【第一部完結】「子供ができた」と旦那様に言われました

リオール

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第一部

38、寝物語12~さあ寝る時間ですよ

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 それから色々あったけれど、私が学園を卒業した15歳の春、私たちは結婚した。
 周囲の反応はそりゃもう様々。ミンティア男爵令嬢なんて、地団太踏んで悔しがってたし。

「どうしていきなり公爵家なんて上位貴族を見つけてくるのよー!」

 とか言われても知らんがな。人生なんて、運命なんてそんなもの。

 リンダは「メリッサの能力目当てなの?」と心配そうにしていたが、そうではないと時間をかけて説明して納得してくれた。

 それ以上に両親の説得が一番大変だったけどね。

「メリッサは父様と結婚するって言ってたのに!」

 というキモイ父は置いといて、母が「大丈夫なの?」と心配してくれた。年齢差も気になるところだし、公爵家の呪いのことも母は知っていたから。

 「子作りなしの白い結婚だから」と言ったら、それはそれで複雑……といった顔をしていたっけ。

 それプラス私の光魔法のことを知っていると言ったら、ものすごく嫌そうな顔してたな。親として心配なのは分かる。そこはクラウド様にも伝わったようで、彼は時間をかけて二人を説得してくれた。

 結局、公爵家の警備力の高さと私が光魔法使いであることを考慮し、その安全面から公爵家に嫁ぐメリットは大きいとなる。それからクラウド様が心から私を思ってくれていることも、両親が理解を示してくれた。

 未だ私の光魔法を公表することはしていないが、特別隠すこともしていない。そんなわけで、なんとはなしに噂が上がってはいるが、公爵家という大きな後ろ盾があるもんで、手出ししてきたり無茶な要求をしてくる者もほぼいない。

 とりあえずの平穏な日々が、18歳になった今も続いているのである。

* * *

「……とまあ、そんなわけで、私の光魔法は特別すぎて公然の秘密。旦那様の呪いの件も、古くからあるので今更って感じで公然の秘密。複雑な夫婦なの」

 長い昔話を語り終えた私は、ベッドに横になるアーサーを見た。その目はトロンとしている。
 眠いけど、話が気になって眠れないギリギリのところって感じね。

「ふうん……そっか、聖女とは言わないが、それくらいに貴重な存在なんだな、メリッサは」
「そうね」
「伯父上も大変な身の上なんだなあ」
「そうねえ」
「で? どうして子作りできないんだ? 副作用って?」
「うーん……なんというか……1歳児にこんな話、していいのかしら」
「気にするな。俺の精神年齢18歳!」

 そんな得意げな顔で言われても。
 でもまあ隠すことでもないかなと、私は言った。

「なんというか、えーっと……そういう状況? になったらね」
「そういう状況ってなんだ。エロエロアハンな状況か」
「次その表現使ったら、二度とお菓子はないものと思え」
「二度と言いません」

 そんなこと言う18歳いるか?
 精神年齢が徐々に幼くなってないかしらと笑顔で睨んでから、私はコホンと一つ咳払い。仕切り直して言う。

「つまりそういう状況になったら……満月とか関係なく、狼になってしまうのよ」
「なんと」
「そして変化してしまったら、次の満月まで元に戻れない」
「それは不憫」
「でしょ? まあそういうわけで、子作りできないの」
「男は狼とはよく言ったものだ……」
「いやまあ、なんというか……旦那様の場合は比喩表現じゃなく、それを実際に実行しているわけだけど」

 同情の光を目に宿すアーサーに、私は苦笑するしかない。
 眠くなってきたのかボーッとしているアーサーは、しかしそこで浮かんだ考えに、突如ハッとした顔をして私の顔を見上げた。

「なあ、ひょっとしてだけど」
「うん、なに?」
「俺がこのまま公爵家の後継になったら、その狼の呪いが降りかかるのか?」
「う~ん、それに関しては分からないなあ。一応クラウド様もラウルド様も、あなたを後継にと考えているようだけど……呪いに関しては、ちょっとねえ。クラウド様が亡くなって初めて、次の当主たりうる者に呪いが発現するらしいから……」

 つまり、クラウド様が生きているうちは、分からないってことだ。

「クラウド様としては、公爵家はクラウド様の代で終わらせて、別の一族としてラウルド様やあなたに継がせたいみたいよ」
「それなら呪いは継承されずに済むのか?」
「さあ……それはなんとも……」

 それはクラウド様が亡くなってからでないと分からない。
 だからこそ、だ。

「だからアーサー、あなた本気で大魔法使い目指すなら、真剣に魔法の勉強する必要あるわよ? 魔法使いが属する魔法協会に入ったり、魔塔に属するにはかなりの難関なのだから」

 公爵家の当主として呪いを受けたくなくば、別の就職先を見つけなさい。
 そう言えば、頭を抱えるアーサーであった。

 それからもしばらく話していた私たちは、ついに睡魔に負けて眠りにつくことになる。

 爆睡したアーサーが次に目を覚ました時。

 私の姿が忽然と消えて、公爵家の屋敷が蜂の巣をつついたような大騒ぎとなる。



===
※26話の終わりのほうを、少し修正しました<(_ _)>
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