【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」

リオール

文字の大きさ
12 / 42
第一章 戻る時間

8、

しおりを挟む
 
 時は流れて私は13歳になった。

 私は祖父の庇護のもと、平穏な日々を送っていた。と言いたいところだが、少し違う。
 確かに家族から肉体的に虐げられることはなくなった。だが精神的なものは止まらなかったのだ。予想通りに。
 家族と顔を合わせれば嫌味のオンパレード。

 両親は私を見ると舌打ちし、声をかけることもない。存在の無視だ。

「お前のような醜い女が、魔力をうまく使いこなせるわけないだろう?」

 14歳の兄は、そう言って失笑する。
 容姿と魔力に何の関係があるのかと言い返せば睨まれた。それは妹に向ける目ではない。

「リリアはお姉様じゃないでしょ? 僕の姉はミリス姉様だけだ」

 成長し11歳になった弟は、生意気にそう言って私を呼び捨てにする。

「早く魔法を使いこなせるようになればいいですわねえ。そしたらどこか貰い手が現れるかもしれませんよ?」

 そう言うのはミリスだ。成長と共に美しさに磨きがかかるミリス。家族の愛情を一身に受けて育った彼女は、とても美しい。──容姿だけは。
 彼女はまだ12歳だというのに、縁談話でもちきりらしい。

 美しいミリスは、誰からも愛される。誰もが彼女を愛する。
 だが、誰あろう彼女こそが最も醜く陰湿な心を持っていることを、誰も知らない。私だけが知っている。

 ある日、祖父に命じられて魔力を高める特訓をしていた。10歳の時に魔力が発動してから三年、ようやく自分の中の魔力を感じるようになった。それほどに、魔力を扱うのは難しいのだ。だからこそ、祖父は焦がれてやまない。

 魔力を高める集中力を鍛えるため、庭で瞑想していたら、突然雨が降った。いや違う、私の頭上にだけ、水が降って来たのだ。
 驚いて目を開けば、「あらごめんあそばせ。汚いゴミが落ちてると思ったので、バケツの水で流そうと思ったんですの」と言って、ニッコリ美しい笑みを浮かべるミリスが目の前に居た。彼女の手には、どこから持って来たのか、メイドが使用する掃除用のバケツが。
 ポタポタとバケツから残りの水が滴り落ちる。
 ポタポタと私の前髪から臭い水が滴り落ちる。

「うふふ、醜いお姉様には汚い水がお似合いですわね」

 そう言って、バケツを放り投げてミリスは去って行った。慌ててメイドにお願いして入浴して身を清めたが、しばらく臭いはとれなかった。

 また別の日には、クローゼットの中の服が全てズタズタにされていた。
 祖父と共に、祖父の知り合いである魔力に関して詳しい人に話を聞きに、街に出て一日家を空けた時のことだ。
 誰か部屋を出入りしたかとメイドに聞けば、ミリス様が出て行かれるのを見ましたという証言を得た。どうせとぼけるだろうと思いつつミリスを問いただせば、「お姉様に似合うようにお直ししてさしあげただけですわ」と、否定することなく言われた。いけしゃあしゃあと……!

 けれどそれ以上の被害はない。ぶたれることがないだけで……肉体的な暴力がないだけで、これほどに平穏に思えるとは。このまま、平穏に18歳を迎えることができれば良いのだけれど。
 
 だが時は残酷なもの。私は17歳から10歳に戻れても、それ以前には戻れない。
 そして祖父の病は、私が10歳以前から少しずつ進行していた。時が戻った時点で、祖父は既に病魔に蝕まれていたのだ。予防対策はなんら意味がなかったのだ。
 それが分かるのは、13歳の時を過ごしてる今。祖父の吐血を目の当たりにした、まさに今である。

「お祖父様!?」

 魔力の勉強の成果を見せろと言われたある日、お祖父様の部屋に行くと既に祖父は自身が吐いた血の上に倒れていた。
 慌てて医者を呼ぶが、手の施しようがないと言われる。薬で症状を緩和するくらいしかないと。
 ショックのあまり、医者の声がどこか遠くから聞こえるようだ。

 そんな私の耳に、追い打ちをかける声が聞こえる。
 眠る祖父を前に、ニヤニヤ笑う父の声が。

「ふんっざまあみろ。これで俺の時代がやってくる。公爵家はもうすぐ俺のものだ……!」

 実の父を心配するでもなく。
 既に己の私利私欲のことしか考えない父の発言。

 また、繰り返されるの……?

 血の気が引くのを感じた。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。 夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。 ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。 一方夫のランスロットは……。 作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。 ご都合主義です。 以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

私は本当に望まれているのですか?

まるねこ
恋愛
この日は辺境伯家の令嬢ジネット・ベルジエは、親友である公爵令嬢マリーズの招待を受け、久々に領地を離れてお茶会に参加していた。 穏やかな社交の場―になるはずだったその日、突然、会場のど真ん中でジネットは公開プロポーズをされる。 「君の神秘的な美しさに心を奪われた。どうか、私の伴侶に……」 果たしてこの出会いは、運命の始まりなのか、それとも――? 感想欄…やっぱり開けました! Copyright©︎2025-まるねこ

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...