灯火屋さん(ともしびやさん)

米原湖子

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街外れにひっそりとたたず蝋燭ろうそくのような蔵。
ここが『ロウソク専門店 灯火屋ともしびや』さんのお店です。

営業時間は午後九時から午前三時。
夜間に営む変わった店です。

でも、誰も文句は言いません。

引き戸を開けるとチリリーンと涼やかなベルが鳴り、店主に来客を知らせます。
そのおとに答えるように「いらっしゃいませ」と鈴ののような声が聞こえます。

声の主はこの店の店主。
星空の瞳を持つおかっぱ頭の少女です。

少女はいつも上がりかまち近くにある文机を前に、白猫を膝に置き座っていました。
そして……文机の上には装飾の施された美しい燭台しょくだいがひとつ。

燭台には蝋燭の火がほのかにともっていました。
蝋燭の長さは、その日、その時、違います。



白猫がしなやかに伸びをして、また、丸まります。
彼は艶やかで美しい身体を、少女以外、誰にも触らせません。

高貴な雰囲気漂う白猫は、興味を引く話しのみ目を開けます。
その瞳の輝きは、月の冷たさに少し似ています。

白猫がニャーとひと声発して目を開けると、なぜか蝋燭が消えました。
火が消えると少女は――。

……時に喜び
……時に怒り
……時に哀しみ
……時に楽しみ

――ます。

今日も蝋燭が灯りました。
お客様がいらっしゃったようです。
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