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新しい目覚め

新しい朝②

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見上げれば、そこには予想通りの美しい顔があった。黄金色の髪が、雨垂あまだれのように優しくエメラルデラの頬を打つ。

「俺が抱き上げていこうか、エメラルデラ」

「いや、遠慮えんりょしておくよ」

尋ね掛けてから行動に移そうとするだけ、成長したと言えるのかもしれない。表情には出ていないが、わずかに下る肩が気落ちしていることを伝えてくる。
動物的な感情表現に、随分と美しい生き物がいるようだと思うと、エメラルデラは手を差し伸ばし、オラトリオの頬をなだめるように優しく叩いた。
それは、いつもオダライアをたしなめたり、落ち着かせる時に行う仕草であった。
無意識の行動に、深い意味はない。

ただ、不意打ちで伝えられた体温は、オラトリオにとっては強い毒であるというだけのことだ。

エメラルデラは視線をピカイアに差し戻すと、気になっていたことを問い掛ける。

「ピカイア、シエスとヘルメティアはどこにいる?」

「あっ…、ええと、お二人とも狩りに出掛けておられましたが、戻ってきています。エメラルデラ様とオラトリオ様が起きたら、お連れするようにとの話でした」

エメラルデラの問い掛けに、遅れて反応するピカイアはわずかに視線をそらした。

───頬は薄紅、唇は薔薇色、けた金色の瞳は艶めいてそぼれている───

そんな、傾国の美女さえ裸足で逃げ出しそうなオラトリオの表情には、危うげな色気が滲み出ていた。

気恥ずかしくなるような…見てはいけないものを目にしてしまったような気分にピカイアは視線を彷徨さまよわせる。
しかし、どんなに理由があろうとも、エメラルデラからすれば、急にピカイアが落ち着きを失くしたようにしか見えなかった。

エメラルデラはオラトリオの頬に当てた掌を離すと、膝をわずかに折ってピカイアのつぶらな瞳を覗き込んだ。

「大丈夫か?ピカイア」

「はい、もう大丈夫です!すぐにご案内いたしますね」

記憶を振り払うように勢いよく頷き、明るい声で返事を返すピカイアが、二人を案内すべく背を向けて空を滑り出す。

先に踏み出したエメラルデラは、しばらくして後を着いてくる足音がないことに気が付いた。
肩越しに振り返ると、こちらを真っ直ぐに見詰めるオラトリオの視線に行き当たる。

「オラトリオ、行くよ」

「────…ああ」

まばゆ陽射ひざしにさえぎられ、エメラルデラはオラトリオの表情を捉えることができなかった。しかし、彼の応える声は何よりも優しく、鼓膜を撫でる。

踏み出すオラトリオにエメラルデラが微笑ほほえむと、二人はこちらを振り返って手を振って示すピカイアの後を追っていくのだった。
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