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しおりを挟むそんなこんなで数日が過ぎた。
相変わらず毎日のようにお金をせびるスザンナとトラドスの相手に疲れ。
相変わらず仕事をホイホイ持ってきては遊び呆ける父の髪をむしり。
あっという間に、王家から指定された登城日だ。
「何度も言うが、公爵家の仕事は私が取り仕切っていると王は思っている。余計なことは言うな。分かったな?」
「分かってますよお父様。もう耳にタコが出来ましたよ」
タコ焼きでも食べたい気分です。──マイヤの影響で異国の食べ物の知識がついてしまった、いかんいかん。
緊張のせいか、うまく思考が集中できない。こんな事で大丈夫だろうか。そう不安になってたら今の父の言葉だ。
父の方はさすがに何度も登城してるだけの事はあって、慣れた感じだ。とはいえ、改めて呼び出し。それも私を伴ってということで、少なからず緊張はしてるようだけど。
そんな状況で言うことがそれですか。公爵としてのプライドだけは無駄に高いときたものだ。そんなに心配なら、ちゃんと仕事をすれば問題無いだろうに。そういう事には頭が働かない駄目な父親なんです。
情けないくらいに頼りにならない父と共に、私達親子は恐る恐る国王が待つ部屋へと向かうのだった。
※ ※ ※
「おお、よく来てくれたな二人とも!待っていたぞ!」
案内された部屋に入ると、そこには既に王が待っておられた。パーティで何度かお会いしたこともあり、父と会話してるのも何度も見た。けれど私本人が直接関わるのはこれが初めてだ。
これまで幾人もの権力者と会って来た私だが、これ程に緊張する相手はついぞ居なかった。
王はとても気さくな方だ。国の事を常に考えておられて、国民から絶大な支持を得ている。
そんな王の後継者である第一王子──王太子クロヴィス様もまた、優秀な事で有名だ。ラブラブと有名な奥方との間に、先日お子がお生まれになったばかり。実にめでたい。
まさかその王太子も同席されてるとは思いもよらず、私の緊張感は否応なしに高まるのだった。
あらん限りの作法を総動員して、私は二人に挨拶をした。
が、そんな私の緊張もなんのその。
「いやあ突然の呼び出しに驚いちゃいましたよ」
その髪、一本残らず抜いてもいいですか!?
馬鹿父の挨拶がなんと馬鹿っぽいことか!
いくら何度会ってる相手でも!それでも!ちゃんとしてよ、せめて王に対してくらいはちゃんとしてよおぉっ!!
私の内心の叫びなど誰も気付かない。
こんな馬鹿な話し方してる父に対して、王は驚くほどニコニコしてるのだから……その笑顔の裏で考えておられる事がなんなのか。分からな過ぎて痛い、胃が痛い!!
「して、今日はどのようなご用件でしょうか?」
王から言うのを待たずに催促してるう!
──帰ったらマイヤに胃薬用意してもらおう。
キリキリ痛む胃を抱えながら、私はひたすら頭を下げた。とりあえず大人しくしておこう。馬鹿父が話すたびに胃は痛むが、とにかく話を早く終わらせて帰りたい。
帰ったら胃薬片手に父の髪をむしり取ろうと思います。
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