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4限目
淳くん
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どんな顔して会えばいいのだろう。
昨日あんな事があったのに、今日も顔を合わせなければならない部活が少しだけ憎い。早く大人になりたい、とまで思ってしまう自分の子供ってぽさにも嫌気がさす。
そうこうしている間に練習着姿の部員達が続々とグラウンドに集まる。
「おつかれ!」
淳くんだ。
いつもと変わらない練習着姿と挨拶に拍子抜けした。そもそも練習が終わった後と始まる前の挨拶が同じというのはおかしくないか。練習が始まる前の挨拶には”今日も1日授業おつかれさま”という別の意味合いがあるのか、そんなどうでもいいことに頭を巡らせていると監督から集合の掛け声が聞こえた。
今日はいつもより疲れた気がする。
ただ今すぐ帰りたいと駐輪場に進もうとしたが、淳くんがいるのではないかという思いが頭をよぎると足が言うことを聞かない。
「はぁ…」
「そんな溜め息ついたら幸せ逃げるよー?ほら、ポテトでも食べて!」
結局、明を誘って駅のファストフード店に寄ることにした。
「だってなんか今日すごい疲れたんだもん。」
「まぁ疲れるよね。でも和と香も初めの頃に比べたら、ね?」
そうだね、と笑い合う。
私たちが出会ったのは高校だが、共に厳しい環境を生き抜いた仲間として信頼し合っている。その時、明のスマートフォンが鳴った。
「なに、また翔くん?」
「うん。定期的に連絡くるんだよね」
「翔くん、明が彼氏出来たこと知ってるの?」
「うん、噂で聞いたらしい。なんかすごい悔しがってた。」
翔(しょう)くんは同じサッカー部で、実力は部で1番の選手だ。私たちの代に変わる前から先輩の試合にも出場したりしていた。その力は今も健在で、キャプテンは淳くんだが、エースストライカーとしてチームを引っ張ってくれている。そして、入部した頃からずっと明に思いを寄せている。
「よく諦めないというか、本当に明のこと好きだよね」
「うーん…まぁありがたいけどマネージャーだし。」
部員とマネージャーじゃなかったら付き合うの?そんな疑問が浮かんだが、さすがに言葉にはしなかった。
「あ、翔くんと淳くんもここに来るって」
「え?!なんで!」
「なんでって、普通にそういう話になったみたい」
「えぇ…もう帰ろ!」
そう言った時にはすでに遅かった。数メートル先にこちらへ向かう淳くんと翔くんの姿が見えた。
「明ちゃん、こま、おつかれー!」
「おつかれー」
明に会えて上機嫌な翔くんと、少し疲れた様子の淳くんが私たちに気付いて話しかける。
「おつかれ。今駅着いたの?」
「そー、もう俺疲れたから明ちゃん癒やして!」
「なにそれー」
楽しそうに話す2人を横目に、私と淳くんは黙ったままだった。
「じゃあ俺ら買いに行ってくるわ」
「うん、またねー」
翔くんと淳くんが去ると、私と明は席を立った。
明はもう一駅先が最寄りなので駅で別れた。
今日はとことん疲れた。駐輪場へ向かう道を歩いていると、先ほどの疑問が頭の中で繰り返された。
“部員とマネージャーじゃなかったら付き合うの?”
昨日あんな事があったのに、今日も顔を合わせなければならない部活が少しだけ憎い。早く大人になりたい、とまで思ってしまう自分の子供ってぽさにも嫌気がさす。
そうこうしている間に練習着姿の部員達が続々とグラウンドに集まる。
「おつかれ!」
淳くんだ。
いつもと変わらない練習着姿と挨拶に拍子抜けした。そもそも練習が終わった後と始まる前の挨拶が同じというのはおかしくないか。練習が始まる前の挨拶には”今日も1日授業おつかれさま”という別の意味合いがあるのか、そんなどうでもいいことに頭を巡らせていると監督から集合の掛け声が聞こえた。
今日はいつもより疲れた気がする。
ただ今すぐ帰りたいと駐輪場に進もうとしたが、淳くんがいるのではないかという思いが頭をよぎると足が言うことを聞かない。
「はぁ…」
「そんな溜め息ついたら幸せ逃げるよー?ほら、ポテトでも食べて!」
結局、明を誘って駅のファストフード店に寄ることにした。
「だってなんか今日すごい疲れたんだもん。」
「まぁ疲れるよね。でも和と香も初めの頃に比べたら、ね?」
そうだね、と笑い合う。
私たちが出会ったのは高校だが、共に厳しい環境を生き抜いた仲間として信頼し合っている。その時、明のスマートフォンが鳴った。
「なに、また翔くん?」
「うん。定期的に連絡くるんだよね」
「翔くん、明が彼氏出来たこと知ってるの?」
「うん、噂で聞いたらしい。なんかすごい悔しがってた。」
翔(しょう)くんは同じサッカー部で、実力は部で1番の選手だ。私たちの代に変わる前から先輩の試合にも出場したりしていた。その力は今も健在で、キャプテンは淳くんだが、エースストライカーとしてチームを引っ張ってくれている。そして、入部した頃からずっと明に思いを寄せている。
「よく諦めないというか、本当に明のこと好きだよね」
「うーん…まぁありがたいけどマネージャーだし。」
部員とマネージャーじゃなかったら付き合うの?そんな疑問が浮かんだが、さすがに言葉にはしなかった。
「あ、翔くんと淳くんもここに来るって」
「え?!なんで!」
「なんでって、普通にそういう話になったみたい」
「えぇ…もう帰ろ!」
そう言った時にはすでに遅かった。数メートル先にこちらへ向かう淳くんと翔くんの姿が見えた。
「明ちゃん、こま、おつかれー!」
「おつかれー」
明に会えて上機嫌な翔くんと、少し疲れた様子の淳くんが私たちに気付いて話しかける。
「おつかれ。今駅着いたの?」
「そー、もう俺疲れたから明ちゃん癒やして!」
「なにそれー」
楽しそうに話す2人を横目に、私と淳くんは黙ったままだった。
「じゃあ俺ら買いに行ってくるわ」
「うん、またねー」
翔くんと淳くんが去ると、私と明は席を立った。
明はもう一駅先が最寄りなので駅で別れた。
今日はとことん疲れた。駐輪場へ向かう道を歩いていると、先ほどの疑問が頭の中で繰り返された。
“部員とマネージャーじゃなかったら付き合うの?”
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