美食倶楽部クーラウ ～秘密は甘い罠～

第５章 解雇

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「チーフ、ゲイバーでナンバーワン張れるでござる」

思わずという風に樫野チーフに見惚れていた新貝君が嬉々とさけんだ。その気持ち、分からなくもない。

「当然よ。私って元々が美人……」と言ったところで、樫野チーフの声が白戸さんによって遮られる。

「純也、何よ？　皆の顔が見えないじゃない」

そう、白戸さんが樫野チーフの前にはだかったのだ。

「あぁぁぁ！　もしかしたら、ヤキモチぃぃぃ」

この手の話が大好物のマミさんは、急に生き生きし出した。本当、この人って変わり身が早い。

「もう大丈夫なんですか？」
「怖いわよ。でも、白戸さんまで飛ぶんだったらやるしかないでしょう！」

若干切れ気味ではあるが、マミさんも腹を括ったようだ。

「そうよねっ、女は度胸よ。私も頑張る！」

マミさんの言った『ヤキモチ』が相当嬉しかったようだ。白戸さんの背中の向こうから樫野チーフの嬉しそうな声が聞こえた。

しかし、樫野チーフは女性ではない。それに、彼の役は髪長姫。だから、カツラの黒髪が床を引き摺るほど長いだけで宙は飛ばない。

自分の役が髪長姫と知った樫野チーフは『私にピッタリの役だわ』と言った。
その意味を知ったのは、帰宅してネットで調べてだ。

髪長姫はグリム童話に収録されているラプンツェルという作品だが、初版はかなりドギツイ大人の童話だった。その内容を知っていたから樫野チーフはああ言ったのだろう。

「それにしても……寧々ちゃんって」