美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

第２章 愉快な仲間たち

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いつものように、ドアの前で大きく息を吸い込み吐き出し、トントンと軽くノックをする。

ドアの向こうから「入れ」と苛立ちの混じった声が聞こえた。待たせたからだろう。しかし、毎度のことなので恐れはない。

「失礼します」と部屋に入った途端、「何をしていた！」と飛んでくる憤怒の声。

「ランチタイムを取っておりました。ご用は何でしょうか？」
「何度言わせる！　私が呼んだら飛んでこい！」
「お言葉ですが、食事はしっかり取らないと……午後の仕事に差し支えます」

眼光キツク西園寺オーナーがギロリと私を睨んだ。

「お前、嫌なら辞めていいんだぞ」
「嫌だと申したわけではございません」

何度同じ会話をさせるつもりだ。

「でしたら、今後は食事時間外でお呼び下さい」
「馬鹿か、なぜ仕事中に呼び出さないといけない。仕事は仕事。しっかりやれ！」

だったら再々呼び出さないで欲しい。

「それで、何のご用でしょう？」

これ以上の会話は不毛だ。彼は絶対に折れない。あの件で私に謝ったことを一生の不覚と思っている人だ。

「ああ」と西園寺オーナーが口角を上げた。悪い顔だ。嫌な予感がする――と思ったと同時に放たれた言葉は、私の予想をはるかに超える言葉だった。

「明日の昼はお前が作れ」
「はぁぁぁ？」
「お前なぁ。仮にも雇い主である私に、何だその馬鹿にしたような返事は！」

漫画なら、彼のこめかみにピキピキとシャープマークが入っていただろう。