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第三章 魔法学園

賢者の称号 (アロイス視点)

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輝く杖に動揺しているのは俺も同じなんだよな~何これ、どうなってんの?

とりあえず水魔法を少し杖に注いでみると力が倍になって、輝く水がてっぺんの石から吹き出し辺りに拡散された。

周りにいた奴らが蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げ出す姿に申し訳なくなる。

魔力の減り具合も少ないし、こいつが力を増幅してくれてんのか。

俺はニヤッとしてから大人しく待っている奴に杖を向けた。

「覚悟はいいか?」

見えない分、耳は一際いいらしく即座にコクっとうなずく。横からリーダーが立ち上がり呆れたように尻尾を揺らしながら俺の足元に移動する。

「主よ、やはり悪役がお似合いだぞ。」

「いいよ、俺は悪役令嬢でもあるんだから。」

言い放ってから魔法を発動させる。
すぐに石が輝き始める。

治療というよりは歪みを解いて元の姿に戻すだけだ。

本人?はもとより魔法の反発もあまり感じない。

おまけに力が増幅されるおかげでかかる時間も半分以上短くて済んだ。

かなり激しい光が収まり始め徐々に姿が見えてくると背筋をスッと伸ばして綺麗に座っているサバニアタイガーの姿があった。毛皮はツヤツヤと滑らかに輝き閉じていた目が恐る恐る開かれる。
透き通った真っ赤なルビーのような瞳だ。

何度か瞬きを繰り返し、辺りを見回した後、俺たちに向かって頭を下げる。

(心から感謝いたします。賢者アロイス様。従者リーダー様。)

女性の綺麗な声が聞こえてきた。

(もう2度と世界を見ることは叶わないと諦めておりました。)

真っ赤な瞳から一粒の涙がこぼれ落ち、それを振り払うように頭を左右に揺らす。

遠巻きにしていた仲間たちも近づいてきて驚いた表情で彼女を見てから期待するような眼差しで俺の側に押し寄せてきた。

リーダーがすかさずピシッと尻尾で地面を叩くとみんな飛びのくようにして一列になる。
リーダーは先頭の奴の背中に飛び乗り順番を入れ替え始めた。その間に俺は嬉しそうにあちこちキョロキョロ眺めているサバニアタイガーに近づく。

(ちょっと聞きたいんだけど、何で俺のこと賢者って呼ぶの?)

すると彼女は不思議そうに首をかしげる。

(賢者の称号をお持ちですから)

(賢者の称号?何それ、どこに?)

俺はキョロキョロと自分の身体を見下ろす。

(私達の種族には分かります。香り、まとっていらっしゃる光、魔力の中からも感じとることができます。何より精霊王と聖獣に認められた証がそちらに)

彼女の視線が俺の頭上に注がれる。

(え?そうなの?本人には何の実感もないけど?)

俺は頭の辺りで手を振ってみるけどやはり何も感じられない。

「何を騒いでいるのだ主よ。」

整列させ終わったリーダーがトコトコと俺の足元に近づいてきた。その後ろにはズラッと綺麗に整列してみんなが待ち構えている。

「リーダー。俺が賢者だって知ってた?」

勢いこんで尋ねる俺にリーダーは呆れた顔をする。

「何を今更。我が普通の人間にこんな危うい空間で魔力を使わせると思うか?
だいたいそなたは出会った時から賢者であったではないか。」

その言葉を聞いて俺は目を見開いた。

「え?ウソだろ?いったいいつ賢者になったんだろ?普通命がけの戦いとかに打ち勝ってパンパカパーンとかなってなれるもんじゃないの?」

「パンパカパーンとやらが何かは分からぬが賢者に認められるものはごくわずか。
知識はもちろん力を持ち、邪な気持ちを持たず人を導く力を持つもの。そして何より精霊王と聖獣が認めた者に限られる。
主はその条件を満たしたということだ。
まぁ多少の粗さは若さで多めに見られたのかもしれないがな。」

「えっ!多めにってそんなに急いで俺を賢者に認めて後で取り消しとか言われても困るんだけど。」

リーダーが冷たい目で俺を見る。

「精霊王と聖獣に認められたということは神が認められたということ。
その決め事を簡単に覆すようなことがあるわけなかろう?

全く。

おかしな事を言っていないで彼らにその有り余る力をふるってくれ。」


全く釈然としないけどニリーナ様に聞くしかないかな。
とにかく自分が今できることに集中するか。

俺は袖をまくって杖を振り上げた。
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