私に虐められたと嘘を広めたのは貴女ですか?折角なので真実にしてあげましょう

リオール

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 王太子を愛してません。
 そうキッパリ言えば、明らかに動揺する令嬢。

「え?で、ですが……」
「私とカルシュ様は政略による婚約です。そこに愛はありません。私は彼を愛してませんし、彼もまた私を愛してない。高位貴族にはよくある話です」
「じゃ、じゃあ……ビスタは……?」
「それがどなたかは存じませんが、カルシュ様と愛し合われてるなら良いではありませんか。私は王に側室を認めないほど狭量ではありませんよ?王妃とは政治的に淡々とした関係を、側室とは心の安らぎを得る関係を築く。それで良いではありませんか」

 これは本心から言っているのです。私は王太子を愛していません。立場を忘れずやるべき事を成すのなら、他は好きにすればいい。というか好きにしてほしいし私も好きにしたいのです。束縛は好きではないのですよ。

 私が言ったことが予想外だったのか、信じられないのか。よく分かりませんが、目の前の令嬢達はキョトンとして言葉を失ってしまった。

「お話は終わりでしょうか?それでは用がありますので失礼」
「あ──」

 話はこれでお終いだとばかりに背を向けた私に、何かを言おうとして、けれど令嬢達は何も言わなかった。戸惑いを感じながら、私は廊下を進む。

 もうすぐ図書室に着く、というところで。
 私は視界の隅にみとめた存在に、ふと足を止めたのでした。

 校舎二階の廊下。窓の外には学園の見事な庭園が広がっております。そこでは休憩時間ということもあり、生徒が多数みうけられましたが……奥の方に、見知った人物が見えました。

 それは先ほど話していたカルシュ王太子。

 カルシュ様は庭園の奥、校舎の壁となるような目立たない場所でひっそりと誰かと話しておりました。
 そのお顔がとても楽し気で、今まで見た事無いような幸せそうな顔をしてるのです。ということは──と目を動かせば、思った通り。木陰でカルシュ様と二人、親し気に話しているのは明るい若草色の髪をもった少女。その白い頬に赤味がさしていて、とても可愛らしい女性です。

 ああ、あれがビスタさんかしら?

 察するにそうでしょう。

 二人の距離はとても近くて、互いの呼吸が触れそう。二人が二人とも頬を赤く染め、誰がどう見ても恋人同士のそれ。
 そんなお二人の姿を見ても、私は何ら思う事もなく。

 早く図書室に行かないと、休憩時間が終わってしまいますね。
 そちらの方が心配になり、すぐに見るのをやめて図書室へと入るのでした。

 だから気付かなかったのです。そんな庭園から私に向けられた視線を。
 その目がわずかに細められた事を。

 私は気付かなかったのです。





 私がビスタさんを虐めている。

 そんな噂が広まったのは、直後の事でした。





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