206 / 246
第三章 魔法学園
ついに決戦目前!のはずです…
しおりを挟む空色のドレスの襟元に白と薄いピンクのバラを飾ったリノアことのんちゃんとグリーンのドレスに金細工のアクセサリーを着けた私が並んでいる姿はなんだか互いの色を合わせたみたいで…
何だか婚約者同士がするペアコーデになってない?
「ねぇのんちゃん、何だか私たちの色がさ…」
「もちろんわざとだから。」
にっこり微笑まれてしまう。
「これも計画のうちだから大丈夫。」
そう言われてしまったら納得するしかない。
「さぁ行こう!」
素早く私と腕を組み意気揚々と部屋を出るのんちゃんに引きずられるように連れ出された私をアイリーンが心配そうに見送ってくれる。
普段だったら目立ってしまいそうだけど今日はみんな自分の準備や卒業式前の慌ただしい空気に包まれていてこちらに気を取られている暇もなさそうだ。
てっきり式が行われる講堂へ向かうのかと思ったら迎賓館の前まで連れてこられた。
待ち構えていたように扉が開き王宮から派遣された迎賓館付きのメイドさんがにこやかに中へ案内してくれる。
日当たりのいいサロンの真っ白な机の前でルルが優雅に座ってグラスを傾けていた。少し離れた場所に護衛のリタさんも立っていて私たちに軽く頭を下げてくれた。
ルルの装いは大人っぽくて綺麗だ。
クリーム色にキラキラと金の刺繍が細かく散りばめられた袖なしのスレンダーなドレスからすらりと伸びた手足が美しく、長い黒髪はスッキリとまとめ上げられて同色のリボンをヘアバンドのようにクルリと結んである。
近づいてみるとリボンには若草色の小さな宝石が控えめに散らされていて光を受けてキラキラ輝いている。
「わぁぁ、ルルすごく綺麗だよ。」
挨拶もそこそこに思わず声が出てしまった。
「ありがとう。マリーとリノアも綺麗。二人の色がとても似合ってる。」
小さく微笑まれて思わず見惚れていたらのんちゃんに後ろから突かれた。
「俺はまだちょっと準備があるからルルとリタさんと一緒にいて。
いい?何があっても離れないでよ。
後、ちょっとホープに話があるから出てきてもらえるかな?」
うなずいてホープに声をかけるけどなかなか返事がなく、ようやく出てきたと思ったら途端に大きくあくびをしている。
(どうしたのホープ大丈夫?)
プルプルっと身体を振ったホープの元に静かにリーダーが近づいてきてホープの周りを一回りしてから私を見上げてニヤッと笑った。
「どうやら今日が楽しみすぎて昨日一昨日と眠れなかったらしい。
こやつはまだまだ子供だからな。しばらくすればいつもの元気を取り戻すだろう。」
リーダーの言葉になぁんだ、良かったと笑っていたらのんちゃんが困った顔でホープを手招き何か念話で話し始めた。
(もう、今日の役目は大切なお願いだからって言っておいただろう?)
(分かってる!ホープやる気まんまん。任せて!ふわぁ~ぁぁ。
出番までもうちょっとだけ寝て元気出す。)
(今日はマリーの魔力を食べるのは無しね。代わりにこれをあげるから。)
ホープはのんちゃんから何か皮袋のようなものを受け取り口にくわえた。
「のんちゃんそれなに?
もしかして、今日起きるはずの事件に関わる重要なもの?」
聞いちゃいけないのかもしれないけど気になって聞いてしまった。
「え?いや?ただのホープ用のおやつだよ。今日はマリーの魔力をなるべく減らしたくないからね。」
のんちゃんの答えに私は脱力した。
ホープは眠そうに袋をくわえたまま私の中に戻り、私は苦笑しているルルにうながされて椅子に座りヒラヒラ手を振って出て行くのんちゃんを見送った。
少しの間離れるだけ。
分かっているのに不安がうずまいてくる。
「マリーも飲む?母の故郷でしかとれないフルーツジュース。」
「やったー飲んでみたい。」
もやもやした気持ちはルルの一言であっという間に離散してしまった。
私って…単純だなぁ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
106
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる