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聞かせる前とは打って変わって静かな講堂内。
文句は止んだ、ということは、一般の生徒は気付いた、または何か感じたのだろう。
「以上が、皆さんが忠告と呼んでいるものをボクが転入生にしに行ったときの内容です。」
そう言い講堂を見渡したとき、こちらを熱心に見つめている一人の生徒と目が合った。
アレは、転入生のお友達だ。
その顔には、悔やんでいるような、悲しんでいるような、何とも言えない色が滲んでいた。
彼の中で転入生は、まだ大切な友達なんだろうか。
「このとき、ボクはある意味感動しました。彼以上に生徒会の人たちのことを考えている人間がいるのだろうか、と。」
ボクはお友達から視線をそらすと今度は皆に訴えかけるように、ゆっくりと話した。
「そこで、ボクは決めました。」
残念ながら、ボクからは背になってしまっている生徒会の奴らの顔が見えない。
ニヤニヤと浮かべていたいやらしい笑みは消えているのだろうか。
ボクは、笑みを抑えるのに苦労しているというのに。
「彼を、次の親衛隊隊長に任命する。」
ボクの声の反響が静かな講堂内を余計静かに感じさせる。
皆が呆然とする中、少し間を置いてからボクはまた声を出す。
「では、これから引継ぎを…」
「ふざけるな!!!」
転入生が怒りを顕にし叫ぶ。
「何で俺がお前等みたいなバカのボスなんかやんなきゃなんないんだ!!!」
「ボクが任命したからだ。」
「そんなふざけた話が…!」
「これは当校創立時より存在する伝統ある親衛隊の隊長任命式だ!!!誰であろうとも異論は認めん!!!」
気迫に押されたのか、一瞬静かになった転入生だったが、またギャーギャーと文句を言い出した。
「お前は、誰を敵に回したのか解ってるのか?」
地を這うような声が聞こえた。
会長の声だ。
これを言ってくれたのが会長でよかった。
「会長様、あまりお家の方を悲しませないであげてください。」
「なに…!?」
「昨日ご自分がボク達に言った言葉、覚えていらっしゃいますか?あの、どんな理由があっても人を殴っていい理由にはならない、と言う内容の。」
「それがどうした。」
「じゃあボクを殴りこんな顔にしたのは誰です?」
「ッ…!」
ボクの腫れ上がり大きなガーゼで覆われている左頬を指差しながら呆れた口調で言うと、会長が言葉に詰まる。
悔やむ顔が、まるで手にとるようにわかるような狼狽え振りだ。
「昨日病院に行って、今朝診断書を片手にお父上にお会いしてきました。急なアポでも取り次いでくださって、お優しい方ですね。貴方のような万年次席の愚息でも、大事だそうですよ。貴方の代わりに地に手を着いて謝って下さいました。治療費と慰謝料も払うと一筆いただきました。」
ブレザーの内ポケットから封筒を取出し、後ろにいる奴らにもわかるようにヒラヒラと見せびらかす。
そしてある程度見せてからすぐにしまった。
「これ以上、みっともない真似はしない方が得策かと。ご自分たちでもこれが如何に虚しい行為か薄々気付いているでしょう?生徒の中にも気付いている人もいると思いますよ。」
「…クソッ!!!」
これだけ言っておけば、もう生徒会はこの件に関して口は出してこないだろう。
「さて、邪魔は片付いた。隊長の任命式を引き続き…」
「邪魔ってどういうことだよ!お前、仮にもコイツ等の親衛隊なんだろ!!」
自分が気に掛けている人間を馬鹿にされたからか、転入生が席から離れボクに掴み掛かってきた。
全校生徒の前で暴力、か。
どこまでも周りの見えていない奴。
文句は止んだ、ということは、一般の生徒は気付いた、または何か感じたのだろう。
「以上が、皆さんが忠告と呼んでいるものをボクが転入生にしに行ったときの内容です。」
そう言い講堂を見渡したとき、こちらを熱心に見つめている一人の生徒と目が合った。
アレは、転入生のお友達だ。
その顔には、悔やんでいるような、悲しんでいるような、何とも言えない色が滲んでいた。
彼の中で転入生は、まだ大切な友達なんだろうか。
「このとき、ボクはある意味感動しました。彼以上に生徒会の人たちのことを考えている人間がいるのだろうか、と。」
ボクはお友達から視線をそらすと今度は皆に訴えかけるように、ゆっくりと話した。
「そこで、ボクは決めました。」
残念ながら、ボクからは背になってしまっている生徒会の奴らの顔が見えない。
ニヤニヤと浮かべていたいやらしい笑みは消えているのだろうか。
ボクは、笑みを抑えるのに苦労しているというのに。
「彼を、次の親衛隊隊長に任命する。」
ボクの声の反響が静かな講堂内を余計静かに感じさせる。
皆が呆然とする中、少し間を置いてからボクはまた声を出す。
「では、これから引継ぎを…」
「ふざけるな!!!」
転入生が怒りを顕にし叫ぶ。
「何で俺がお前等みたいなバカのボスなんかやんなきゃなんないんだ!!!」
「ボクが任命したからだ。」
「そんなふざけた話が…!」
「これは当校創立時より存在する伝統ある親衛隊の隊長任命式だ!!!誰であろうとも異論は認めん!!!」
気迫に押されたのか、一瞬静かになった転入生だったが、またギャーギャーと文句を言い出した。
「お前は、誰を敵に回したのか解ってるのか?」
地を這うような声が聞こえた。
会長の声だ。
これを言ってくれたのが会長でよかった。
「会長様、あまりお家の方を悲しませないであげてください。」
「なに…!?」
「昨日ご自分がボク達に言った言葉、覚えていらっしゃいますか?あの、どんな理由があっても人を殴っていい理由にはならない、と言う内容の。」
「それがどうした。」
「じゃあボクを殴りこんな顔にしたのは誰です?」
「ッ…!」
ボクの腫れ上がり大きなガーゼで覆われている左頬を指差しながら呆れた口調で言うと、会長が言葉に詰まる。
悔やむ顔が、まるで手にとるようにわかるような狼狽え振りだ。
「昨日病院に行って、今朝診断書を片手にお父上にお会いしてきました。急なアポでも取り次いでくださって、お優しい方ですね。貴方のような万年次席の愚息でも、大事だそうですよ。貴方の代わりに地に手を着いて謝って下さいました。治療費と慰謝料も払うと一筆いただきました。」
ブレザーの内ポケットから封筒を取出し、後ろにいる奴らにもわかるようにヒラヒラと見せびらかす。
そしてある程度見せてからすぐにしまった。
「これ以上、みっともない真似はしない方が得策かと。ご自分たちでもこれが如何に虚しい行為か薄々気付いているでしょう?生徒の中にも気付いている人もいると思いますよ。」
「…クソッ!!!」
これだけ言っておけば、もう生徒会はこの件に関して口は出してこないだろう。
「さて、邪魔は片付いた。隊長の任命式を引き続き…」
「邪魔ってどういうことだよ!お前、仮にもコイツ等の親衛隊なんだろ!!」
自分が気に掛けている人間を馬鹿にされたからか、転入生が席から離れボクに掴み掛かってきた。
全校生徒の前で暴力、か。
どこまでも周りの見えていない奴。
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