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二十八話 道具屋のおっさん、手応えを得る。
しおりを挟む「おいおい、おめぇたち、この剣が何か知らねぇのか? かー、遅れてんなぁ……」
「「「へ?」」」
迅雷剣を見せびらかしてやると、やつら全員きょとんとした顔を見せた。なんだよこの示し合わせたかのような同じ反応。顔は似てないがマジで兄弟かなんかか?
「おめぇらよぉ……迅雷剣って知らねぇのか? これすんごく強力な剣でよぉ、オラが振るだけで強力な雷が出ちまうんだ……」
「「「ひっ!」」」
やつら、怯えた顔で抱き合ったかと思うと、一人がはっとした様子でエレネにナイフをあてがった。遅い遅い。電撃を食らわせようと思えばできていたぞ。
「は、はったりだ……! 俺はそんな剣なんか知らんぞぉ……!」
「そ、そうだぁ。兄貴の言う通り、言う通りなんだぁ。うぅっ」
「う、撃てるもんなら撃ってみやがれカマ野郎! おいら、こいつが死んじまっても知らねえからなあ!?」
三人ともガタガタと震えながらナイフをエレネに向けてる。なのにエレネのやつニヤニヤしてるんだから凄い。こいつらの慌てぶりが面白いんだろう。
「そっか。じゃあ死んでくれや」
「「「ひぃ!」」」
やつら、俺が笑みを浮かべながら迅雷剣を振りかぶると、自分だけは死にたくないと思ったのか散り散りになった。
「エレネ、戻ってこい」
「はーい」
「……ほら、おめえら早く逃げろよ。三人ってことで三秒だけ待ってやっからよ。いーち、にいぃ……」
「「「――ぎゃああああああああぁぁ!」」」
あいつらが全員背中を向けたところで、迅雷剣を振って即死させてやった。焦げくせぇなあ……。
「……もしもし……」
「……へ?」
すぐ後ろにあのハーフエルフが立っていた。お、おいおい、いつの間に……。物欲しそうに迅雷剣を見つめてるかと思うとひざまずいてきた。
「是非……是非その剣を私にお譲り頂きたい。私にできることであればなんでもするゆえ……」
「そう言われてもなあ……」
とりあえず、大きく実った二つの果実を両手で揉む。今までの恨みの分だ。
「ん、んう……こ、これだけでいいのだろうか……」
「んー、これだけじゃちょっと足りないかなあ。できれば、お尻も……」
「で、では、どうぞ……」
素直にお尻を向けてくるところがちょっと可愛かった。しかしなんとも良い形をしているな。何度触っても飽きそうにない。エレネを見るとつんとした顔で視線を逸らされた。ウサビッチの嫉妬か。可愛いもんだ……。とりあえず今はこいつに集中だ。
「なでなで、なでなで……」
「……うっ、く……」
感度いいなあ。さすがはハーフエルフ。そういうところもレベルが高いんだろう。
「……も、もうそろそろよいだろうか……」
「ん? ああ。でもなんでこの剣を欲しいのか聞きたいかなぁ。股間の剣ならいつでもやれるが……」
「……それなら、場所を変えてもよろしいだろうか」
「あ、ああ」
まあ夜まで時間あるからいいか。っと、その前に迅雷剣で試し撃ちさせてもらおう。痴漢に夢中になりすぎてて本来の目的を忘れてしまっていた……。
「おっとっと!」
「ぬう?」
派手に転ぶ振りをして、ハーフエルフに向かって迅雷剣を振った。
「……ぬぅ。だ、大丈夫か?」
「あ、ああ」
俺に手を差し伸べてるが、若干顔をしかめてる。少しは効いたようだな……。エレネもうなずいていた。この調子でレベルを上げていけば近いうちに降参(クッコロ)させることができそうだ。
※※※
「この辺に家が?」
「……」
このハーフエルフのメスガキ、歩くのに夢中なのか俺の声にすら反応せずどんどん前に行くし、それがやたらと速いしでこっちは追いつくのに必死だった。お尻振り振りして歩いてるところは魅力的だが、なかなか追いつけないから腹立つなあ。あー早く触りたい……。
「――到着した」
やつは蔦まみれの邸宅前で急に立ち止まったが、俺がわざと覆いかぶさってもびくともしなかった。もちろんどさくさに紛れて尻と乳を揉むことも忘れない。
「う……あ、あの、到着……ん……」
「あ、わりーわりー。ついつい……」
「……お、お気になさらぬよう」
こいつ、満更でもなさそうだしエレネ同様絶対ビッチの素質あるな……。
「も、モルネトさん、私ちゅーしたいです……早くちゅーください……」
「……ちっ、しょうがねえなあ。ブチュッ」
「ちゅー……んう……」
エレネがしゃがみこんでいじけてたから仕方なく口づけしてやった。さらにデェエキも注いでやる。凄く満足そうにしてるな。充電してやったからこれでしばらく大丈夫だろう。
「お二人とも、お入りを」
「「あ……」」
錆びた鉄柵越しにハーフエルフに手招きされて中に入ったわけだが、室内はそこそこ広いものの本当に住めるのかどうかすら怪しい廃屋みたいなところだった。
「こんなところに住んでるのか……」
「ちょっとボロボロですね……」
いや、エレネ。ちょっとどころじゃないぞ。天井には幾つも亀裂が入ってるし、床は歩くたびに軋むし、壁に掛かった絵画やシャンデリアさえ大きく傾いてるし、今にも崩れそうなボロ屋敷だ……。
「こちらへ……」
ハーフエルフが燭台を手に、ロビーの床の一部を開けた。なんだ、地下室があるのか……。
――説明を聞いてみたんだが、誰も住んでない廃屋のように見えるのは防犯のためのカモフラージュで、地下にこいつの本当の部屋があるらしい。要するに隠れ家ってわけだ。こんだけ強いなら襲われても大丈夫そうだけどな。妙に用心深いやつだ……。
しかもすぐ部屋に辿り着けるわけじゃなくて、そこから長ったらしい階段を下りる必要があった。
「ずいぶん用心深いんだな」
「……」
な、なんだ。俺の声に反応したのか振り返ってきたんだが、蝋燭の灯りに照らされたハーフエルフの顔、まるで生気がなかった。
「ど、どうしたんだ?」
「……ここが私の部屋だ……」
お、ようやく着いたのか。重厚な扉が軋みを上げて開かれていく……。
……って、な、なんだこの部屋……。
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