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アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)
アクマの襲来_1
しおりを挟むコン、コン──。
ノイはゆっくりと木で出来た扉を叩いた。この音で中の人に聞こえるのか不安だったが、反応が無かったらもう一度鳴らしてみよう、そう思いながら扉の前で誰かの反応を待った。
「……はーい」
扉の向こうから、女性の声がした。
ガチャ──。
「あっ……あのっ……!」
まだ女性の顔も見えないうちに、ノイは声を掛けた。勢いが大事だと思ったのだ。
「――あら、ノエルじゃない。いらっしゃい」
「こ、こんにちは! あの、これ、お母さんから頼まれて……」
「あら、そういえば電話があったわ。有り難うね、来るまで疲れたでしょう? さぁ、中に入って」
「えっ、あ、でも……」
「少しくらいいいじゃない。折角此処まで来てくれたんだもの。お礼に、お茶でもしていって」
「あ……っと……じゃあ、少しだけ……」
「はい、どうぞ」
「……お邪魔します」
家に足を踏み入れる。
――その時、視線を感じた。冷たく、それでいて、何処かネットリとした、なんだか嫌な、そんな視線だ。
「ん……?」
とても気にはなったが、元t元長居するつもりはない。一旦無視をして後をついて行った。
「ここで待っていて。今お茶を用意するわ。……ジュースの方が良いかしら?」
「だ、大丈夫です!」
「遠慮しなくて良いのよ。そう言えば、ブドウのジュースが好きだったわね、ノエルちゃんは」
手際よく準備をしていく。案内された椅子に座り、失礼かもしれないとは思ったが、あまり落ち着かず辺りをキョロキョロと見渡した。
「……おや? お客さんかい?」
「あらアナタ。ノエルちゃんが、葡萄酒とパンを持ってきてくれたよの」
「そうか、久し振りだね、ノエルちゃん」
「あ……お久し振り、です」
アナタ、と呼んだということは、この人は旦那さんだろう。ノエルのお母さんのお姉さんも、この旦那さんも、さっぱり分からない。が、本物のノエルが知らない訳がない。不自然にならない程度に、笑顔で挨拶をした。
気分を損ねてしまっては、もしかしたらこの先の話が上手く進まないかもしれないと思ったからだ。
「ほらほら、エミリーは休んでいなさい。まだ万全ではないだろう? それくらい、私が変わろう」
「良いの? 有り難う、アナタ」
エミリーはエプロンを外すと、椅子に腰掛けた。そして、マジマジとノエルの顔を見る。
「少し大きくなったわね」
「そうですか?」
「ええ、妹によく似てきたわ」
「なんだか恥ずかしいですね」
頬をポリポリとかいて、嬉しいような恥ずかしいような、心のむず痒さをアピールした。
「ふふっ。ちょっと照れたりすると、頬を掻く癖も同じね? あの子も、照れるとこうやって頬を掻いたものだわ」
「そうなんですか?」
「えぇ。あとはそうね、ちょっと困った時もあるけど」
"あぁ……お姉さんどちらかと言うとそっちかもしれないです……"
「あ、あの、体調は大丈夫ですか?」
「えぇ、今日はこれでも調子が良い方なの。外の空気でも吸いに、お散歩にでも行きたい気分ね」
「それは良かったです。その、母がとても心配していたので」
「あの子は心配性なのよ。……でも、そうね。私は良く風邪を引いたり、長引かせたりしていたから。きっと、気になるのね」
ノエルの母と比べると、肌も白く笑い方に力が無い。だが、柔らかくノエルを気遣ったような笑顔と、力強さを感じさせる瞳に宿った光を見て、ノイは安心した。
「さぁ、どうぞ」
夫はエミリーの前にティーカップを置き、更にノエルの前に綺麗な紫色に染まったグラスを置くと、すぐにキッチンへと戻って行った。
「いただきます」
「召し上がれ」
ブドウジュースに口をつける。
「……! 美味しい!」
渋みが無く、スッと口の中に広がるブドウの風味は、爽やかな酸味を含んで鼻から抜けて行った。
「夫の実家から送ってもらったのよ」
「やっぱり、ノエルちゃんはぶどうジュースが好きなままだね。送って貰って良かったよ。はい、クッキー」
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