美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

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第3章 事件、事件、事件

01

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「食中毒!」

スタッフルームにいた全員が声の方を見る。飛び込んできたのは佐竹君だった。彼にいつものワイルドさはない。迷子のドーベルマンみたいに心許ない顔をしていた。

「食中毒とは?」

神乃マネージャーが冷静さを装い訊ねる。

「柚木が作った料理で腹痛を起こしたって」
「そう言っているの?」
「そう」

オープン前で良かったと神乃マネージャーが安堵の息を吐いた。

「ここにお通しして」

「ラジャー!」と言うが早いか佐竹君が飛び出していく。

「本当でしょうか?」

思わず訊ねると、神乃マネージャーは「シッ!」と唇に人差し指を立てた。

「疑ってかからない!」

そう言えば、と詐欺師の一件を思い出す。
あの時も神乃マネージャーは、ぞんざいな態度を一切取らなかった。最後まで私をお客様として接してくれた。

「確信を得るまでその人はクーラウのお客様なの。だから、失礼のないように」

――フロアースタッフの鏡だ……素敵すぎる。

「でも、食中毒なんて有り得ないんじゃない? 同じ物を食べた人は大勢いるのに、誰も何も言ってこないし……」

声を落としてマミさんが異議を申し立てるが、「それでもよ!」と神乃マネージャーはマミさんの言葉を制した。

「私の言うことが聞けないなら、今すぐこの部屋から出て行って」

たとえ相手が恋人でも、神乃マネージャーは公私混同しない。毅然としたその態度は尊敬に値する。

マミさんは「もう……」と不満そうに唇を突き出しながらも、「分かったわよ。大人しくしているからここにいさせて……心配なの」と真剣な眼差しで神乃マネージャーを見つめた。

きっとマミさんが心配しているのは柚木君のことじゃない。神乃マネージャーだ。
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