13 / 15
06-2. オークの苦悶 2
しおりを挟む
オークはユキナの手を温めようと、その大きな手ですっぽり包んだ。
(うわぁ……あったか~い……。まるで手が、お風呂の中だぁ……)
ユキナはオークの体温の高さに少しばかり驚きながら、慌てて口を開く。
「ゆ、許してくれだなんて、そ、そんな、充分親切にしてもらってます。そんな謝ったりしないでください」
冷え切っていた手が心地よい熱に包まれ、じんわりと温まってゆく。ユキナはホッとして、心に思っていることをそのまま口にした。
「……この世界のオークさんって、とても優しいんですね」
ユキナから笑顔を向けられたオークは、ハッとしたように目を剥(む)き、途端に険(けわ)しい表情になる。
「……違う」
「え?」
「オークは、獰猛(どうもう)で、残虐(ざんぎゃく)な魔物だ。優しさなどかけらもない」
「……え……」
「いいか、ユキナ。もしこの先、俺以外のオークに遭遇(そうぐう)したら、話しかけたりしてはいけない。見つかる前に逃げろ」
「…………」
「よく聞け、ユキナ。オークは人間にとって、恐ろしい敵だ。話が通じる相手ではない。見かけたら全力で逃げろ。いいな」
「なんで……だって、オークさんは……」
「俺も、もとはそうだった。多くの命を奪った。いたぶって殺すことに喜びを感じ、何のためらいもなく屠(ほふ)った。愚かで残忍な生き物だった。俺は罪深い怪物だ……」
何かを思い出したのだろう、オークの涙が、止め処なく頬を滑り落ちてゆく。
肩を震わせ咽(むせ)び泣く、その姿を見ているうち、ユキナは彼が可哀相でたまらなくなってきた。目の前のオークは、ユキナの冷えた体を温めようとしている、心優しい生き物だ。本人が言うところの残忍さは微塵(みじん)も感じられない。多くの命を奪った、と言われても信じられなかった。
そのユキナの疑問に気付いたのか、オークは泣きながら自分に起こったことを話し始めた。
(うわぁ……あったか~い……。まるで手が、お風呂の中だぁ……)
ユキナはオークの体温の高さに少しばかり驚きながら、慌てて口を開く。
「ゆ、許してくれだなんて、そ、そんな、充分親切にしてもらってます。そんな謝ったりしないでください」
冷え切っていた手が心地よい熱に包まれ、じんわりと温まってゆく。ユキナはホッとして、心に思っていることをそのまま口にした。
「……この世界のオークさんって、とても優しいんですね」
ユキナから笑顔を向けられたオークは、ハッとしたように目を剥(む)き、途端に険(けわ)しい表情になる。
「……違う」
「え?」
「オークは、獰猛(どうもう)で、残虐(ざんぎゃく)な魔物だ。優しさなどかけらもない」
「……え……」
「いいか、ユキナ。もしこの先、俺以外のオークに遭遇(そうぐう)したら、話しかけたりしてはいけない。見つかる前に逃げろ」
「…………」
「よく聞け、ユキナ。オークは人間にとって、恐ろしい敵だ。話が通じる相手ではない。見かけたら全力で逃げろ。いいな」
「なんで……だって、オークさんは……」
「俺も、もとはそうだった。多くの命を奪った。いたぶって殺すことに喜びを感じ、何のためらいもなく屠(ほふ)った。愚かで残忍な生き物だった。俺は罪深い怪物だ……」
何かを思い出したのだろう、オークの涙が、止め処なく頬を滑り落ちてゆく。
肩を震わせ咽(むせ)び泣く、その姿を見ているうち、ユキナは彼が可哀相でたまらなくなってきた。目の前のオークは、ユキナの冷えた体を温めようとしている、心優しい生き物だ。本人が言うところの残忍さは微塵(みじん)も感じられない。多くの命を奪った、と言われても信じられなかった。
そのユキナの疑問に気付いたのか、オークは泣きながら自分に起こったことを話し始めた。
1
あなたにおすすめの小説
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
声なき王子は素性不明の猟師に恋をする
石月煤子
BL
第一王子である腹違いの兄から命を狙われた、妾の子である庶子のロスティア。
毒薬によって声を失った彼は城から逃げ延び、雪原に倒れていたところを、猟師と狼によって助けられた。
「王冠はあんたに相応しい。王子」
貴方のそばで生きられたら。
それ以上の幸福なんて、きっと、ない。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる