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22話 解
しおりを挟む「……うっ……」
パーティー宿舎へ向かう途中、俺は軽くめまいを起こして座り込んだ。
「カ、カレルさん!?」
「どうしたんだい? カレル君」
「……なんか、急にめまいがして……」
「ええっ!?」
「息は苦しいかい?」
「……は、はい……」
緊張のせいかな……? 人間不信気味の俺が、人の気配のない山中とはいえパーティーの宿舎へ行くわけだし……。
「あぁ、それは洗礼だね」
「「……洗礼?」」
「そう。ここは高地だから、酸素濃度が低いんだ。そしてこれこそ、僕たちがこういうところに宿舎を構える最たる理由でもある。ここで日常生活や訓練をやることで、より効果的に体を鍛えられるってわけさ」
「「なるほど……」」
俺は一度は納得したものの、とあることに気付いてはっとなった。一つ疑問が浮かんだんだ。
「……俺はともかく、なんでコレットは平気なんだ……?」
「……な、なんででしょう? 鳥さんの血が混じってるからでしょうか……」
「「……な、なるほど……」」
俺はジラルドと高度な被り方をしてしまった。
「あと、山の中とかも何度か旅の途中で歩いてきましたし、慣れてはいるんです!」
「……そっちのほうが納得できるな」
「僕も……あ、カレル君、具合はもう大丈夫そうかい?」
「あ……まだちょっと苦しいけど、これくらいなら……」
「へえ。体力の回復が早いんだね、カレル君は」
「カレルさんは毎日のように沢山の道具を運んでましたから、それで体力を鍛えられたからですね!」
確かに、毎日運搬の仕事をやってたようなものだからな。
「カレルさんに私が酸素を送ります。パタパタ、パタパタ……」
「……」
コレットの翼がはためいて涼しいが、かなり照れ臭い……。
「こりゃどっちも期待できそうだねえ」
「えっ、私もですかぁ? できることなんてあるでしょうか?」
「コレットさんは、主にその明るくて不思議な感じのキャラクターのほうにね!」
「はい……え、えぇっ?」
「「あははっ」」
正直、緊張もかなりあったんだが今のやり取りで大分解れた気がする。
「ただいまー!」
満を持して俺たちが宿舎の中に入ると、ジラルドが声を張り上げた。玄関から既に凄く片付いてるし広々としてて廊下も奥行きがあり、いかにも強豪パーティーの本拠地って感じだ。
「……ここだけの話なんだけど、いつもは散らかってて狭く見えちゃうんだけどねえ……」
「「あはは……」」
まあどこもそんなもんか。俺たち新人が入ってくるってことで、気合を入れて掃除したってわけだろう。ただ、隅のほうにゴミとか一切溜まってないし、普段からこまめに掃除してる人がいるんだろうな。俺の母さんなんて、客が家に来るときくらいしか掃除しなかったし、あくまでも綺麗にするのは表面だけでよく見ると色んなところが汚れてたから。
「ドキドキしますね、カレルさん……」
「あ、あぁ……」
「手をつなぎましょうか!」
「い、いいよ、そこまでしなくても」
「じゃあ体をぴったりくっつけましょう!」
「おいおい……」
「じー……」
「「……」」
ジラルドが玄関の扉から体半分だけ出して覗いてくるんだが、妙に情念を感じて怖い。いちゃついてるつもりなんてまったくなかったんだが、そういう風に見えてしまったってことだろう。お、慌ただしい足音が近づいてくる。いよいよ有名パーティー《ゼロスターズ》のメンバーとご対面ってわけだ。
「……う……」
ヤバイ。緊張しすぎて少し過呼吸になってきた……。
「大丈夫ですよ、カレルさん。すぐ慣れますから……」
「あ、ありがとう、コレット……」
コレットが声をかけてくれたおかげか、少し落ち着いてきた。
「どうしても落ち着かない場合は、私の後ろに隠れてもいいですよ!」
「いや、さすがにそれは……」
「じー……」
「「……」」
ジラルドの情念が募った視線がさらに重みを増してるかのようだった……。
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