なはずのリュリアに勇者パーティーの視線が集まった。どうやら隠れた敵を発見する魔法のようだ……。
「アルタス、こいつ強いから頼むぜ!」
「頼みますわ!」
「了承……」
「あたい見覚えあるよ! こいつ、例の糞ハーフエルフじゃないか!」
「うむ……」
アルタスから次々と放たれる火の玉をしのいでいたリュリアだが、姿が見えたことが影響してか、とうとうかわしきれずに命中し、炎上してしまった……。
「ぬううぅっ!」
……あれ、生きてる。さすがは魔法耐性の高いハーフエルフってところか。それでも酷い火傷を負ってる上、服は全部燃えて全裸になっちゃってるが。
「アルタス、貴様だけは許さん!」
おおっ、リュリアが大きなおっぱいを揺らしながらもアルタスに突進していった。わおっ、エロい。
「三人とも、この輩は我がやるから手出し無用だ……」
「「「了解」」」
クソッ、あいつら余裕こきやがって……。
「……」
さすがに魔術師の身体能力なら、接近戦では不利になるはずと思った俺だったが、目の前で展開される信じられない光景によってすぐに打ち消されてしまった。
アルタスのやつ、眠そうにしながらもリュリアの怒涛の攻撃をかわしまくっていたのだ。それも時折欠伸しつつ、全てギリギリのところで避けていて、あたかも退屈しのぎでもしているようにすら感じた。レベル6000以上だからか? レベルもそうだが、やつからは圧倒的なオーラを感じる。
「うむ……飽きたから終わらせるぞ。偉大なる火の精霊よ……我が掌中にて赤き刃となれ。フレア・ブレードオォォッ!」
アルタスの手に炎の剣が形作られていく。
俺はいつでも自決することができた。この光景を終わらせることができた……。だが、やつはそれをさせなかった。
「さあ、踊れ」
「……ひっ……」
リュリアのアソコに少しずつ埋め込まれていく炎の剣。刀身が彼女の中に全て飲み込まれた瞬間、火達磨が完成し踊り始めた。むくむくとアルタスの股間が隆起していくのがわかる。
「見たまえ……。我の火の魔法であっても、すぐには灰にならないほど頑強なのだ彼女は……。だが、哀しいかな……それゆえにどこまでも踊り続ける。クククッ……」
リュリアの痛々しい悲鳴が響き渡る中、気が付けば俺も覚醒していた。さすがは俺の愛息子。アルタスに比べると俺の力量はちょびっと劣ってるかもしれんが、息子の変態度じゃ負けんぞ……。
「ジイィィィィィイイイイクッ、モルネェエトッ!」
やつの火の玉が迫ってくる前に喉を突くことができた。だから俺の勝ちだっ……!
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