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もう少しだけ側にいて。_2
しおりを挟む「前言撤回は無し、だよ?」
「……わかってる」
「僕も、できるだけ傷つきたくはないからね」
「そんなつもり、ないもん」
「忠告はしたからね?」
「もう……何度も言わないで……」
「そりゃあ、好きな人の前では臆病になるものだよ? 出会ったばかりなんだ。この後挽回の余地がないかもしれないからね」
「大丈夫です!」
ハルトの言葉は臆病だった。そしてその臆病さの中に、ゆあを傷つけまいとする真摯さも見られた。自分が傷つきたくない、は本音だが、同じくらいゆあのことも傷つけたくないと思っていた。ゆあはこの短い時間の中で、ハルトにとってそう思わせるだけの存在になっていた。
「後悔、しないでね?」
そう言って横になったゆあを、押し倒すような形でハルトが覆いかぶさる。ギシリとその重みで軋むベッドの音が、ゆあの心臓の鼓動を早くさせる。
「……んんっ」
ゆあの唇に、ハルトの唇が重なった。
「――怖がらないで? 大丈夫、って言われても、かな?」
耳元で囁くハルト。低くて優しい落ち着いた声が頭に響く。お酒の力もあるが、ゆあは自らがハルトを誘ったようなものだと思っていた。引き返すタイミングはいくらでもあったし、ハルトから聞かれもした。そんな状態でも、ゆあはハルトと一緒にいることを選んだのだ。それなのに、自分がハルトに不要な遠慮をさせてしまっているのでは。そんな不安に包まれる。
「力抜いて、不安だったら僕にしがみついていて?」
言われた通り、ゆあはハルトの首元に腕を回した。
(……怖い、訳じゃないけど。この方が安心する……)
爽やかで落ち着く、ハルトの匂い。ゆあは目を閉じて、その香りに包まれることにした。
「……あっ!」
ハルトの指がそっと耳に触れ、思わずゆあは声を出した。どこかくすぐったい。反射的にギュッと目を閉じてしまった。が、まったく嫌ではなかった。
「あはは、そんな可愛い反応取られたら、僕もあんまり落ち着いていられそうじゃないかな」
「ハ、ハルトさ……ん……っ」
ハルトは顔をゆあの耳に寄せ、口づけした後耳たぶを軽く噛んだ。フーフーと呼吸が荒くなったゆあを見て、今度は息を吹きかける。
「うぅぅ、んん」
「耳、弱いね?」
「そ、そんなことは……」
「あるんじゃない? ……ほら」
「んぁ――!」
面白がるようにハルトはゆあの耳を舐めた。首元に回された腕がしなり、肩に当たる指がピクリと跳ねる。
「あ、あ、お、お風呂……! は、入らなきゃ……!」
「お風呂? 今入ったら身体によくないんじゃない? アルコール、抜けてないでしょ?」
「で、でも。汚いかなって……」
「僕は気にしないけど。ゆあが気になってしまうなら……一緒に入る?」
「い、一緒に!?」
「だって、お風呂で倒れたりしたら困るでしょ?」
「う、うちのお風呂狭いし……! そ、それに、二人でお風呂、なんて」
「シャワーで汗を流して、軽く洗う、なら? 頭は明日にしたらいいよ? 身体だけ軽く洗うなら、危ないから手伝ってあげる」
「で、でも」
「水や泡で滑って怪我をしたら大変でしょ? だから一緒に入るよ? おいで?」
「……う」
そう言われてしまっては断れない。フラフラしながら付き添われて帰ってきたのは、間違いのない事実なのだ。それに、それがアルコールのせいで今もまだあまり抜けていないことは、誰よりも自分が一番良くわかっていた。
「ほら」
身体を起こしたハルトが、まだ横になっているゆあへと両手を伸ばした。
「……」
少しだけ口を開いて、伸ばされたハルトの手を見つめた。そして、悩んだ末にその手を取り、身体を起こす。
「お風呂は廊下かな? 行こう」
「う、うん」
もそもそとベッドから降りて、引かれるままにハルトの後をついて行く。遊びに来た友人が迷わないようにと、ゆあはそれぞれの部屋に【洗面所(脱衣所)】や【トイレ】など、可愛くデコレーションした小さな看板を取り付けていた。それを見れば、初めて絵に来た人間でも、なにがどこにあるのかわかるようになっている。それに気が付いたハルトは恩恵に与かり、迷うことなくゆあを浴室へと運んだ。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう」
浴室前の洗面所のドアを開け、ゆあに入るよう促した。自分の家にも関わらず、おずおずと中へ入ったゆあは、チラリとハルトの方を見る。
「……どうかした? あってる、よね?」
「え、あ、うん。あってる、けど」
「なんだい?」
「う……一緒に入る、んだよね?」
「よく慣れた自宅とはいえ、危ないからね?」
もしかしたら冗談かも、と思っていたゆあの気持ちをよそに、ハルトはあっけらかんと答えた。
「……別に、お風呂場で襲ったりしないよ?」
「なっ」
「気にしてるんでしょ? さぁ、ささっと洗って出よう? 風邪ひいてもいけないからね。僕はあくまでも、少し手伝うだけだから」
ニコニコと話すハルトに負け、ゆあはゆっくりと服を脱ぎ始めた。
「……って、なんでハルトさんも脱いでるの!?」
「なんで……って。手伝うんだから、僕も一緒に入るよね? 服脱がないと、濡れちゃうよね?」
「あ、そう、ですね」
(そうじゃん……そんなの当たり前じゃん……)
当たり前のことなのに、思わず驚いて聞いてしまった自分が恥ずかしい。ごまかすように急いで自分の服を脱いでいく。同じように脱いで上半身が露わになったハルトだが、その身体は引き締まっていいてゆあは思わず見とれてしまった。
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