美食倶楽部クーラウ ~秘密は甘い罠~

米原湖子

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第5章 解雇

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「――あかほり美羽みう様だぁ」
翼未来つばさみらい君もいるわよ」
「今年は新人ながら大物ぞろいね」

マミさんたちが言っていたように、衣装は半端なく本格的だった。これらは公益財団法人西園寺文化財団の演劇部門の物だという。本格的なのも当然だ。

そして、その衣装と共に、劇団西園寺から若手の俳優や女優が着替えや化粧のヘルプとして来ていた。

テレビのCMで見たことのある顔だ。そんな人をヘルプ扱いって……富美乃様、恐ろしや!

「マミさんはティンカー・ベルでしたよね?」
「寧々……代わって!」
「はい?」

どういうことだろう? 昨日、私の役を散々こけ下ろしていたのに。

「知らなかったのよ! 本当に飛ぶって」

マミさんがフニャリと泣きそうな顔になる。そして、ポツリと「高所恐怖症なの」と言った。

なるほど。それは気の毒だ。だけど――。

「マミちゃん、可哀想だけど役の交代はできないよ」

脇から昨日と同じ台詞をすまなそうな顔で樫野チーフが言う――だと思った。

「あんのう! 悪魔なお嬢様め!」

途端にマミさんの顔面がマグマになる。

「絶対に許さない!」

ギリッと唇を噛むが、「じゃあ、反旗を振り返したら?」と樫野チーフが言うとシュルルと萎んでしまった。

「マミさん、どんまい」

だから元気付けようとしたけど睨まれてしまった。
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