烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

文字の大きさ
70 / 78
アンドレを連れ戻せ! 編

68 今度こそ竜の国へ

しおりを挟む

 エルゼさん曰くアンくんのお家は名の知れた竜騎士一家らしい。
 先程エルゼさんの言っていた第一上級竜騎士。
 これは竜騎士のランクらしく、上から『一級最上竜騎士』それに引き続き『第一上級竜騎士』と続き、合計六つのランクがあるらしい。
 アンくんのお父さん、お母さんは数少ない最高ランクの方らしい。そしてアンくんにはお兄さんが居るらしい。エルゼさんの同期らしく、第一上級竜騎士であり『漆黒の騎士』という二つ名も持っているとか。

 「よし……エデンのその弟子思いな心に私は感動した。さぁ、竜の国へ行こう。案内しよう」

 「は、入っていいんですか?」

 戸惑う私にエルゼさんは微笑んだ。

 「あぁ。私の友人と言えば簡単に入れるさ。だが人間だと少し厄介でな。これを被ってくれ」

 渡されたのは皮でできたローブだった。

 「竜人の匂いが染み付いている。そう簡単には人間だとはバレない筈だ」

 私はローブを受け取り早速羽織る。
 確かに何か鼻にツンと匂いはしたが気にしない事にした。

 ルカは元々ドラゴンなので入国出来るらしい。

 こうして私とルカはエルゼさんの協力の元竜の国へと入国した。



 ********



 「ここが竜の国! 凄く大きいんですね」

 「まぁな。人間の国には劣らないと私も思っている」

 エルゼさんの言う通り街並みは人間の暮らす住宅などとはあまり変わらないし、何より皆笑っている。とても幸せそうに暮らしているように見えた。
 私はルカの手を引きながらエルゼさんの後に続く。
 歩いている途中何度もエルゼさんは声を掛けられては立ち止まり笑顔を向けていた。エルゼさんはどうやら有名な竜騎士らしく子供達から大人の竜人の憧れの存在らしい。

 ルカが分かりやすいほどに興奮している。
 どうやら久々の竜の国に嬉しさを隠しきれていないみたい。

 「エルゼさん。それで今から何処へ?」

 「案ずるな。ちゃんとお前達を愛弟子の元へ連れて行く」

 エルゼさんはそう言うと再び歩き出した。
 今の私に出来ることはエルゼさんを信じて着いていくことだけだ。


 一方その頃、私が知らない場所でアンくんは大変な事になっていた。





 「アンドレ! 無事だったのね!」

 泣きじゃくりながら俺へと飛びついてきたのは母親だった。
 兄貴に連行されるなり家へと連れてこられた俺は現在に至る。
 いつもは厳しくて怖い母さんが泣いて俺を抱きしめている。
 一体どんな心境の変化なのだろうか。俺は不安で仕方が無い。
 ガタガタ震える俺にお構い無しにこの母親は俺を力強く抱きしめてくる。

 「アンドレが苦しがっているだろ!」

 そんな時父親の声がし、俺は心底助かったと思った。
 母親には自分の馬鹿力を理解して欲しいものである。

 やっと開放された俺は小さく息を吐く。
 今のでどっと体力を持っていかれた。

 「……久しいなアンドレ。元気にしていたか?」

 「まぁ……一応は。それと本当なんですか? 俺が竜騎士の試験に合格したというのは

 恐る恐る尋ねる俺に父さんは頷いた。

 「不合格だと私達も思いきっていた。しかし審査員によると人間の形をした化け物の妨害が入ったと聞いた。試験妨害もあり不合格は取り消されたんだ。アンドレ。お前は今日から下級竜騎士だ」

 父さんはそう言うと俺に竜騎士である事を証明するブローチを差し出した。そのブローチは今まで俺が目指してきたもの全てが詰まったものだ。受け取ったら俺は今日から下級竜騎士として職務に就かなければならない。竜騎士の両親と兄を持つ俺にとって竜騎士とは必ず叶えなければならない壁だった。

 だけど……今は違う。


 「それは受け取れません」

 「何を言ってるの、アンドレ!?」

 「母さんに同意だ。アンドレ、お前本気か?」

 母さんと兄貴が俺にそう尋ねてきた。
 父さんは黙り込んだままである。

 「はい。俺には戻らないといけない場所があるんです」

 「馬鹿なことを言うな。お前の住む世界は竜の国以外の何処にある」

 「俺もそう思ってました。けど……今は村の皆がルカがそしてお師匠が居る。人間は竜人が思っていたのとは違う! 優しい人間だっているんだ! 俺はお師匠の元でこれから沢山の事を学びたいんだ!」

 い、言ってしまった……。

 俺は拳を握り締めた。
 体が震えているのが分かる。
 なにせ俺は家族を裏切ったのだ。

 「…………分かった。ならば勝負しようかアンドレ」

 「勝負、ですか……?」

 突然の父さんの言葉に俺は唖然とする。

 「あぁ。真剣勝負をしよう。ルールはどちらかが降参するまで行う。先に降参させた方が勝ちとなる」

 「俺と父さんでですか?」

 「他に誰が居る」

 今まで父さんとは稽古で剣を交えた事はあった。けど、実戦は無いし、何より父さんは一級最上竜騎士だ。俺に適う相手では無いことぐらい分かっている。でも、戦わないと何も始まらない。俺はお師匠の元で沢山のことを学んだ。今、それを活かすときがきたんだ。

 「……その勝負、承ります。もし父さんが勝ったら俺は竜騎士としてここに残ります。けどもし俺が勝ったら好き勝手に生きます」

 「あぁ。構わん」

 こんな偉そうなこと言っといて何だけど正直なところ勝てる自信はほとんど無い。けど、ほんの少しだけだけど勝てそうな気もする。だって俺はあの全ステータス1000の最強の師匠の一番弟子なのだから。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました

佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。 ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。 それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。 義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。 指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。 どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。 異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。 かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。 (※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

処理中です...