12 / 24
結婚式まであと7日③
しおりを挟むルカがチラリとイレーナを見つめる。
その視線に頷けば、ルカが扉を開けた。
そうすれば、美しい銀色の髪をした麗しい女性が扉の前には居た。
女性は青いドレスを翻し、優雅にニコリと微笑みを向けた。
「お疲れのところ、突然ごめんなさいね」
「いえ。この度は結婚式にお呼び頂き誠にありがとうございます。エリ様」
イレーナがソファーから立ち上がりそう挨拶をすればエリは再び微笑んだ。
「今少しお時間いいかしら?」
「はい、構いませんよ」
承諾すればエリはイレーナと向かい合うようにソファーへと腰を下ろした。
「ルカ。お茶の支度をお願いできるかしら?」
「かしこまりました」
ルカは頭を下げるとお茶の支度をしに部屋を後にした。
そうなれば、部屋はイレーナとエリのみ。
こうして2人きりで話すのは初めてで、妙な緊張感が部屋に走る。
「こうしてお話するのは何度目かしら?」
「そう、ですね…。1度学祭の実行委員でその打ち合わせをした時以来でしょうか」
「そう考えるとかなり前になるわね。本当は貴方とセシルの婚約が破棄された時に挨拶に向かうつもりだったのだけど…」
目をゆっくりと細め、白い頬に手を添えるエリ。
「挨拶に向かった時にはもう貴方はお屋敷に居なかったわ。何でも体調不良で田舎へ療養に向かったって聞いたわ。それで体調の方はどうなの? もう大丈夫なの?」
体調不良なんて元々崩してなんかいない。
そう言ってやろうかと口を開いた……が、それを遮るかのように扉がノックされた。
「エリ様。そろそろお時間が…」
「あら?もうそんな時間なのね…。ごめんなさい、イレーナさん。これからパーティーがあるの。友人達が結婚祝いにって。また日を改めてさせて貰うわ」
この感じどこかであったような…。
なんてデジャブ感を感じていると、エリと目が合った。
エリはニッコリと笑うと言った。
「本当にごめんなさいね、イレーナさん。そうだわ。明日は私もセシルも特に用事は無いし、一緒に食事でもいかが? その時またゆっくり話しましょう。では、御機嫌よう」
何とも一方的な約束の取り付けだろうか…。
嵐のように現れ、そして去っていったエリにポカーンとイレーナは唖然とする。
断る権利など無い。
そう思わされる程の一方的な会話だった。
「…い、行きたくない」
そして零れた本音。
なぜ元婚約者(セシル)とその新たな婚約者(エリ)と食事などしなければいけないのだ。
拷問か何かか?
イレーナはゴロリとソファーに身を委ねる。
今から断れないだろうか。
いや、今からなら間に合うだろう。
そう思い、ソファーから立ち上がれば後方から声が聞こえてきた。
「残念。食事会の準備は既に執り行われてる。恐らく……無理矢理引きずってでもイレーナさんを招待する気だ」
そこにらお茶の支度を終えたらしいルカが居た。
紅茶の心地よい香りが部屋へ広がる。
「…そんな事をして何の意味があるの?」
震えた声でイレーナが尋ねれば、ルカは御盆の上からカップとティーカップを机の上へと並べた。
……お盆の上には元々1つのティーカップしか無かった。
86
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
あなたの言うことが、すべて正しかったです
Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」
名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。
絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。
そして、運命の五年後。
リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。
*小説家になろうでも投稿中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる