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アンドレを連れ戻せ! 編
67 竜人と出会う
しおりを挟む「エデンさん! あれが竜の国です!」
ルカの声に私は頷く。
ルゲル村から約三日の道のりでようやく私は竜の国へと辿り着いた。
本当は一週間はかかっても可笑しくない道のりらしいのだけれどルカが頑張ってくれたおかげでここまで早く付けたのだ。
だからルカには感謝しなければいけない。
「取り敢えず目立たない場所に降りましょう」
「はい!」
私とルカは竜の国の前にある鬱蒼とした森へと降りた。
私は早速ルカを人間の姿に変える。
ドラゴンの姿だと目立ちすぎるからだ。
「ルカ、ありがとう。それとお疲れ様。体は平気?」
「はい! アンドレさんを助ける為に私も頑張りたいです!」
拳をギュッと握りしめガッツポーズをするルカを見て、私は小さく頷く。
でも……
「入れられない!? どうして!?」
「理由は簡単だ。人間が嫌いだからだ」
「私は弟子に会いに来ただけよ。それでも駄目なの?」
竜の国へと繋がる門の前に立つ門番は私の言葉を聞くなりこう言った。
「馬鹿な人間め! 竜人が人間如きの弟子になるか! そんなの恥に決まっているだろう! さっさと帰れ!」
そう言われ、私とルカは追い返されてしまった。
*******
「追い返されちゃったわねー」
「エデンさん。どうしますか?」
心配そうに私の顔を覗き込むルカ。
人間と竜人が仲が悪いことは知っていた。
でもまさか竜の国へと入れないとは思っていなかった。
どうやら竜人はドラゴン以外とは関係をつくらないらしい。
竜騎士になる為の試験で人間を捕まえるって言ってたからひょっとしたら国には入れるかもと期待していたんだが外れだったみたい。
「あの、エデンさん。声が聞こえます。多分竜人の」
「ほんと? 話せば分かってくれるかな?」
「話を出来る感じじゃなさそうです……だって」
ルカが何かを言いかけた時だった。
騒がしいぐらいの音が響き、それがどんどんこちらへと近づいてきていた。多分これは足音。しかもかなり大きめのモンスターのだ。
すると
「だ、誰か助けて!!」
女の人の声が聞こえた。
よーく見てみると女の人がこちらへと物凄い勢いで走ってきているのが見えた。そしてそんな女の人の後ろには巨大なモンスターの姿。
私はルカに下がっているよう伝える。
大きく深呼吸をして
「風よ! モンスターを薙ぎ払え!」
私は風魔法を使った。
風は次第に竜巻の様になり、大型モンスターを包み込む。
その竜巻に木々がざわめく。
数分後。竜巻がやみ、戦闘不能状態になった大型モンスターがそこには居た。
「あの、大丈夫ですか? そのお怪我してませんか?」
私がそう尋ねれば女の人がか細く笑った。
「あぁ。心配無用だ。ありがとう」
「それなら良かった」
見た所元気そうだ。
「あ、貴方達、もしかして人間!?」
女の人は急に飛び上がった。
そしてまるで威嚇するように私達を睨み付けた。
そんな女の人を見るなりルカが言った。
「エデンさん! この方、竜人ですよ!」
「そうなの?」
そうは言われても人間とほぼ見た目は変わらない。
私が首を傾げているとルカが得意げに胸を張った。
「竜人から放たれる香り。それはとても独特なので直ぐに分かるんです!」
「な、なるほど。私には全く分からないけど……」
「ドラゴンは鼻がいいんです!」
そう言えば犬並みの嗅覚を持つと本には書いてあった気がする。
「お主達は悪い人間ではないようだな」
そう言うと、ニコリと微笑まれた。
夜空みたいな髪色に、桃色の瞳。
スラリとした体型で、大人な雰囲気がある。
それに口調が中性的な竜人だ。
「私は第一上級竜騎士、エルゼだ」
「エデンと言います」
「ルカです!」
「うむ。エデンとルカだな。覚えたぞ。にしても……何故人間のお主らがここに居る? 竜人は殆どが人間嫌いだ。知人にでも会いに来たのか?」
「いえ、弟子を連れ戻しに来たんです」
そう私が言えばエルゼさんは目を見開いた。
そして
「もしかして……アンドレという名の竜人の子か?」
私とルカは顔を見合わせた。
どうやらエルゼさんはアンくんのことを知ってるみたい。
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