【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」

リオール

文字の大きさ
14 / 42
第二章 今度こそ

1、

しおりを挟む
 
「……リア」

 声が聞こえる。誰かの声が。けれど私の目は開かず、体は動かない。

「……ア。リリア!」
「え、あ……はい!?」

 今度はハッキリと呼ばれ、途端に体が動いた。体を跳ねさせ私は飛び起きた。

「……ここは……?」
「なにを寝ぼけておるのだ、リリアよ」

 目を開けて最初に飛び込んで来たのは、祖父の顔。

「お祖父様……」
「私が話してるというのに、寝ていたのか?」

 そう言って、不機嫌に眉をひそめてムスッとした顔をする。ああ、確かにお祖父様だ。生前の、まだお元気なころの。
 そして気付く、今いる場所を。見覚えのあるそれは、祖父の部屋だった。

 戻ったんだ。

 無事にループしたこと、生きてることに安堵してそっと息を吐いた。
 だが気を抜いてる場合ではない。私は状況を見極めるべく、祖父の話に耳を傾けた。

 なぜだか今回のループは、いつもの箱の中ではない。10歳の仕置き最中である、あの箱の中では無いのだ。そして私は祖父と普通に会話している。それはつまり、これまでのループと違う時間に戻ったということだ。
 今私は何歳? 一体何をしてる状況?

 ゴクリと喉を上下させると、祖父がまた口を開いた。

「それで? ミリスが自分の服をボロボロにしたという証拠は?」

 言われたことに一瞬キョトンとして……そして息を呑んだ。
 ミリスが私の服をズタボロにした、それは確か13歳のとき。祖父と街に出かけてる時の話だ。
 確かにそのことを私は祖父に話した。
 だが祖父は

「だんまりか。証拠はないんだな? 証拠もないのに決めつけるな」

 そう。確かに記憶のままの言葉を耳にして、私は自分の置かれた状況を理解する。

 前回の生では結局失敗した。何も変えられなかったと悔しく思った。
 だが今回、初めて13歳に戻った。この変化は大きい。これまで戻っていた10歳の箱の中、あれは魔力を認識する大きなポイントだったのだ。では今回は? この時点に戻ったということは、おそらく大きな意味があるはず。

 そっと手を見れば、10歳より成長した、13歳の手が見え、ギュッと握りしめた。
 間違えるな、選択を。今話すべきは、ミリスの所業などではない。あんなもの、どうでもいい。

「何をしておるのだ。……もういい、これで話が終わりなら部屋に戻って──」
「お祖父様」

 言葉を遮るように私は祖父に声をかける。一瞬目を細めた祖父は、けれど私の真っ直ぐな視線に何かを感じたようで、小言は出なかった。

「なんだ」
「今日街でお会いしたかたに、もう一度じっくりお話を聞きたいです」
「……なんだと?」

 ミリスが私の服をズタボロにしたあの日、私は祖父と共に街に出かけていた。
 祖父の知り合いで、祖父と同じく魔力に興味があり、色々独学で研究をされてるかただ。私は同行したが、ほとんど祖父とその知り合いで話していて、私はただ聞いてるだけでよく理解できなかった。

 この時点に戻ったことに意味があるとしたら、そのことだとしか考えられない。……間違っても、ミリスの件をどうこうではないだろう。
 考えるな、もう間違えたくない。死にたくない。

「会ってどうする? 聞きたいことは今日、ワシが全て聞いたぞ」
「お願いします。今日は突然で、私は聞きたいことすらわかりませんでした。ですがまたお会いできるのなら、今度は聞きたいことを明確にし、じっくりお話ししたいのです。だからどうか……」

 お願いします。
 懇願を繰り返す。横たわる沈黙。祖父は私をジッと見つめ、私もけしてそらすことなく見つめ返した。

 ややあって、祖父の小さな溜め息が響いた。

「……ふん、まあいいだろう。手配してやる」
「! ありがとうございます!」

 やった! これで前回とはまた違う展開になるはず。
 変えてみせる、今度こそ変えてみせる。
 変えられない未来はなにかを理解した。祖父がもうすぐ吐血し、一年後に亡くなる未来は変えられない。
 では変えられる未来を導き出し、正解を見つけるまで。

 運命が私で遊びたいというなら遊べばいい。私は負けない。
 何度でも、何度繰り返しても、私は負けるつもりはない。生きるために、私は運命に抗ってみせよう。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。 夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。 ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。 一方夫のランスロットは……。 作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。 ご都合主義です。 以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

私は本当に望まれているのですか?

まるねこ
恋愛
この日は辺境伯家の令嬢ジネット・ベルジエは、親友である公爵令嬢マリーズの招待を受け、久々に領地を離れてお茶会に参加していた。 穏やかな社交の場―になるはずだったその日、突然、会場のど真ん中でジネットは公開プロポーズをされる。 「君の神秘的な美しさに心を奪われた。どうか、私の伴侶に……」 果たしてこの出会いは、運命の始まりなのか、それとも――? 感想欄…やっぱり開けました! Copyright©︎2025-まるねこ

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...