微笑み三回～萌葱色のマフラー～

微笑み一回

「なんて可愛いお客様なのかしら。はい、ごきげんよう。いらっしゃいませ」

おばあさんが目尻を下げ、笑みを浮かべました。

（微笑み一回）

白猫が目を細めます。

「さぁさぁ、早くお入りなさい。寒かったでしょう？」

おばあさんはそう言って白猫を中に誘います。

白猫は腰を上げると凍えた身体を解すように一回伸びをして、ゆっくり歩き出しました。

おばあさんは白猫が中に入るとドアを閉め、台所に飛んで行きました。

「確か……ミルクと煮干しがあったと思うけど……。白猫さん、暖炉の前で身体を乾かしてね」

おばあさんが言うまでもなく、白猫は暖炉の前でお座りをしていました。

「ごめんなさいね。こんな物しかなくて」

白猫の前におばあさんが小皿を二枚置きました。

「猫舌だからミルクは温めなくていいわよね？」

白猫はおばあさんの言葉を理解したように、「みゃー」と一声鳴き、さっそくぺちゃぺちゃとミルクを飲み始めました。

「美味しい？」
「みゃー」
「そう、よかった」

おばあさんが安堵の息を吐きます。

「私は編み物の続きをするけど、遠慮しないで、ゆっくりしていってね」
「みゃー」

白猫の返事を聞くと、おばあさんはまた椅子に腰を下ろして編み物を始めました。