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「ただ、相手がそれをオッケーするかどうかだよね」
「……ですよねえ」

 私が良くても相手が嫌がる可能性大だよね。何が悲しくて、わざわざそんな年上の女が居るところに婿に行きたがるのか。公爵家という地位を人参としてぶら下げたとしても……果たしてうまく釣れるかどうか……。

「逆に10歳年上とかは居ないんですか?」

 それなら今すぐにでも結婚出来るだろう。

 実を言うと、私とセブールは来年か再来年くらいに結婚の予定だ。その為にももっと親睦を深めるべきだと思ってのお茶会だったのだが。

 親睦深めるどころか永遠にサヨナラしたい案件になってしまったわ。

「リフィちゃんがもう少し魅力的だったら、いけたかもしれないけど」
「ほっとけ!」

 実の娘にそれ言うか!?魅力的だったとして何処にいけと!?「その『いけ』じゃないんだけど」そもそも外見に釣られる男なんぞ碌なものではない、セブールと同等かそれ以下だわ!貴様、必殺技を使って欲しいのか!?

「なに必殺技って?」
「秘技……『パパなんて大っ嫌い!!』」
「ぐはあ!!!!」

 胸押さえて倒れ込んでやんの。ざまあみろ、娘溺愛父にとってこの言葉以上の暴力はあるまい。

「か、家庭内暴力反対……」
「セブールと婚約解消できないなら、今の言葉が真実となります」
「脅しとか卑怯!!」
「セブールを婚約相手として探してきたのはお父様でしょうが!私は彼を望んだ事など一度もありません!あんな腐れ外道だと知ってれば絶対にお断りしてました!責任とれー!!」

 私の言葉が決定打となったのか。
 もし次の婚約者候補が見つかったなら、セブールとの婚約は解消しても良いとの確約を得る事が出来たのだった。

「嫌いにならないで~」とか半べそかいてる父を尻目に、私は執務部屋を後にするのだった。



***


 さて、約束は取り付けた。であれば、次は新しい婚約者探しだ。父も探すと言ってくれたけど、執務に忙しくしてるからそんな暇があるかどうか……。なので自分で探す方がきっと早いだろう。

 計算では、早くてあと半年もすれば、セブールとの結婚に向けて色々動く事となる。それまでに新しい婚約者を見つけて……セブールとは婚約を解消する。

 その為に、私はまず知り合いの令嬢へと連絡を取るのだった。

 そして三日後。
 急なお茶会への招待にも関わらず、親友達が集ってくれたのだ。

「というわけです」
「どういうわけです」
「いや今説明したでしょ?」
「いや、いきなり『というわけです』とか言われても」
「話の流れで端折ってるだけです!メタいこと言わせんな!」
「やあね、冗談よ」

 コロコロと笑ってるのは、親友の中の親友。気付けば共に居た幼馴染のナディア公爵令嬢である。彼女は青みがかった髪を揺らしながら、笑い続けた。

「まあまあナディア、からかうのはそれくらいで……リフィも大変ねえ」
「ソーニャ……んですよ、私の苦労分かってくれる?」
「うん、もうそのネタ使い古されてるから」

 辛辣な返しをしてくるのは、学生時代に仲良くなったソーニャ侯爵令嬢。茶髪が陽の光を浴びて、少し金に見える。セブールの鬱陶しいくらいに眩しい金髪より、私は彼女の落ち着いた髪色の方がよっぽど好きだ。

「セブール様ってあれですよねぇ~。在学中、どれだけの女性と関係をもてるか!?とか言ってぇ、片っ端から令嬢をナンパしてたぁ。私も声かけられましたですぅ」

 間延びした話し方をするのは、同じく学生時代に仲良くなったミランダ侯爵令嬢。やや緑がかった髪色のせいか、彼女と話してると妙にほのぼのする。

 親友三人を目の前にして心が落ち着く中で……けれど最後のミランダの言葉に、私は深々とため息をつくのだった。






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