元・社畜とオーク ~コピースキルで【異世界行商】始めました~

たいよう一花

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05-4. ステータス開示 4

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 やがてオークはステータス表示を「閲覧終了」と言って閉じると、立ち上がって言った。

「それで、ユキナよ。今後の身の振り方はゆっくり考えるとして、こんな粗末な小屋で良ければ、好きに使ってくれ。雑魚寝(ざこね)で申し訳ないが」

「え、泊めていただけるんですか⁈ ありがとうございます、助かります!」

(はあ、良かったぁ……)

 オークの徳の高さと驚異的な強さを知った今、彼の住処(すみか)ほど安全なところはないだろうと、ユキナは胸をなでおろした。

(このひとに会えなければ、俺は森の中で野宿……だったかもしれない)

 ユキナはゾッとした。どこかわからない異世界の森の中で野宿……それは間違いなく死亡フラグだ。

(異世界、か……。あの神様は俺のことを『地球では死亡認定されているし、余命をこちらで過ごしてもらうほかない』とか言ってたから、俺はもう二度と日本には戻れない……ということだよな……)

 まだあまり、現実味が湧かない。冗談みたいな夢を、見ている気分だった。

(まあ、恋人もいないし……親しい友人もいない。俺が死んでも、誰も……)

 たいして悲しまないだろう、とユキナは自嘲(じちょう)気味(ぎみ)な笑みを浮かべた。
 父親とは早くに死別してるし、唯一の肉親である母親は、ユキナが大学に入った年に再婚して、新しい家族と幸せに暮らしている。多少は悲しむだろうが、すぐに立ち直るだろう。ユキナの母親は、そういう性格だった。

(俺も母さんの性質を受け継いでたらなぁ……。もっと要領よく生きていけただろうに……)

 日本での日々を思い出したユキナは、陰鬱とした気分になってきた。
 パワハラ気味の上司に、性格の悪い同僚、無理な要求をしてくる取引先、休日出勤・サビ残当たり前、そして……。
 上手に社会を泳いでいくことができず、いつも溺れる寸前であっぷあっぷしてる、情けない自分自身。
 ユキナはできることなら、それらの全てと決別したかった。

(変化を望んだけど……まさかこんなことになるなんてな)

 つまらない人生に劇的な変化を期待して参加したクラス会。
 ある意味、まさに「劇的な変化」をげたわけだが――。

(これじゃないよなぁ……。うん、これじゃない感、満載だ。俺が期待したのは、もっとこう、ぱあっと霧が晴れたみたいな、このために生まれてきた、と思えるような……何か……生きがいと幸福感に満ちた……)

 そんな風に考えて、ユキナは心の中で自分をあざ笑った。

(……ないよな。こんな俺なんか……ちっぽけな幸せですら、贅沢品なのに……。取り立てて長所もないし、陰キャでコミュ障で、バカの付く正直者で世渡り下手。周りからさんざん利用されて、捨てられるだけの……)

 劣等感の沼にボチャンと落ちたユキナは、マイナス思考を振り払うように首を振った。

(やめよやめよ。考えるな。短所をあげつらうな。できないことを数えるな。乏しくても、自分にできることを精一杯する。それだけでいい)

 真面目に誠実に、周囲への配慮を忘れず生きる。商売だけでなく、我が人生にも「三方さんぽうよし」を。――ずっと胸に抱いてきたその信条を、ユキナはこの先も忘れないよう、改めて心に刻んだ。

 異世界での新生活をスタートしたこの日、ユキナは知らなかった。
 「劇的な変化」は、まだほんの序の口だったことを。
 この先の彼の人生が退屈とは無縁の、生きがいと幸福感に満ちた日々となることを。
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